5:00

なぜかまだ朝が明け切らないのに目がさめる。


寝る前にいたあなたがいなくなっていて、

寂しくて起きたのかもしれない。


あなたを探しに部屋を出ようと思ったら、少しカーテンが開いているのに気づく。

ベランダにいるのかな?


窓を開けると、真っ暗な空を見上げる薄着のあなたがいた。


「どうしたの?風邪ひいちゃうよ?」


「風邪はいつか治るよ。…。」


あなたが言いたいことはわかるよ。

だけど、今は一人で居ないで、一人で泣かないで。


ここから見えるあの公園の桜が咲く頃に

あなたの命が消えると言われた昨日、あなたより私が先に泣いてしまってごめんね。


こんな時だからこそ支える側が笑顔でいた方が

いいはずなのに、感情が先走ってしまってごめんね。


「はい。コート着て。」


あなたはコートを着ようとしないので

肩にかけてマフラーを巻きつけ、ニット帽をかぶせる。


あなたにどんな言葉をかけても

目は昔の輝きを失ってしまった。


ただ死を待つ人として今を生きてるみたい。


多分もう少し外にいるだろうと思って、

空気をぶち壊すためにラジオをつける。


[May happiness come to everyone who listens.

皆さんこんばんわ。クリスマスが終わるまでひとつまみの奇跡をお届けします。]


私とあなた、同じ空間にいるなのに

一緒にいないように感じるのはなぜなんだろう。


あなたはさっきから、星を眺めている。

なにを考えているんだろう。


こんな時、いいお嫁さんだったらなんて声をかけてあげられるんだろう。


わたしにはわからない。


[では、次の曲、Snowman。あなたに幸多からんことを。]


あなたは鼻をすする。

だから風邪ひいちゃうって言ったじゃない。


そんな頑固なところも、私に泣き顔を見せないところも、弱音を一切はかないようにしているのも私を思ってのことなのかな。


でももう無理しないで。

だからきっとこれがチャンスなの。

あなたは気を張り詰めすぎたの。

だから、私の前ではもう本当のあなたになっていいの。


雪だるまみたいにモコモコになったあなたを

背中から抱きしめる。


それでもこっちを向いてくれないのね。


今度、あなたの好きなスキーに行きたい。


あなたと旅行に行きたい。


一緒に美味しいものいっぱい食べたい。


あなたとの時間がいっぱいほしい。だから一人にならないで。


私とあなたは二人で一人。大丈夫。


あなたの瞳から流れた暖かいものが

私の手に当たる。


あなたがここにいたいなら、私も一緒にいる。

あなたのことを心から愛してるから。

きっと神様も愛し合ってる二人を引き離すことなんかしないわ。


だから、安心して。

神様のちょっとしたいたずらだから。

二人で解決できることなの、きっとね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る