第8話:週明けの朝。

日曜日、隼人とデートをした亜沙子は、その日から正式に2人は恋人となった。

そしてそのデートの次の日の4月某日、月曜日。

また今日から1週間が始まる。


午前6時半。亜沙子の部屋の目覚ましがうるさく鳴る。


ジリリリリリ……


ベッドの中で、布団でごそごそしてる亜沙子の手が目覚まし時計に伸びる。


カチっ


亜沙子は時計を止めた。


ベッドの中で、もぞもぞと動く亜沙子。

今度はLINEの着信が鳴った。


「もう……今度は誰ぇ?」


と、亜沙子が独り言を言いながら枕元に置いてあるスマホを取り、LINEを開く。

隼人からだ。


『おはよう、もうちょっとしたら迎えに行くからなぁ』

『わかったー』


と、一言だけ返信して、亜沙子はまた眠りに付いた。二度寝だ。


亜沙子がすやすやと二度寝をして数分後、玄関のインターフォンが鳴ったので、亜沙子の母親がドアを開けると、そこには笑顔の隼人が立っていた。


「おはようございます、おば様」

「おはよう、隼人くん。いつも悪いわね」

「亜沙子は?」

「あぁー、まだ部屋で寝てるわ」

「やっぱり」

「私が行っても起きないから隼人くん、行って起こして来て?」

「え、いいんですか?」

「全然」

「じゃあ失礼して……」


隼人は靴を脱ぎ、そのまま階段を上がって亜沙子の部屋へ行く。

そして彼女の部屋のドアを開け、中に入って行く。


布団に包まれながら眠っている亜沙子の姿を見て、「はぁ……」と大きなため息を付いた。


そして、亜沙子のベッドそばまで行き、彼女の小さな体を揺らす。


「あーさーこー!朝やぞ!起きぃ~!」

「んー、わかってる、って!って、えっ?!」


布団からぴょこっと顔だけ出した彼女はビックリした。母親でなく隼人が居たから。


「は、はや、隼人やんっ??!!」

「そや?」

「な、なに、なにしてん?」

「なに、て、起こしにやないか」

「レディの部屋に勝手に入るか?普通」

「だっておばさまが行ってえぇ言ったんやもん」

「もーう……」

「お前、ガッコやぞ」

「わぁった!起きる!」

「制服着替えるから外出てて」

「あかん。着替えんとそのまま3度寝する可能性大やからここにおる」

「分かったわよぉ……」


しぶしぶと亜沙子はベッドから出て来た。

隼人は亜沙子の広い部屋の床に座って待っている。


「隼人?」

「なんや?」

「私、今からパジャマ脱ぐからあっち向いてて」

「なんで?昨日お前の着替え見てるけどな」

「あ、そうやった、それに私らうてるんやったな?」

「そうやで」

「ほなまぁえぇか」

「えぇんかい」


そう言うと亜沙子は恥ずかしがる様子もなく、隼人の目の前でパジャマのズボンを脱ぎ、上着も脱いだ。

亜沙子は、寝る時はブラを付けないので、今はショーツ1枚で隼人の前に居る。

彼女は、たんすの引き出しを開け、下着を選ぶ。


「どれにしようかなぁ……なぁ?」

「なんや?」

「こっちとこれ、隼人やったらどっちがいい?」

「そやな、右のピンクのが可愛いな」

「そか、ほなこれにしよ」


と言い、隼人が指定したピンクのブラとショーツを出し、今まで履いていたショーツも脱いだ。

これにはさすがの隼人も驚いた。


「わーわーわー」

「なんやの?」


亜沙子が全裸で隼人の方を振り向く。


「おま、おま、下くらい隠せやっ!」

「別に恥ずかしくないって」

「なら早よ着てくれ、目のやり場に困る」

「あらそう?」


そう言って下着を付け、下着の上にキャミを着て、制服のYシャツを着、スカートを履き、ブレザーを着る。

そして、化粧台に座り、髪を整える。


「よし、体の方はOKっと。あとは、授業の準備……」


亜沙子は、学生鞄に今日の授業の教科書やらノート、参考書なんかを詰め込んだ。


「忘れもん無いか?」

「無いっ!カンペキっ!」

「そんな誇るもんでもないやろ、ほら、降りるで」

「はいよー」


と、2人は階段を下りて食堂へ向かった。


「亜沙子、おはよう」

「おはよう」

「今日はちゃんと学校行くのよ?」

「分かったわよぉ」

「これ、朝ごはん」

「ん、ありがと」

「隼人くんも食べる?」

「いえ、僕は家で食べて来たので」

「そう、いつもほんとにありがとうね」

「いえいえ」


それから少しして朝ごはんを食べ終わった亜沙子は洗面所へ行き、顔を洗い、歯を磨き、また食堂へ戻って来て、隼人にこう言った。


「おまた~、ほな行こか」

「おう」

「じゃあお母さん、行って来るな」

「おばさま、行って来ます」

「はい、行ってらっしゃい」


そう言って2人は玄関を出て一緒にゆっくり歩いて駅まで向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る