第9話:転入生登場。

2人で亜沙子の家を出てから、最寄り駅まで歩いて行き、路面電車の停留所まで向かい、しばらくすると電車が来たので、1両編成の小さなワンマンカーに乗り込んだ。

朝のラッシュで小さな車内は人で溢れている。


住吉大社から約20分ほどで、電車は終点の天王寺駅前に着いて、乗客たちは一斉に車内から出て改札を通り、地下街や歩道橋方面へ向かう。

亜沙子たちも、人の流れに合わせて地下街の方へ歩いていく。

地下街を歩いている時、後ろから亜沙子の名前を呼ぶ声がした。


「亜沙子!おはよう」

「あ、ヒナ、おはよう」

「藤原君もおはよう」

「おぅ」

「2人の邪魔したら悪いから先行くなー」

「な、なんやそれ」


そう言ってヒナ子は一人で先に学校へ向かった。


駅から10分くらい歩いた所に亜沙子たちの通う学校がある。

校門では先生たちが笑顔で生徒たちを出迎えてくれる。


「みんな、おはよう」


「おはようございまーす」


亜沙子たちも他の生徒たちと一緒に昇降口へ向かう。

下駄箱で上履きに履き替え、教室へ行く。


教室に着いてしばらくしてから朝のホームルームが始まるチャイムが鳴り、担任の女性教師・岡村毬藻おかむらまりもが入って来た。


「おはよう、みんな」


「おはようございまーす」


「みんな、居るわね。木之川さんも来てるわね」


「そりゃ来ますよ」


「そうね、はーい、今日はみなさんに新しい仲間が加わりまーす!」


と、毬藻が言うと、教室内がザワついた。


「男子ども喜べ、女の子たちは残念でした!新しい転入生さんを紹介しまぁす!」


「女子やって、どんな子やろ?かわいいかな?」


などとクラスがザワつく。


「じゃあ青島さん、入って来てー?」


と、毬藻が言うと、ガラガラとドアが開き、背が低く、こじんまりとした可愛らしい女の子が入って来た。


「じゃあね、青島さん。壇上に立ってくれるかしら?」


と、毬藻が言うと、その、"青島さん"と呼ばれた女の子が壇上に立つ。

毬藻は黒板に彼女の名前を書く。


[青島あおしまエリカ]。


「はーい、じゃあ自己紹介、よろしくー」


「え、と、青島……エリカ、です。静岡県牧之原市から転入して来ました。よろしくお願いします」


と、やや緊張した感じにその女の子が言うと、教室内の生徒たちから拍手喝采が起こった。


「じゃあ、青島さんの席はー……木之川さんの横が空いてるわね」

「はい」

「じゃあね、今、手を挙げた女の子の隣に行ってくれるかしら?」

「わかりました」


そう言うと、エリカは緊張しながら教室内を歩き、亜沙子の隣の席に座った。


「青島さん、よろしくね」

「こ、こちらこそ」


そして、朝のホームルームが終わり、毬藻も一旦職員室へ戻り、生徒たちも1時限目の授業の準備をした。

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