待ってたんですか?
え?なんで来てるの?夏美さん…。会社帰りなのかはわからないが珍しくスーツ姿だ。いつもみたいなおっとりとしたカンジではなくキリッとした雰囲気が出ている。
何着ても似合うなとしみじみ思う。店に夏美さんが来ただけで雰囲気が変わる。
「翔君、接客頼むわ…。あんな美人は俺には無理だ…。だから頼む!」
「え!嘘でしょ!先輩、ちょっと待って!」
先輩はそう言うと店の奥へと逃げていった。マジかよ。しょうがない、やるしかないか…。
「いらっしゃいませ〜、お客様、好きな所に座ってもらって大丈夫ですよ」
なんか恥ずかしいな。幼馴染のお母さんにバイトしてるところを見られるのは…。
ただ仕事ではあるのでしっかりと笑顔で対応した。夏美さんが一瞬サッと顔を逸らした気がするが気のせいか?
そうして夏美さんは座る場所まで歩いて行った。そのときに小さい声で何かを呟いていたが何を言っているのかは聞こえなかった。
「笑顔は反則だよ…。普段があんまり笑わないからギャップがあってキュンときちゃった…」
**
「注文は何になさいますか?」
接客は継続中だ。先輩完全にサボってんだろ…。
「普通のココアをもらおうかな♪」
さっきから俺をニコニコして見てきている夏美さん。めちゃくちゃやりにくい…。ガチで先輩に代わって欲しい…。
「先輩!お願いします。代わって下さい」
「え?どうしたんだ?そんなに嫌だったのか?」
「いや、知り合いなんで…。なんか恥ずいんすよ…」
「ほうほう…。そうかそれはおもしろそうだから交代しないよ〜」
最悪だよ…。この先輩悪魔だ…。おもしろがってるし…。
「大丈夫大丈夫!ちゃんと先輩としてしっかり見といてあげるから〜」
なにが大丈夫なんだよ…。おもしろいから見たいだけだろ…。
**
結局、俺が接客することになった。
「お待たせいたしました。ココアです」
「ありがとう♪」
マジでずっとニコニコしてるよ。あと先輩がずっとこっち見て笑っているからさらにやりにくい…。
**
終わった〜。夏美さんの接客も終わってすぐに俺もバイトが終わった。先輩はまだやることがあるとか言ってたので先に着替えてかえることにする。
それにしても今日はいつもより人が少なかったのにいつも以上に疲れた気がする…。理由は言わずもがなだが…。
よし着替えも終わったから帰るか。
「お先に失礼します」
挨拶をして裏口から出た。そうして表に出ると見知った顔の人がいた。
「あ!やっと来たね〜♪翔君♪」
待ってたんですか?夏美さん…。
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