4:00
「はぁあ…ねっむい。」
仕事のために急いで家を出る。
今日はみんなのためにたくさんケーキを作らないといけない。
昨日もまあまあ遅い時間まで準備していたけど、今日から明日が本当に戦場。
大変だけど職場には先輩がいるから頑張れる。
新人の私がヘマをした時、いつも元気づけてくれる優しい先輩。
「明日ちゃんと起きろよ。」
と、昨日ポンポンと頭を撫でられた感覚がまだ残っていて、家に帰ってる時にその感覚と先輩の笑顔が頭から離れなかった。
なんだか好きがいっぱいになってにやけちゃう。
さっきも玄関でニット帽をかぶる時に思い出して、鏡の前でにやけてしまった自分が恥ずかしくて思わず鏡から目を逸らしてしまった。
にやけ半分な私はまだ夜が明けきらない薄暗い中、仕事場に向かう。
仕事場に行く途中、早起きなパン屋さんに寄るのが日課だけど今日はさすがに開いていないかな。
…と思ったら開いていた!
私は迷わずパン屋に入る。
「おはようございます!」
このパン屋さんは10年以上この地域に愛されていると、先輩がこのパン屋さんのことを教えてくれた。
「あら!早いわね。おはよう。」
「おはよう。今日と明日、大変だと思うけど頑張れよ。」
このパン屋さんは夫婦で営んでいてとても仲良し。
私が職場に入りたての頃、先輩に教えてもらってからよく行くようになった。
ここのチョココロネが本当に大好きすぎて週三で食べてた時もあった。
けど、ちょっと前に太ってしまったから少しセーブして1週間頑張ったご褒美として買うようにしていた。
「あんたの好きなチョココロネ作っといたよ。」
「え!ありがとう!食べる!」
トレイを持ち、出来立てのチョココロネを乗せているとジジジと奥さんがラジオをいじり始めた。
[May happiness come to everyone who listens.
皆さんおはようございます。明日のクリスマスが終わるまでひとつまみの奇跡をお届けします。]
「あれ?いつもプレイヤー使ってなかったっけ?」
「そうなんだけど、昨日からちょっと調子悪くてノイズが走っちゃうの。」
「そうなんだ。じゃあしょうがないね。」
他愛のない会話をしながらパンを選んでいく。
普段よりは少ない品揃えだけど、私の好きなものばかりが並んでいて選ぶのに時間がかかってしまう。
[では、次の曲、boy friend。あなたに幸多からんことを。]
キラキラした雰囲気の曲が流れ、可愛らしい声の女性がふわふわ歌っていて耳が楽しい。
…あ、このパン。
先輩がよく食べてるやつだ。
先輩と付き合うとまではわがまま言わないけど、もっと仲良くなりたいな。
欲を言うなら、遊びに行く友達くらいになりたいな。
ぽけーと先輩のことを考えていると、パンを置かれている棚の向こうにあるガラス窓から先輩が私に手を振っていた。
「わっ!」
「あらー、やっぱり今日も開けといてよかったわね。」
「そうだな、ここら辺コンビニないからな。」
パン屋夫婦がそう話していると先輩がお店の中に入ってきた。
「おはよう。」
「おはようございます。」
「俺もパン買っとこー。」
そう言って、先輩がトレイを持ってパンを選び始める。
朝からコートもこもこの先輩かっこいいぃ…。
ずっと一緒にいると心臓が爆発しそうなので私は精算をしてさきに出ることにした。
「あ、待って!一緒に行こう。」
と、先輩は即決でパンを決めて手早く精算をした。
「2人とも頑張ってねー。」
パン屋の夫婦が手を出して振りながら見送ってくれた。
まだ少し温もりがあるパンで手を温めながら2人に一礼して先輩と一緒に職場に向かう。
「なぁなぁ、甘いもん好き?」
「はい!目がないです!」
「じゃあこれちょっと飲んでみて。」
と言って私の持っていたパンを先輩が持ち、その代わりにシックな黒ボトルを渡される。
「これ、ホットチョコ。美味いからあげる。」
「先輩が作ったんですか?」
「うん。めっちゃ美味いから飲んで。」
わぁ、めっちゃ美味しいのか…!
コクっと一口飲むとじわっと口から体が温まり、香り高いチョコが鼻の奥に残る。
「めっちゃ美味しいです!」
「よかった。」
にこっと優しく笑う先輩。
あー…、かっこいい。
2人でホットチョコを分け合いっこしながら仕事場に向い仕事を始めた。
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