第3話:放課後、病院にて。

交番まで亜沙子たちを迎えに来た弓丘先生と一緒に学校に着いた亜沙子とヒナ子の2人は、休み時間まで保健室で過ごし、次の授業が始まる前に、先生に連れられ教室へ行った。

するとそこには、同じクラスの隼人が居た。


「よぉ亜沙子。やっと来たなぁー」

「う、うるさい」


ヒナ子も、他のクラスメイトに話しかけられていた。


「ヒナ子、遅かったやん」

「う、うん」

「調子でも悪いんか?」

「まぁ、そんなトコ」


そして、次の授業までの短い休みが終わり、チャイムが鳴り、生徒たちは席に着き、授業を受ける。


……その日の放課後。


「あーさーこー」

「なに?隼人」

「一緒に帰ろうや」

「うん、てか私今日病院やねん」

「あ、精神科のか」

「そう」

「付いて行こか?」

「えぇよ、一人で行けるし」

「そか、ほなまた明日な」

「うん」


そう言って亜沙子は校門で隼人と別れ、学校から地下鉄に乗り、梅田うめだ近くにある病院に着いた。


「こんにちは」


受付で挨拶をし、診察券を出す。


「こんにちは、今日は診察だけでいいですか?」

「時間かかります?」


と、待合室を見渡す。

結構患者が待っていた。


「ちょっと時間かかるかもね」

「デイケアで待っててもいいですか?」

「いいわよ、順番来たら呼びますね」

「ありがとうございます」


そう言うと亜沙子は上の階にあるデイケアルームへ向かい、部屋のドアを開ける。


「こんにちは」

「あら木之川さん、こんにちは。今、学校の帰り?」

「はい、診察まで時間あるので待たせてもらってもいいですか?」

「えぇ、いいですよ」


と、デイケアのスタッフは笑顔で対応する。

席に着いてため息を付いていると、若い女性が声をかけて来た。


「木之川さん、ご無沙汰」

「あ、どうも」

「学校楽しい?」

「んー、そんなに……」

「そか、大変かもだけどファイトだよ!」

「ありがとうございます」


亜沙子は、ノートを出して、テーブルで宿題を始めた。

それから数十分して、デイケアルームの内線が鳴る。

スタッフが亜沙子に声をかける。


「木之川さん、診察、順番だって」

「あ、わかりました、今行きます」


と言い、亜沙子は、デイケアメンバーとスタッフに向かって、「失礼します」と言い、部屋を出て下へ降りて行った。


待合室へ行くと、受付の女性が、「次だからね」と笑顔で行って来た。

そして、3分ほどで名前を呼ばれ、亜沙子は診察室へ入る。


「やぁ、木之川さん。こんにちは」

「先生、こんにちは」

「最近はどうかな?学校とか」

「学校は……遅れてですけど、今日は行きました、てか、行かされました」

「そか、頑張ったんだね」

「はい……」


亜沙子は、主治医に、本当はサボってたところを街で警官に補導されて先生に迎えに来られた、と言うことを話せなかった。


「夜はちゃんと眠れてる?」

「んー、なかなか寝付けないです……」

「睡眠剤変えてみようか?」

「悪夢見ないようなお薬があれば……」

「そうやね、じゃあちょっと薬変えてみようか」


と、ドクターは、パソコンをカタカタと操作し、処方箋の変更を画面上で行った。


「じゃあね、新しい薬、出しとくから、それでしばらく様子、見てくれるかな?」

「わかりました」

「今日はこれでいいですよ、お薬は2週間分出しておくので、また2週間後ね」

「はい、ありがとうございます」


そう言って亜沙子は診察室から出て、受付の順番が呼ばれるのを待合室で待つ。

少しして、「木之川さん、お待たせしました」と、受付嬢に呼ばれ、処方箋と診察券を受け取り、「ありがとうございました」と言って病院を出て、駅へ向かう前に、近くの薬局に寄り、処方箋を受け取り、駅まで戻り、地下鉄に乗る。


地元の駅に着いた亜沙子は、ゆっくり歩いて家に向かう。

家に着いたら、「ただいま」と言ってドアを開け、家の中に入って行く。

母親が出迎える。


「亜沙子!」

「え?」

「学校から電話あったわよ」

「交番に行ったんだって?」

「う、うん……」

「全く、心配させないでよね……」

「ごめんなさい」

「ちょっとこっち来なさい」


と言われ、母親と一緒に居間へ行く。


「あなたの辛いのは充分わかるけど、学校だけはちゃんと行ってくれる?」

「わかったわよ」

「隼人くんもせっかく毎日迎えに来てくれてるんだから」

「わかった、って!もう部屋行っていい?」

「え?あ、う、うん」

「あ、そうそう。今日診察だったから病院行って来たから」

「先生、なんだって?」

「眠れないならお薬新しいの出すね、って言って、眠剤変えてくれたから」

「そう、それでちゃんと眠れたらいいわね」

「やね、じゃあね」

「うん」


そう言って亜沙子は自分の部屋に戻った。

部屋に入って、制服を脱いで部屋着に着替え、「ふぅ」と、ベッドに倒れ込んだ。

疲れたのか、亜沙子は知らない間に眠ってしまった。

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