訪問

「そういえばあなた、私と昨日連絡先を交換してませんわね?あぁ、私としたことがうっかりしておりましたわ!」


おい…。なんで俺はまた絡まれてるんだ…。連絡先…?誰が交換するか…!面倒くさいのが目に見えてるだろ…。


昨日コイツに海斗との仲を取り持って欲しいとたのまれたのだが断ったはずだ…。


「ほら、あなたの連絡先を教えなさい!」


「いやだ」


それよりも今はお昼ご飯を食べたい…。めちゃくちゃお腹減ってるんだよ…。


「なぜなのですか!?この私の連絡先が手に入るのですよ!?こんなチャンスあなたにはもうないかもしれないというのに!」


くっ!コイツいちいちイラつくことを言ってきやがって…。


「いや、いらないから」


「!?」


「というわけで俺お昼ご飯食べないといけないから戻るわ」


屋上に行くといつも通り海斗と中谷さんが一緒にご飯を食べていた。この光景も今や見慣れたものだ。


「なんかさっき翔、呼び出されてなかった?もしかして告白!?」


めっちゃニヤニヤして聞いてきやがって…。お前のことなんだがな…。


「いや、違う。なんか俺の落とし物拾ったみたいでな」


悪いな、海斗…。完全に嘘をついたが許して欲しい。こうしないと面倒だから…。


「あれ?もしかしてそのカンジ、早崎君、彼女のこと知らないの?」


「彼女とは?」


「だからその落とし物拾ってくれた人のこと」


ああ、えーっと…。確か名前は…、


「朝日……、日菜……だったけ…?」


「彼女、結構この学校では有名人だよ?」


「え?そうなの…?」


「そうだよ!朝日財閥のご令嬢で、美人だから結構有名だよ?」


へぇ…。そうなんだ…。まぁ、それを知ったところで俺は特に何も思わないがな…。

あぁ、でも一つ思うことがあるとするならアイツ携帯持ってたんだなということぐらいだな…。ご令嬢も今時携帯って持ってるんだな…。


まぁ、どうでもいいけどな…。アイツが俺に話しかけてこなければ別に…。


「でも、何か落とし物拾って、そこから恋に発展するみたいな展開ありそうだけどなぁ。そうなったらそれはそれで面白いとおもうけど…」


「なんも面白くねぇわ…」


今日のお昼は二人からそのことについていじられまくった。

だから、何も無いって言ってるんだけどな…。



**

はぁ……。やっと学校終わった…。一日の最後の授業ってしんどいよな…。あとお昼前の授業も。今日は本当に寝てしまいそうだった…。


「あの…、早崎君?朝日さんが呼んでるよ…?」


クラスの女子にそんなことを言われた。うわっ、行きたくねぇ…。ていうか今日用事あるんだよ…。


しょうがない…。行くしかないか…。マジで行きたくはない…。


「なんだ?」


「だから…!連絡先を教えなさい!」


またかよ…。仕方ない…。ここは海斗に犠牲になってもらうか…。


「お前、俺の連絡先を聞くぐらいならもう海斗のラ○ンあげるぞ…?」


「本当ですの…!?」


「あぁ、俺は嘘はつかない人間だ」


いや今日のお昼嘘ついたけど…。


「じゃあ、ほら…」

   ………

………

………


「感謝してあげますわ!」


そう言って、彼女は帰って行った。よし、これで絡まれることも無くなるだろう。



**

「着いたな…」


俺は用事の場所に着いた。それは、自分の家でもバイト先でも無い。海斗の家だ。

そう、俺は昨日、電話で夏美さんに明日家に来ない?と誘われたのだ。


何とも言えない緊張感があるな…。そう思いながら呼び鈴を鳴らした。



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