8:00

「お疲れ様でーす。」


「お疲れ様、また来週ね。」


仕事場のコンビニを出て自分の家に帰る。


朝だつーのに、もう恋人とお手手繋いでデートかい。

私も本当はとなりにいるはずだったんだけどなー。


なんてね。


去年、好きな人に一緒にクリスマスを過ごして欲しいと言ったら当日まではぐらかされて、答えはNO。


だったらさっさと言えよ!って思うんだけど、

好きな人に強くは言えない。


街を歩くみんながとても楽しそうにしている。

なんか私一人って感じすごくない?


嫌だ嫌だ。

もう現実逃避しーよおっと。


カバンからイヤフォンとスマホを出して繋げる。


ラジオをつけて、一人を紛らわす。

人の声を聞いてると一人じゃないって思えるから、ラジオすきなんだよなー。


[May happiness come to everyone who listens.

皆さんおはようございます。クリスマスが終わるまでひとつまみの奇跡をお届けします。]


ひとつまみじゃなくて、

バコバコに私に届けてほしい!

一生分、いや三生分ほしい!


なんて届かない願い事をする。


家に近づくにつれていつものパン屋さんに行く。


「おはようございます!」


「いらっしゃい!ちょうどチョココロネ出来たわよ。」


「やった!ラッキー!」


ひとつまみの奇跡ありがとう!


「今日はいい日だなー。」


「今日はデートかな?」


「したいけど、相手いないから。」


「若くて、こんなに可愛い子ほっとくなんてこの世も末ね。」


「まあ、悪い虫がつくよりいいんじゃないか?」


「そうね、今は虫しかあなたの周りにいないのかもね。」


わははと笑うパン屋の夫婦。

いいな。こんな風なカップルになれたらどんなに人生楽しいか。


朝とお昼分のパンをトレイに乗せてレジに行く。


財布、財布っとー…え?無くない?


「ちょっと待って。ここ借りるね。」


と言ってレジのテーブルを借りてカバンの中身全部出す。

やっぱりない。

どこかで…あ!


昨日暖かいおでん買うときに自販機で財布使って、

飲んだ後リップと財布ニット帽に入れてしまったんだ。


大きめのポケットがついてるコートの中を探す。


うわぁ…ない。

これは忘れて置いてきたか、落としたやつ。


「ごめんなさい。財布忘れた…。」


「そっか、どうする?この分取っておこうか?」


「お願い!ダッシュで戻る!」


「「気をつけてー。」」


二人に見送られ、コンビニにいく。


店長に聞いたりしたけどそれっぽいのはなかった。

近くの交番を教えてもらった。


イヤフォンをつけて心を落ち着かせる。


[では、次の曲、Last Christmas。あなたに幸多からんことを。]


おーい、幸せもくそもないぞー。

しかもめっちゃ有名なクリスマスソングが流れる。


私のクリスマス散々過ぎない?

去年は、好きな人とは過ごせずに、

今年は夜勤で働いて、好きなパン買おうとしたら財布無くしたこと気づくって。


もうちょっといいクリスマス過ごしたーい!

恋人ほしーい!

一途で、サプライズ好きで、私を楽しませてくれる人!

サンタさんよろしく!


私は駆け足で交番に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る