第3話 君と繋がる雨

次の日、学校に行くと彼女がいなかった。

あんなに元気な

彼女が休む理由が僕には何も分からない。

僕は少し心配になって探しにいった。

なかなか見つからなかった。

あと、探してないのは………

「屋上か」

僕は息を切らしながら、

走って屋上へと向かった。

ドアを開けると、雨の中、彼女は雄太に

絡まれていた。

「なあ、俺と付き合ってくれよ。

付き合わないとお前をここから突き落とすぞ」

「嫌です。私には好きな人がいるの。

それより、あなた彼女いるんじゃないの?」

「そんなやつ知るかよ。昨日別れた」

「彼女はどう思ってるの?」

「そんなの知らねぇよ。俺は今、お前が

好きなんだよ」

「どうせまた、美少女が来たら、

相手のことも考えずにすぐに

別れるんでしょ!!

そんな人と付き合いたくはありません」

「これ以上俺の悪口を言うな!」

雄太は彼女の頬に向かってビンタをした。

「い……たい」

彼女は必死に立ち上がった。

僕は怖すぎて見ていることしか出来なかった。

「それより誰だよ。その好きな人って誰だよ」

「言い……ませ…ん」

「言えよ。言わないと殴るぞ」

「言ったら……今度は…そのひと……が

私…みたいになって……しまう

私の好きな……人は………。

おくびょうで……戦うことを……おそれて

どこかで………見てるのかもしれな…い」

「うるせえな」

男は彼女の襟をつかんだ。

「好きな人って誰だよ。言えよ。言わねえと…」

男は彼女の頬に強いビンタをした。

彼女は泣いていた。

僕の足は無意識に彼女のもとに向かっていた。

「やめてください」

「拓斗……くん。な……んで?」

彼女は僕を見て不思議そうに見ていた。

僕は喧嘩も苦手だし、体力もない。

だから非暴力非服従で戦おうと思った。

「結依が嫌だって言ってるんだから

もうやめてあげてください」

すると、彼は僕の頬に殴りかかろうとした。

僕が目を閉じた瞬間、痛みが走った。

それは、今までに経験したことが無かった。

2発目が来て、僕の目には結依との思い出が

たくさん出てきた。まだであったばっかりなのに

何でこんな事を考えてるんだろう。

それから5発ぐらい痛みが走った。

彼女の声が遠くから聞こえてきた。

何で、僕は彼女を助けに行ったのか。

僕は彼女のことを好きなのか。

僕は地面に倒れこんだ。意識がだんだん

無くなっていった。


強い雨の音がかすかにきこえていた。

まだ、雨は降ってるんだ。

「雨が降り止まないですね」

彼女の声が遠くから聞こえてきた。

どこかで聞いたことがあった。

どこだったけ?いつだっけ?

何もかも思い出せなかった。

ふと、目が覚めた。

「拓斗くん!」

「ここはどこ?」

「保健室のベットだよ」

ふと、彼女の評価を見ると65に上がっていた。

「大丈夫だった?」

「あのあと、雨が強くなってあの男が

逃げていったの。何とか私は拓斗くんを

担いで保健室に連れていったの」

「結依は大丈夫?」

「私は何とか保健室までついたあと、

2時間ぐらい寝たら回復したよ」

「僕は何時間寝てたの?」

「4時間ぐらい」

「そうか………」

それから1分間の沈黙があった。

そして結依が泣きながら僕に言った。

「何でそこまで私のためにやってくれたの?」

「結依のことが好きだからだよ」

結依の顔は太陽のように赤く輝いていた。

「私も………好きだよ」

「結依の好きな人って?」

「拓斗くんの事だよ」

「僕と付き合ってください」

僕の心臓の鼓動は秒針よりも早かった。

「ありがとう。こちらこそよろしく」

僕の心臓が張り裂けそうだった。

それぐらい嬉しかった。

はじめての彼女。

「あと、昨日スマホを買いにいったから

ラインを交換しようや」

「スマホ持ってなかったの?」

「うん」

彼女は笑っていた。

「いいよ」

僕と結依はラインを交換した。

「これからはお互いを名前で呼び会おう」

「わかった。よろしく結依。」

「こちらこそ、よろしくね拓斗。」

僕たちは付き合うことが出来た。

もし、未来から来てなかったらこんなことは

なかったのかもしれない。

そう思うと本当に美結に感謝している。

放課後、僕は屋上に上がった。

美結は空をずっと見上げていた。

「付き合えて良かったね」

「ありがとう。タイムスリップさせてくれて」

「これからだよ。勝負は」

「何で?」

「もうすぐ夏休みだろ」

「うん」

「夏と言えば?」

「花火」

「正解」

そう言うと美結はポケットから

ポスターを出した。

「来月の29日に花火大会がある。

その花火大会に誘うんだ」

「分かった」

1学期の終業式が終わり、明日から夏休みが

始まる。

「明日から夏休みだね」

「うん」

花火大会に誘わないといけない。

勇気を出して

「あのー。花火大会に一緒に行きませんか?」

「いつあるの?」

「来月の29日」

「まだ先じゃん笑笑」

「ごめん」

「良いよ。一緒に行こう」

「ありがとう」

僕は心のなかでガッツポーズをした。

初めて、花火大会が楽しみだと思えた。

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