第2話:なんばにて。

学校をサボった亜沙子は、電車がなんば駅に着くと、エスカレーターで2階の中央口へ降り、ヒナ子との待ち合わせ場所のマクドナルドへ向かった。


この店は、お昼以降や夕方は客でごった返すが、朝は比較的席も空いている。

亜沙子は、適当に朝マックのメニューを注文し、カウンター席に座ってヒナ子の到着を待った。


「あーさこっ!おはよ!」


と、亜沙子に声をかける女の子が居たので振り返るとヒナ子だった。

ヒナ子は、唯一高校で心を許している女友だちだった。


「ヒナ、おはー」

「おはー、私も注文して来るわー」

「うん」


そう言って鞄を亜沙子の横の席に置き、注文に向かった。

しばらくしてヒナ子が戻って来る。


「おまたせー」

「おかえり」

「今日はラウンドワン行こー」

「えぇな、カラオケやろ?」

「そうそう」

「学割安いもんな」

「うんうん」

「誰か男友だちでも呼ぶか?」

「要らん要らん、男なんか要らん」

「そうか」

「うん」


そうゆう会話をしながら朝ごはんを食べていた。


そして、ゆっくり朝ごはんを食べ終えた2人は、マクドナルドを出て、なんば駅を出て、なんばの街へ繰り出した。

戎橋筋商店街えびすばしすじしょうてんがいを歩いていると、制服の男性に声をかけられた。


「君たち?」

「はい?」


2人が振り返ると、そこには、制服姿の男性の警官と婦警が立っていた。


「君たち、高校生やろ?こんな時間にこんなトコで何してんや?」

「え……あ、あ、あの……」と、亜沙子とヒナ子はおどおどする。

「ちょっと交番まで来てくれるかな?」


2人は、近くの交番へ連れて行かれた。


「座って?」と、若い婦警が言う。

2人は椅子に座る。

「学生証、見せて」と、男性の警官が言う。

2人は、学生証を出した。

「なんだ、鈴ヶ丘の学生さんじゃないか」

「は、はい……」

「学校へも行かないでこんな時間に難波なんかでで何してるんだ?今日は学校やろ?」

「は、はい……」


少しの間、沈黙が続いた交番の中で、亜沙子が発言した。


「わ、私たち、学校で虐められてて、それで、学校行きたくなくて、この子と2人で街をぶらぶらして……」

「ほんまか?」

「はい……」

「湯河さん?」と、男性警官は婦警の苗字を呼ぶ。

「はい」

「この子たちの学校へ電話してくれる?」

「わかりました、あなたたちの学生証、借りるわね?」


と言い、デスクに置かれた2人の学生証を手に取り、湯河と呼ばれた婦警は奥の部屋へ行き、学校へ電話をした。


その間、男性の警官が優しく応対する。


「虐められるのは辛いかもしれないが、みんなそうやって大人になっていくんやで。わたしだって学生時代は虐められていた。君たちの気持ちは分からないでもない。でも、辛いからと言って、学校をサボるのは良くないことだよ」


「すいません……」


2人は下を向いて泣き出した。


そして、奥の部屋から出て来た湯河は男性警官の上司に話しかけた。


「今、この子たちの学校に電話しましたら、手の空いている先生が2人を迎えに来るそうです」

「そうか、ありがとう」

「いえ。あなたたち、学生証、ありがとうね」

「こんな時間にミナミ歩いてたら変な人に声かけられるわよ?まだ夜じゃないからいいかもだけど」


「はい……」


それから数十分して、一人の若い女性が交番へ来た。


「はぁはぁ、あ、あの、うちの生徒がこちらでお世話になってるそうで……」


「あなたは?」


「鈴ヶ丘天王寺校の教師・弓丘彩乃ゆみおかあやのと申します……」


「あぁ、先生、ご苦労様です。この子たちですよ」

「あ!またあなたたち!全くあなたたちは……」

「先生、この子たちも分かってるみたいなので、あまり叱らないであげてください」

「わかりました、さ、学校行くわよ、お巡りさんに謝って」


『すいませんでした』と、2人は声を揃えて謝って頭を下げた。


「さ、行くわよ」と、弓丘に言われ、2人は交番を出て行く。

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