お嬢様

「えーっと…?俺に何の用ですか…?」


「ここでは話せない内容よ。だからちょっとこっちに来なさい」


俺はこれ行かないといけないの…?絶対に面倒くさいだろ…。マジでろくなことないぞ…。


「いや待てって!俺は行くとは言ってないぞ!」


「何を言っているのかしら?私のお願いなのよ?来るという選択肢以外ないじゃないの」


はぁ…?何だコイツ…?人へのものの頼み方を知らないのか?


「ほら…。早く来なさい」


「はぁ…。分かったよ…」


こんなことで言い争ってもいいことなんて全くないし、時間の無駄なので大人しく着いていくことにした。


「ここなら人が来ないわ」


連れてこられたのは階段の踊り場。普段ここの階段はあまり使われていないので、聞かれたくない話をするのにはもってこいの場所だ。


「で?用件は何だ…?」


「私と海斗君が付き合うお手伝いをして欲しいのよ」


いやなんとなくそうだと思った…。めちゃくちゃ面倒くさいな…。


「いや…、遠慮しときます…」


「な…!?この私のお願いが聞けないと言うの!」


「ぶっちゃけ言って面倒くさいし、そもそもあなたが誰かも知らないので」


そうだ。そもそもこの人誰なんだ?俺基本的に休み時間も教室から出ないから他の教室の人を知らないんだよ…。


「な、何を言っているのかしら…?あなたまさか私のことをご存知なくて…?」


「えぇ。全く知らないな。マジで誰だ?」


「へぇ、いいですわ…。じゃあ仕方ないので私が自己紹介をしてあげますわ」


くっ…。なんか上から目線で腹立つが、気にするな、俺。


「私は朝日 日菜。クラスは…………………

……………………………………………………

……………………………………………………

……………………………………………………


いや…ちょっと待て。長い。長過ぎるだろ…。もうコイツかれこれ十分ぐらい喋ってるぞ…。どんだけ自分のこと好きなんだよ…。


とりあえずまとめると、この女の名前は朝日日菜。どうやらどっかの財閥のお嬢様らしい。まぁ、喋り方からしてそんなカンジはしたが…。

 

金色に輝く髪を編み込みにしており顔立ちも美少女と言って差し支えないだろう。スタイルもよく、手足もすらっとしている。まぁ、性格の分でプラマイゼロな気はするが…。

 

「ちゃんと覚えておきなさい」


「ああ、分かった。それじゃあな」


よし、じゃあ帰るか。なんかすっごい疲れたわ…。


「ちょ、ちょっと待ちなさい!何帰ろうとしているの!?」


「え?だって話終わっただろ?帰るのは当たり前のことだろ?」


「ちゃんと海斗君のことを手伝ってくれるなら帰ってもいいですわよ」


「いや、ダメだ。自分のことは自分でやらないとな。人に頼ってちゃダメだ」


本心では早く帰りたいと思っているので正論っぽいことを言っておく。


「た、確かにそうですわね…」


んー。もう帰るか…。よし、今のうちに。


「じゃあな」


「あっ!ちょっと待ちなさい!」


俺はそのまま走って学校を出た。ていうか最初からこうすれば良かった…。




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