第10話

 無とブリ男が、教室から出るところを温かい目で見ている少年がいた。

 ボクだ。


「黄昏くんは、一緒に行かないの?」


 早良は、勇気を振り絞ってボクに声をかけた。


「お……?

 早良は、転入生より黄昏が好みか?」


 清空が、そう言うと早良は少し照れる。


「そう言うんじゃないって……」


「僕は、お呼びじゃないから……」


 ボクは、小さな声でそう答えると早良が尋ねる。


「友だちじゃないの?」


「友だち……?」


 ボクが首を傾げる。


「違うの?」


 早良が、再びボクに尋ねる。


「わかんない……」


「そっか」


 早良が、そう言って小さく息を吐く。


「何をしている?」


 すると無が早良の後ろに立っていた。


「へ?」


 早良の背筋が一瞬凍る。


「何をしていると聞いている」


 無が、そう言って早良に近づく。


「何もしてないぞ」


 清空が、そっと答える。


「そうか。

 ならいい」


 無が、そっけなく答えるとボクの前の席に座る。


「で、転入生とは何の話をしたんだ?」


 清空が、そう尋ねるとブリ男が答える。


「お手洗いの場所をお伺いしていました」


「ひゃ!ブリ男さん!」


 早良が驚く。

 思わずブリ男の名前を呼ぶ。


「はい」


 ブリ男がニッコリと笑う。


「って知り合いなのか?」


 清空が、少し驚く。


「えっと、夢の中で出逢った人?」


「ん?どういうことだ?」


 清空が、早良に尋ねる。


「魔法少女の夢……?」


 早良が、そう言ってブリ男の方を見る。


「あれは、夢じゃありませんよ」


 ブリ男が、そう言ってニッコリと笑った。


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