体育祭4

「みんな、お疲れー!カッコ良かったぜ!」


「早崎って走るのはやかったんだな!」


くっ、やっぱりこっちには男しか集まってこない。女子が集まってんのは海斗の方だった。あとでアイツはボコボコにしときます。


「翔君!」


おっと?これは女の子の声…。誰だ?


そう思い、振り返ると満面の笑みで俺に手を振っている夏美さん。本当にこうして見ると、美人だしスタイル良いしもうぶっちゃけ女子高生でもいけてしまうのではないかと思ってしまう。


いや…。っていうか自分の息子の方に行けよと思ったが心に留めておく。


「翔君、カッコ良かったよ♪」


「あぁ、はい…。ありがとうございます?」


幼馴染の母親にカッコ良かったと言われると困惑してしまう…。まぁ、夏美さんは美人だから恥ずかしさも多少はあるが…。


「次は決勝だね!応援してるから頑張って!」


「はい、分かりました」


**

俺らの競技はどうやら大トリらしい。体育祭の一番最後100×4の決勝。プレッシャーがハンパじゃないな…。


体育祭も最後に着々と近づき、それに比例して観客のボルテージも上がっている。


しかもどの競技を見ても予選とはレベルが違う。例えば、今走っている200メートル個人でも全員の実力は拮抗してるし、それでいてスピードも速い。それがより一層プレッシャーになるのでこれ以上は考えないようにしよう。


「男子100×4メートルに出る人達はそろそろ準備して下さい」


幸か不幸か時間はすぐに過ぎ、俺達が出る番がやってきたらしい。他の三人もやはり初めてだから緊張して………



……ないな。すごくね?岡崎なんて逆に自信があり過ぎているような表情をしている。


よし…。俺もリラックスだ…。


身体の緊張をほぐすために深呼吸を数回する。


「よし、いくか…」


そう呟き、俺は戦いの舞台へと足を進めた。


**

「第一レーン………」


ふぅー、もうすぐか…。めちゃくちゃ緊張してるわけではなく、適度に緊張しているカンジだ。適度な緊張はいいことだとどこかで聞いたことがあるため精神面では良好と言えるだろう。


「第六レーン、岡崎 勇気」


マジか…。俺らスタートは外側からか…。なんともクセのある位置だな…。


「スタートの用意をしてください」


始まるのか…。決勝が…。


「位置について……………よーい…………」


パンッ


始まるまでは静かだった場が、一瞬で応援の声で埋め尽くされる。


「いけぇー!」


「頑張れぇー!」


そういう声が聞こえてくるが、岡崎はどうやら気にせずに走っているらしい。緊張の顔は全くない。


剣崎も同様、緊張はせずに走れているようだ。ただ、アイツは走り方が独特なのが目立つな…。まぁ、速いんだけど…。


海斗は言うことがないぐらいに速いな…。走って汗をかいている様すら絵になる。ガチでどこのハイスペック主人公だよ。


こんなことを考えている間にバトンがまわってきそうだ。いや、こんなことを考えれるぐらいにリラックス出来ていると言える。


「翔!あとはお願い!」


「ああ、任せろ!」


バトンを受け取った俺は、そのまま一気にトップスピードに。前の人を抜かすために全力で足を動かす。


ハァハァ


どんどん息も上がってくる。身体も疲れてくる。


まだ、いける…。まだ、抜かせる…。


そう自分を鼓舞しながら走る。皆んなの応援を糧にして。


いけるっ!いけるっ!足を動かせ!手を振れ!息を吸え!


そう思いながら前の人の背を追いかける。


そして………。





**

「お前らすげぇよ!」


「リレー優勝だぜ。そして総合成績もこの学校初の一年生での三位!お前らはヒーローだ!」


クラスの奴らに囲まれている。そう、俺達は優勝した。そして、総合成績でも三位という快挙。体育祭が終わり教室に戻ってきたが今俺達は沸きに沸いている。


「やったね!翔!」


「俺らが最強だ!」


「武士道!」


剣崎はちょっと意味が分からん…。


「なぁ、俺ら体育祭も終わったし打ち上げいかね?」


クラスの奴がそんなことを言い出した。



「あっでも今日は皆んな疲れてるから、また全員の予定をあわせてな!」


「賛成〜」


「俺も!」


どうやらまた打ち上げに行くことになったらしい。


**

家に帰って、風呂を浴びてすぐに寝る用意をする。明日は土曜日だからめっちゃ寝るか…。


そうして俺は深い眠りについた。


ピロンッ


だから俺は携帯が鳴ったのに気づかなかった。

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