第8話

 早良が目を覚ましたのは、自分の部屋のベッドの上だった。


「ここは……私の家?」


 早良が、ほっとため息をこぼす。


「そうだよね。

 夢だよね……私が、魔法少女になるなんて……」


 早良は、そう言って小さく笑った。

 そして、時計に視線を送る。

 6時30分。


「あ、朝ごはんの時間だ」


 早良が、学校の制服に着替え自分の部屋を出た。

 そして、ゆっくりと階段を降りる。


「お母さーん。

 今日の朝ごはんはなにー?」


 早良が、そう尋ねると早良の母親が答える。


「今日は、採れたてキャベツのサラダとサンマのひらきよ」


 早良は、リビングを見渡す。


「よし!いない……

 あれは、夢だったんだ……」


「何を言ってるんだい?」


 早良の父親が、優しい口調でそう尋ねると早良が笑顔で答える。


「なんでもない!

 いっただきます!」


 早良は、そう言って席に座ると手を合わせた。


「早良、学校はどうだい?

 友だちは出来たかい?」


「あー。

 ボチボチかなぁー」


 早良は、苦笑いを浮かべる。


「そうかい……」


 早良の父親は、そう言って味噌汁をすする。


「うん。

 友だちは、清空ちゃんだけでいいや」


 早良は、そう言って小さく笑うと魚に箸を進めた。


「ダメよ早良、友だちは沢山作らないと……」


 早良の母親が、そう言って苦笑いを浮かべる。


「いいんだ……

 私は、私だから……」


 早良の表情が曇る。

 そして、早良は無言のまま食事を終えるとそのまま学校へと向かった。

 席につくと先に教室にいた女子生徒に声をかける。


「清空ちゃん、おはよー」


 ショートカットのその少女は、ニッコリと白い歯を見せる。


「早良、おはよう!」


 この少女の名前は、詩空 清空。

 義理の親の両親が、孤児院を経営していて早良とは幼なじみである。


「今日ね、変な夢見ちゃったんだー」


 早良が楽しそうに昨日あったことを清空に話す。


「ほうほう。

 魔法少女とは、早良らしくない夢だな」


 清空は、そうってケラケラ笑う。


「でしょー」


 早良も笑う。


「そう言えば早良。

 今日転入生が来るらしいぞ?」


「転入生?」


 早良が首を傾げる。


「ああ、そこそこイケメンらしい。

 早良、彼氏ゲット大作戦だな!」


「えー!

 彼氏なんてまだいらないよー」


 早良が顔を真赤にさせて体を丸めた。

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