第9話

 すると担任が、ドアを開け教室の中に入ってくる。


「はい。

 突然だけど、君たちに転入生を紹介するぞ」


 担任が、そう言って静かに笑う。

 するとクラスの女子たちが黄色い悲鳴をあげる。


「先生早く紹介してください!」


 クラスの女子がそう言うと担任が、ドアの向こうにいる生徒に声をかける。


「そういうことだ。

 鰤谷!入っていいぞ!」


 担任が、そう言うとドアが開くそれと同時に女子たちが黄色い悲鳴をあげる。

 扉から、そこそこイケメンの男子生徒が現れる。


「はじめまして、ごきげんよう。

 僕の名前は、鰤谷 ブリ男と申します」


 その生徒を見た早良が目を丸くして驚いている。


「早良、どうした?」


 清空が、心配そうに早良の方を見る。


「あの人……

 私の夢に出てきてた……!」


「あの魔法少女の夢にか?」


「うん……」


 早良が小さくうなずく。


「そこ!私語は慎みなさい!」


 担任が、そう言って早良と清空の方を見る。


「あ、はい……

 ごめんなさい」


 早良が小さく謝ると担任がニッコリと笑う。


「そうだ。伊藤さん!

 鰤谷の面倒を君が見てくれ」


「へ?」


「いいじゃないか?

 早良!早良彼氏ゲット大作戦だ!」


 清空が、そう言ってケラケラと笑う。


「そんな、清空ちゃん他人ごとだと思って……」


「では、早良さん。

 指導のほどよろしくお願いします」


 ブリ男がそう言って笑うと早良が、ため息をつく。


「はい……

 こちらこそ、よろしくお願いします」


「んじゃ、席は伊藤さんの後ろに座ってくれ」


 担任がそう言ってニッコリと笑った。


「はい」


 ブリ男が、笑顔を作ると早良の後ろの席に座った。

 そして、ホームルームがはじまる。

 担任が淡々と出席を取りそのあとすぐに教室を出た。


「ブリ男さん……

 もしかして、昨日会いました?」


「はい」


「もしかして、あれって夢じゃないんですか?」


「はい。

 現実です。

 リアルです。

 事実は小説よりも奇なりです」


「そ、そうなんだ……」


 早良は、そう言って落ち込む。


「……おい、鰤谷」


 そう言って現れたのは、無だった。


「あ……

 近藤くん?」


「伊藤、コイツは俺たちに任せろ」


「え……?」


 早良は、戸惑いながらブリ男の方を見る。


「僕は、構いませんよ?」


「交渉成立……だな」


 無は、そう言うとブリ男を連れてそのまま教室を出て行った。

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