第2話 出会いの雨


ジリリリ

目覚ましが部屋中に鳴り響いた。

僕は目をつむったまま時計に手を伸ばした。

アラームを止めた後、時計を見ると

時計の針は7時を指していた。

僕の学校は8時までに

登校しないと行けなかった。

間に合うかどうか不安だった。

重たいまぶたをこすりながら、

リビングに向かった。

リビングに入ろうとすると、

お母さんとお父さんが何か話していた。

僕はドアを開けると同時に

「おはよう。なに話してるの?」と言った。

お父さんは新聞を読んでいて、

お母さんはテレビを見ていた。

「おはよう」

「おはよう拓斗」

「なあ、拓斗」

「何?」

「昨日の夜、交通事故に遭って死んだ伊藤結依

っていう人なんだが、お前のクラスの

生徒じゃないか?」

突然、お父さんが話しかけてきた。

どう言うことかまだ理解してなかった。

テレビを見るとニュースで

取り上げられていた。

伊東結依。そんなやつがいたかどうかも

わからなかった。

「知らない」

「なら良いや。早く食べろよ」

「はーい」

僕は出された食パンを食べた。

食パンを食べ終わった後、服を着替えて

青いチャリに乗り、学校に向かった。

伊藤結依。どこかで会ったことが

あるが覚えていなかった。

学校に着き、教室の扉を開けると、

南極のような冷気が僕の肌に感じた。

いつもなら賑やかなクラスなのに……。

皆が泣いていて、机に顔を伏せていた。

それもそのはず。同級生が死んだのだから。

僕だけだ。こんなに無関心なのは。

僕はこの空気に耐えきれなくなって

その場から離れた。

彼女がやって来たのは今から3ヶ月前の

5月のゴールデンウィーク明けのことだった。

『私は伊藤結依です。

よろしくお願いします。』

自己紹介のあとは拍手の嵐だった。

それから、彼女はあっという間に

打ち解けていき、

クラスの人気者になっていた。

だからこの悲報はあまりにも突然だった。

思い出もまだ作れていないはずだ。

でも、僕は彼女とは1回も話さなかった。

だから思い出も作る気もない。

僕は階段を登り、屋上に上がった。

屋上は僕が一番好きな所だ。

風も吹いていて落ち着く場所だ。

いつも、嫌なことや悲しくなったりしたら

ここに来ている。

「屋上ってやっぱりいいな」

「誰?」

「私は……美結。よろしく

ところで、結依のこと、どう思ってたの?」

「何とも思ってないよ。

何でそんなこと聞くの?」

「同じクラスの生徒が死んだら

こんなにのんきに屋上に来ないでしょ」

「結依さんとは話したこともないし

まず、興味もない」

「何でそんなに人に関心がないの?」

「生まれつきだから」

僕は小学生からずっと1人だった。

「結依は君の事を好きだったんだよ」

「だから何なの?」

「なのに、君が1人でいるから

話しずらかったんだよ」

美結は血相を変えて近づいてきた。

怒っていた。

「君にもし、もう少し友達がいたら、

結依と一緒に花火大会に行って

結依を助けれたかもしれないのに。

君が結依を殺したんだ」

始めて会ったのにすぐ怒り、殺人犯扱いされた。

「僕は結依さんのことは何も知らないし、

話したこともないのに

何でそんなことを言われないといけないんだよ

君は僕の何を知ってるんだよ」

「私は……未来から来たの。

だから何でも分かるの」

「未来から来た?そんな夢のような話

あるわけがない」

本では何冊かタイムスリップ系は読んだが、

現実には起こらないファンタジーだ。

「君には夢がないなー。

これから君を過去に戻してやる。

君と彼女は結ばれる運命だったんだよ」

「どういうことだよ!!」

「とにかく、君を彼女と出会う日に

戻すから、何かあったら屋上においで。」

「でも、友達とかいないから恋人とか

もっての他作れないし」

「そう言うと思ったよ。君には能力を

1つ分けてあげよう。

その能力をうまく使って彼女と付き合い、

死なないように助けること。

それが君の任務だ」

「何でそれをしないといけないんだよ!」

「それはいつかわかるよ」

その時、白い光が強く輝いた。



ジリリリ

目覚ましの合図で目が覚めた。

何か変な夢を見たような気がした。

リビングに行き、パンを食べて支度をして

外に出た。雨が降っていたのでカッパを来て

学校に向かった。

僕は雨が嫌いだった。いちいちカッパを

着ないといけないし、目が開けられないし。

先月までは桜が咲いていて暖かったのに。

僕の嫌いな梅雨ももうすぐにやってくる。

そんなことを考えていると、いつの間にか

学校に着いた。

僕は学校に着くとまず始めに屋上に行く。

屋上に行くと風を感じることができ、

気持ちいいからだ。

しかし、今日は雨が降っていたので

全然嬉しくなかった。

屋根があるベンチに座って空を見上げた。

雲からどんどん水が落ちてくるのは

とても不思議だな~と思っていた。

「うわあーここが屋上か」

誰か分からない女の声が聞こえた。

振り返ると見たことがない女の人だった。

女の人は僕の横に座った。

「雨って嫌だね」

女の人が声をかけてきた。

「君は誰なの?」

「私は伊藤結依」

僕には友達が少ないから

伊藤結依と言われてもピンと来なかった。

「屋上って本当に良いよね」

「でも、今日は気分が最悪だ」

「そんなに雨が嫌いなの?」

「好きではない」

「雨が降り止まないですね」

突然、彼女は変な言葉を言った。

「だから何なの?」

「この意味が分かったら返事を教えてね」

見知らぬ彼女は屋上から出ていった。

いったい何だったのか。

教室に戻るとざわざわしていた。

僕の友達の彰悟が僕に気づいて

「おーい。おはよう」

とこえをかけてくれた。

「おはよう」と返した。

彰悟の上に43と数字が書かれていた。

この数字は何なのか。

気になったが、それよりこの騒ぎが気になった。

「なんの騒ぎなの?」

「転校生が来るらしいよ」

「そんなんだ」

彰悟はすぐに、サッカー部の雄太

の所に行った。

雄太はクラスのムードメーカー的存在で

サッカー部の部長だ。

彰悟から聞いた話によると、

雄太には彼女がいるらしい。

僕には羨ましかった。

「もし、美女だったら雄太はどうする?」

「今の彼女よりもかわいかったら

今の彼女と別れるわ」

「まじ最悪なやつじゃん」

雄太は笑ってごまかしていた。

僕は雄太のことが嫌いだった。

平気で今の彼女と別れるわとか言うし、

自分が満足すれば彼女のことなんか

どうでも良いと思ってる。

キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴り、先生が教室に入ってきたと

同時に髪の長い女の人が入ってきた。

「今日から新しく転校生が入ります。

自己紹介よろしく」

「私は伊藤結依です。よろしくお願いします」

伊藤結依ってさっき出会ったような…。

拍手が鳴り止まなかった。

「じゃあ拓斗くんの隣で」

「分かりました」

僕の隣に彼女は近づいてきた。

「また出会ったね。よろしく」

彼女が声をかけてきた。

「よろ……しく」

その時、彼女の上に50と数字がまた現れた。


『何かあったら屋上においで』


そうだ。僕は未来からタイムスリップ

してきたのか。

でも、何でタイムスリップしたのか。

とにかく行ってみよう。

僕は全速力で屋上へと向かった。

階段を登り、ドアを開けると

美結はベンチに座って本を読んでいた。

「何しに来たの?」

美結は不思議そうにこっちを見てきた。

「この数字は何なの?」

「あーね。その数字は相手からの評価だよ」

「評価?」

「30以上になると現れる。

50を越えると自分の事を好きだってことだ。」

「じゃあ今、彼女は……」

「そういうことになるね」

僕は好きになったことも好きになられたことも

無かった。だから今回はチャンスだと思った。

「この評価を上げていき、彼女と付き合って

デートに連れていけ」

「どうやったら良いの?」

「君は恋愛経験が薄いなー」

「美結はあるの?」

「ない」

「無いんなら言うなや」

「まずはいろんなことをして彼女の評価を

あげることだ。60を越えたら告るんだ。

きっと成功するよ」

「分かった」

教室に戻ると彼女は不思議そうな顔で

「何してたの?」と聞いてきた。

「トイレに行ってきた」

彼女は笑っていた。「あんなに急いで行くの?」

「我慢してたの」

そう嘘をついて気づかれないようにした。

仮に僕が未来から来たと話しても

信じてくれないと思ったからだ。

チャイムが鳴り、1時間目の国語の授業が

始まった。

先生が黒板に向かって書いているときに

試しにわざと消しゴムを落としてみた。

「落ちたよ。はいどうぞ」

彼女は拾ってくれた。それと同時に評価が

1上がって41になった。

これを続ければ上がるんじゃないか。

そう思い、5分おきぐらいに消しゴムや

シャーペンを落としてみた。

全部拾ってくれたが、評価は41のまま変わらなかった。

5回目になると彼女は怒って

「私に拾って欲しいだけじゃないの!」

と言われて評価は2下がって39になった。

そう簡単には行かなそうだった。

それから何を話せば良いか分からなかった。

その度に評価は下がっていき35になっていた。

何とかしないといけない。

窓の外は相変わらず雨が降っていた。

やっぱり僕は雨が嫌いだ。

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