第12話:エリカの歓迎会。

エリカが転入して来たその日の放課後。

亜沙子・ヒナ子・隼人・佳奈・芳子・エリカの面々は、学校を出て天王寺の街へ繰り出した。

「なぁなぁ、立花さんたちとも友だちになれたしさ、みんなでカラオケ行かへん?カラオケ。」


と、亜沙子が言うと、佳奈もそれに賛同し、「いいなぁ、行こ行こっ!」と言い、他のメンバーも手を挙げた。


「亜沙子~?」

「なにー?隼人」

「カラオケはえぇけど、ドコ行くんやー?」

「ジャンカラでえぇやん?学割安いし」

「予約は?」

「アプリで予約済みっ!」

「さすがやな……」


と、隼人は感心する。


そして、天王寺駅近くのカラオケ店に入った一行は、受付機でチェックインを済ませ、指定された部屋に入る。


「すごい、受付に人、いないんですね」と、エリカがびっくりする。

「このチェーンはだいたいそうやで」と、亜沙子が言う。


そして、ドリンクバーでそれぞれドリンクを持って部屋に入った面々は、ソファに座り、まずはドリンクを飲む。


「ふいー、落ち着くねぇ」と、亜沙子。

「何ばあさんみたいなこと言っとんねん」


と、隼人が突っ込むと、ヒナ子がこう言った。


「まるで夫婦漫才やな」


そう言うと室内は爆笑した。


「てか藤原君?」

「なに?立花さん」

「あんた今、むっちゃハーレムやで?」

「あ、ほんまや、気づかんかった」

「ご主人様はどの女の子がよろしいですか?」と、佳奈に言われると、隼人が一言。

「そんなん、彼女がえぇに決まってるやん!」と、言い返す。


すると周りから、「ひゅーひゅー」と野次を飛ばされ、照れる亜沙子と隼人。


「青島さんはどんな歌うたうん?」と、芳子が聞く。

「私ですか?私は……えと、アニソンとかが多い、かなー?」

「へぇー、すごい、聴いてみたいなぁ」


すると亜沙子がすかさずデンモクを取って、エリカに渡す。


「はい、デンモク!」

「えぇ?わ、私から、ですかぁ?」

「うん、だって、青島さんの歓迎会やもん!」

「じゃ、じゃあ……」


と、エリカはデンモクを操作して、とある一曲を入れた。


画面に一瞬映ったタイトルを見て、芳子は一瞬ビクっとした。


「ちょ、あ、青島、さん?」

「そ、それ、歌うん?」

「え?あ、はい。私の好きな歌です」

「どしたん?相川さん」と、亜沙子が聞く。

「や、べ、別に……」


すると横に座っていた佳奈がハッとした。


「よっちゃん、ひょっとこして」

「う、うん、ウチの歌や……」


と、佳奈と芳子はぼそぼそと話す。

芳子は、学校外では、モデルと歌手をしており、かなり売れている人気者で、特に10代女子からは絶大な人気を誇るティーンファッション誌の専属モデルもしているが、"楠木真琴くすのきまこと"と言う芸名で活動しているので、エリカは本人だと気付いてないようだ。

もちろん他のクラスメイトは知っているので、エリカに気付かれないように黙ってるだけであって。


そして、エリカは、イントロが流れ出すと、歌い慣れた感じで歌い出した。


歌い終わるとみんなは盛大な拍手を送った。


「すごーい、青島さん、むっちゃ上手いやん!」と、亜沙子。

「いえいえ、いつも練習してたから……」


「てかさー」と、ヒナ子。

「今の歌、楠木真琴さんの歌やろ?」

「そういやそうやったな」

「相川さんイコール楠木さん、やんなー?」

「う……うん」と、芳子。

「えーーー?!」と、エリカがびっくりする。

「ほ、ほんとですか?」

「うん、私、楠木真琴です……」

「うわーうわー、私、楠木さんの大ファンで!!」

「あ、ありがとう」


そしてそのあと一人2曲ずつ歌ったところで一息ついて、雑談タイムになり、ワイワイ会話していると、時間終了のチャイムが鳴り、みんなで部屋を出て、自動精算機で精算すると、外は暗くなっていた。


「うわー、結構遅くまで居たねぇ」

「そやねー」

「青島さんは何線沿線?」


と、亜沙子が聞く。


「上町線です」

「ほなヒナ以外みんな一緒やん!」

「そうなんですか?」


一行は天王寺駅の地下街まで歩いて行き、ヒナ子は地下鉄線への改札へ向かう。


「ほなみんな、私はここで!じゃあねー」

「ばいばーい」


そして、エリカもこう言った。


「あ、私はこのあと用事があるのでここで失礼しますわ」

「あ、うん、ほなまた明日学校でね」

「はーい」


そう言ってエリカも人込みに消えて行った。


「じゃあ私らも帰ろか」と佳奈が言う。


そして、亜沙子たち4人は、路面電車乗り場へと向かい、家路に着いた。

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