21:00

「あーいい結婚式だったな。」


「そうだな。」


今さっきまで、大学の友人の結婚式に出席していた。

まさか卒業して2年で結婚する人が現れるなんて思わなかったな。


でもまぁ考えたら結婚適齢期に入ってるんだもんな俺たち。


「そうだ、お前二次会行くの?」


「んーどうすっかなぁ。」


「お前はいつまで経っても優柔不断だな。」


俺は本当に優柔不断だ。

だから好きな人ができても、アタックできずじまいで今まで過ごしてきた。


「わ!あいつの子供可愛いな。あのトナカイのもらったのか?」


同級生も一人もまた前に結婚式を挙げ、子供も生まれた。

みんな、きちんと選択してきてるんだろうな。


「みてー!」


「おうおう、可愛いな。」


友達は子供と話し始める。


「お前達は二次会行くんだろ?」


「こいつが悩んでるからまだ微妙。」


「また優柔不断ぶちまかしてるのか。まぁそこがお前らしいけどな。」


「俺も治したいんだけど、なかなかな…。」


「ガツガツしてるよりはいいと思うよ!」


奥さんがフォローを入れてくれる。


「ありがとうございます…。」


「いや、男はガツガツしてないと彼女出来ないから!こいつまだ…」


「おい、言うな。」


言わねーよと言われたが、止めなかったら言ってただろ。


「じゃあ僕たちはタクシーで帰るから。じゃあまたな。」


「おう!気をつけてな。」


「ばいばーい。」


子供が俺たちに手を降振る。


「バイバイ。」


俺も手を振り返した。

タクシーを見送り、とりあえず駅に向かう。


「で、どうするんだ?」


「んー…」


「お前が片思いしてた子も来るって、新郎様が教えてくれたぞ。」


スマホの画面を見せてくる。


「わ!やめろよ!」


周りには知り合いが二次会に向けて駅に歩いている。

こんなとこでバレたら赤っ恥だ。


「行く?行かない?」


「行…く…ます…。」


「まだ惚れてたのか!今日連絡先交換すればいいじゃん。」


「俺のこと忘れてるでしょ。」


「いやぁ…?そうでもないと思うけど。」


また、適当なこと言って、俺をおもちゃみたいに扱うな。


駅に着くと、シャカシャカとラジオが流れている。


[May happiness come to everyone who listens.

皆さんこんばんわ。明日のクリスマスが終わるまでひとつまみの奇跡をお届けします。]


「忘れ物か?」


「かな?」


と電源を消し忘れ物を届けにいこうと思い階段に向かおうとすると、ちょうど電車が来た。


「俺行ってくるから、先行っててもいいよ。」


「いい、ここのベンチで待ってる。」


「わかった。」


俺は階段を駆け上がろうとすると、電車に乗ろうとうえからたくさんの人が降りてきた。

若干潰されながらも上に行こうとする。


すると、俺がずっと片思いしていた子とすれ違った。


「あっ…」


あの子が声を出して俺の顔をみる。


俺は人の流れで上に行くしかなく、そのまま階段を上がった。


あー…せっかく目があったのに話すチャンスもない。


[では、次の曲、クリスマスソング。あなたに幸多からんことを。]


さっきもみくちゃにされた時、電源をつけてしまったのかラジオが流れ始める。


その時、肩をとんとんと叩かれて、後ろを振り向くと俺の好きな彼女がいた。


「それどうしたの?」


「忘れ物っぽい。え、電車いいの?」


「君と話したかったから。」


え…


「おーい、やっぱ俺先行ってるわー。」


とさっきまでベンチに座っていた友達が電車の扉前で叫ぶ。

そして飛び乗った瞬間ドアが閉まってしまった。


「電車行っちゃったね。一緒に届けに行ってもいい?」


「え、あ、うん!まあすぐそこだけどね!」


俺は彼女と二人、忘れ物のラジオを届けに行った。

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