第7話 最後の雨
「結依、大丈夫?」
「わた……し、もうだめだ。
わざわざ……タイムスリップして
私との……思い出を作ってくれて….あり……がとう」
結依の心臓の音は止まってしまった。
結依が死んだショックより驚きの方が
勝っていた。
何でタイムスリップしたことを知ってるの?
その時だった。
結依が突然、光り始めた。
「え、何で光ってるの?」
そこに美結が現れた。
「お疲れ様。私の評価を100まで
あげてくれてありがとう」
「私の評価ってどう言うこと?」
「まず、この世界は偽りの世界。
別名パラレルワールドなんだ。」
「偽りの世界?」
「現実の時はあの花火大会の日で
止まっている。
要するに結依は交通事故で死んでいる」
「え………」
僕は絶望した。
「じゃあ君は?」
「私が死んだ結依なんだ」
「どう言うことだよ」
「私は拓斗くんと屋上で出会ったときから
ずっと好きだった。
これは一目惚れっていうやつかな。
でも、拓斗くんはなかなか話して
くれなかった。
そして、花火大会の日に友達と行って
死んでしまった。
死んだあと、この姿になっていた。
黒い男の人が現れて時間を巻き戻す能力を
私にくれた。それは、現実の時は止まった
ままだが、偽りの世界に連れていくことが出来、
その記憶は現実世界に帰っても残り続ける。
私はそれを使って名前も偽って、
拓斗くんの思い出になりたかったんだよ。
今まで黙っててごめん」
僕の目には涙が出ていた。
「この世界にいた結依は?」
「それは私が生み出した架空の人物だよ」
「じゃあ結依とはもう会えないの?」
「評価が100にいったら、ここから先は
君の記憶にも残らないんだ。
だから、現実世界に帰ってもらう」
「嫌だよ。僕はいつまでも結依といたいよ」
「この偽りの世界も今日の24時には
消えて、もとの世界に戻ることになる」
「分かったよ」
「美結……いや、結依。今までありがとう」
「こっちこそずっと黙っててごめんね」
「僕はこの世界に来て結依と出会えて幸せだよ」
「君の記憶に残ればそれで良いんだ」
「もう会えなくなるんだね」
「うん」
結依と話せる最後のチャンスなのに。
話す言葉が出てこなかった。
「ねえ、拓斗くん。私の分まで楽しく生きてね」
「結依の分まで楽しむよ。
だって結依は僕の心の中の虹として
ずっと生きているから。」
「ありがとう」
結依はだんだん薄くなってきた。
涙が止まらなかった。
結依が消えた瞬間、時が戻っていた。
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