木枯らし

増田朋美

木枯らし

木枯らし

12月も中旬に入り、朝と晩は寒くなるようになってきた。日が暮れるのも非常に早くて、四時半で真っ暗になってしまうというのだから、一日が非常に短く感じられるような気がする。それでは、年末に向かって、また忙しくなるような気がするけれど、今年は自粛の年でもあったから、あまりものを買うとか、ぜいたくをするとか、そういうことはしない人のほうが多かった。

その日、杉ちゃんとジョチさんは、久しぶりに製鉄所に行った。ちょうど、ジョチさんがスポンサーの一つとして提携している医療施設の落成式で、しばらく遠出しなければならなかったので、数日間、製鉄所に来訪することができなかったのである。

「こんにちは。」

二人がインターフォンのない玄関から製鉄所の建物内に入ると、あ、やっと来たという表情をして、若い女性の利用者が急いで駆けつけてきた。

「どうしたんですか?何かありましたか?」

と、ジョチさんが聞くと、

「ええ、あの梅木千代さんの事なんですが。」

と、利用者は、申し訳なさそうに言った。

「昨日、理事長さんが、出かけている間に、又洗剤を飲もうとしたんです。また死にたいと言いながら。私たちは、やめてと言って、その日はやめさせましたけど。」

「はあ、又やらかしましたか。」

と、ジョチさんは言った。

「それでは、困りますね。」

「はい、ごめんなさい。あたしたち、絶対そういうことはさせないって、言いましたのに。」

利用者はそういうことをいうが、ジョチさんは、謝る必要はないですよといった。

「こういう時は、誰が犯人とか、そういうことを決めつけてはいけません。それは、誰のせいでもありませんから。其れを追求するよりも彼女をどうするかを考えましょう。」

「そうですね。理事長さん。私、明日は学校に行かなくちゃいけないので、梅木さんのそばにはいられませんよ。だれかに代理で来てもらうとか、そういうことをしなければ。」

ジョチさんがそういうと、彼女は急いで言った。

「わかりました。彼女が自殺を図った日の、彼女の態度について教えてください。その前後に何があったのか。」

「ええ、いつも通りに、あたしたちは食事をしていました。梅木さんは、一生懸命、誰かに頼まれたのでしょうか、パソコンで何か打っていました。其れを、メールで提出した、ここまでははっきりしています。」

と、彼女はそう話し始めた。梅木さんは確か、クラウドソーシングサイトで、文章を書くことを生業としている。と言っても、彼女はまだ始めたばかりなので、数百円程度しか書くことができないのであるが。でも、社会とかかわる練習として、そういう事をさせておくようにしている。

「それで、梅木さんは、メールでその文書を提出したらしいのですが、なんだか納期よりかなり遅れてしまったらしく、先方からお咎めを受けたようです。其れで、私はやっぱり駄目だって大きな声で騒ぎだして。まあ、包丁なんかは、あらかじめ隠しておきましたから、それは大丈夫だったんですが、今度は洗剤を飲んで死ぬと言いだしたもので、私たちも止めるのに苦労しました。私たちは、彼女に、理事長さんが戻ってきてくれたら、必ず何かしてくれるから、それまで待っていようと言って、なだめましたけど。其れしかできませんでした。ごめんなさい。」

と、彼女は申し訳なさそうに頭を下げた。

「いいえ、あなた方は自分ができることをやったのですから、其れで十分です。かえって、できないところまで手を出すと、あなたまで破滅することになってしまいます。しかし、どうしてなんでしょうね。梅木さんは、そんなに自殺を図るんでしょうか。もうここにきて、勘定するのも忘れてしまうほど、彼女は死にたいと口にしていますね。」

ジョチさんは、腕組みをしてそう考え込んだ。

「何か、生きているのがどうしてもいやだと思わせるような出来事があったんじゃないの?」

と、杉ちゃんが言う。

「ええ、そうなんですよね。梅木さんに私、話を聞きました。其れなのに、彼女、多すぎてわからないとか、そういう答えばかり出してくるんです。とにかく自分はいらない存在だって、其ればっかり言うんです。私、どうしたらいいのか。」

「はあ、なるほどね、つまり彼女をその気にさせるものは、一つだけではないってことだな。彼女をそこまで追い詰めたものがわかれば、僕らもその対策できるんだけどな。」

利用者の話に杉ちゃんはそう付け加えた。

「わかりました。とりあえず僕たち素人では、かえって彼女を悪化させてしまう可能性もあります。それではいけませんから、誰か、援助者を呼びましょう。幸い、この製鉄所には、いろいろな援助者の方が今まで出入りしていますから、彼らの中から、ひとりを呼び出すことはできると思います。」

ジョチさんはそういいながら、スマートフォンをとって、何か打ち始めた。多分、一斉送信のメールだろう。最近は、大人数の人たちにも、そうやってメールで連絡が取れるようになっているから、便利な世の中になっているものである。しばらくメールを操作していたジョチさんは、顔をあげて、

「天童先生が、来て下さるようです。」

と、一言言った。

数分後、天童あさ子先生が、約束通り製鉄所にやってきた。とりあえずジョチさんは、暴れないように

南京錠をかけてある部屋に天童先生を連れていく。天童先生は、部屋の中で泣いている女性、梅木千代に話しかけて、彼女がどんな問題を抱えていたのか探ってくれた。其れをしているときは、ほかの利用者も声をかけなかった。みんな、彼女をそっとしておいてあげた方が良いと思っていたのだろう。時折、水穂さんが、四畳半でせき込んでいる声も聞こえてきた。

「なんとなくですが、彼女と話してみて、問題点を探すことができました。」

天童先生は、部屋の外で待っていたジョチさんと、利用者に言った。

「どんなことが、お分かりになりましたか?」

と、ジョチさんが、みんなを代表して聞くと、

「ええ、千代さんは、潜在意識に問題があるのではないかと思うのです。」

「潜在意識?それ、なんですか?」

一寸そういう分野に興味がある利用者が、天童先生に聞いた。

「はい。人間が、自分の意志でコントロールしているのは、ほんのわずかです。それ以外、いえ、ほとんどの認識や決定は、人間の意志ではコントロールできない潜在意識というもので行っています。其れが、ちゃんと正常に働けば、社会とうまく溶け合っていくこともできるんですが、其れがうまく行われないと、人間は常軌を逸した行動をとってしまうことが在るんですよ。あ、これが善なのか悪なのかの判断はしてはいけませんよ。だから、治療は、その潜在意識に働きかけて、それを正常な方向に是正していくこと。これだと思うんですよ。」

「そうですか。それは、どうすれば、是正することができるんでしょうか?」

と、ジョチさんが聞くと、天童先生は、

「ええ、潜在意識に外部の人間が働きかけることは非常に難しいのですが、やり方はないわけじゃありません。思いっきり、患者さんの体をリラックスさせて、潜在意識を露呈させてもいいようにすることです。これを行うのが、ヒプノセラピーというものです。」

と答えた。ジョチさんが、ヒプノセラピーとは何かと聞くと、

「ええ、日本語に訳すと催眠療法という意味で、一寸怪しいと思われてしまうこともあるけれど、潜在意識を修正していくには一番いい方法だと思うんです。多分、千代さんは、潜在意識が傷ついています。それで、死にたいという行動を起こしてしまうのでしょう。ただ、すぐに潜在意識を現わしてくれるような、人間の心は単純にはできておりません。時には、恐怖を感じる事もあるんです。だから、まず初めは、霊気を用いて、千代さんに思いっきりリラックスしてもらうことになれてもらい、そして、彼女の潜在意識を修正していきましょう。」

天童先生はそう説明した。

「その、潜在意識というのは、どうして悪い方へ曲がってしまうのですか?」

質問するのが好きな利用者がそういうことを聞いた。

「ええ、例えば、住んでいた環境が良くないとか、学校で問題のある指導をしたとか、そういうことかしらね。例えば、世間から離れて隔離して、間違ったことを吹き込むという指導を行った場合、世の中が本当にその指導者の言っているように見えてしまうことが在るのよ。私のところに、御願いにくる人たちは、大体これの被害者である場合が多いわね。潜在意識が、間違った方向へ向いてしまった証拠よ。」

「つまり、よくある隔離型の新興宗教と似たようなものですかね。洗脳されてしまうから、そういうところには行ってはいけないってよく言うじゃないですか。」

先ほどの利用者はそういうことをいって、自分で納得したようだ。

「そうですね。まあ、新興宗教がわかりやすい例ですが、学校なんて、問題を作り出す典型的なものですよ。ほら、どこの学校に行っているかで、社会的身分が固定されるのと似たようなものになってしまう。」

と、ジョチさんが言った。確かにその通り、身分制度とかそういうものは、潜在意識によって作られるということもあるかもしれない。それのせいで、考えや行動がおかしくなってしまうこともあるだろう。教育者というのは、そういう風に、潜在意識をおかしくさせる事もあると、もうちょっと、教育者にはわかってもらいたいものである。

「まあそこらへんは置いておいて、とにかく、彼女に二度と自殺未遂をさせないように、彼女を治療してやってください。治療という言葉が当てはまるかどうかわかりませんが、彼女に、人生は良かったと思ってもらうように。」

とジョチさんは、天童先生にお願いした。天童先生は、わかりました、引き受けましょうと言って、にこりとして頷いてくれた。

その日から、梅木千代の治療が開始された。まず初めに、天童先生は、千代に霊気を施して、千代にリラックスしてもらうことを体験してもらうことにする。千代は、なかなか緊張の強い女性で、リラックスしている所までもっていくのが、非常に難しい所だった。逆に、霊気を施して、体がのぼせるなど、体調を崩すこともあった。天童先生は、そうなった彼女に、潜在意識が体に働きかけるようになったのだ、と言っていた。しばらく千代は、布団に寝たままの生活が続くようになった。それでも、ジョチさんや利用者は千代の治療を天童先生に続けさせた。

それを何回か施して、数日たったころ。

「水穂さん、食べる気がしないなんて言わないでくださいよ。又ハンガーストライキを始めるつもりですか?」

と、利用者が水穂さんに呼びかけるが、水穂さんはご飯をたべようとしなくなった。

「水穂さん、何か言いたいことが在るんだったら、直接理事長さんに言ったらどうです?ご飯と言いたいことを言うのは、別格ですよ。言いたいことが在るからと言って、ご飯をたべないというのはおかしいですよ。」

別の、一寸勝気な利用者が水穂さんに言った。ちょうどその時、ジョチさんが、一体何があったんですかと言いながら四畳半にやってきたので、勝気な利用者は思い切って、

「理事長さん、水穂さんがまたご飯をたべなくなりました。又食べる気がしないと言っています。」

と言ってしまった。同時に水穂さんが、またせき込んでしまう。ああ全く、と利用者たちは水穂さんの口元にタオルをあてがってやるが、水穂さんは自分でタオルを受け取り、口元を拭いた。

「一体何ですか。水穂さん、何か反抗したいことでもあるんですか?」

と、ジョチさんが聞くと、

「いえ、あの、梅木さんという女性の事で。」

と、水穂さんは答えた。

「あきれた。千代ちゃんの事で、ご飯をたべる気がしなくなったの?千代ちゃんは、一生懸命、天童先生にセラピーしてもらってるわよ。水穂さんみたいにね、ご飯をたべる気がしないなんてことは、一切言いませんよ!」

と勝気な利用者が、そういうことを言うが、ジョチさんは、ちょっと待って、と彼女に発言をやめさせた。彼女は、単なる勝気すぎるというだけではない。落ち着きがなかったり、思ったことをなんでも口にしてしまうという障害があるようなのだ。

「水穂さん、梅木さんの事で何かあるんですか?」

とジョチさんが聞くと、

「ええ、彼女の意識を変えてしまうというは、彼女にとっても大きな負担になると思うんです。其れはかわいそうだと僕は思うんですよ。意識を変えるって、非常に難しいことですもの。其れを、無理やりさせるというのは、彼女はものすごくつらいというかそんな気がしてならないんです。」

と、水穂さんは弱弱しく答えた。

「まあ、一時的にはそうなることもあるでしょう。でも、梅木さんは変わってもらわないと、この世の中に順応することができなくなります。だから、梅木さんの意識を変えてもらうために、天童先生にお願いしたんじゃないですか。」

と、ジョチさんが答えると、

「そうですが、すでに梅木さんは、自殺をほのめかすほど、この世で苦しんでいらしたんです。だから、それを無理やり別の方向へ修正していくのは、かえってかわいそうな気もするんですが。」

と、水穂さんは、静かに言った。なんだか、水穂さんの境遇を象徴するような言葉だった。水穂さんは、変わるということがいかに難しいということを知っている。

「そうなのかもしれないですけど、梅木さんは、一生懸命、治療を受けてくれています。だから、僕たちにすることは、うんと喜んであげること、思いっきり応援してあげること、この二つなんじゃないでしょうか。すくなくとも、梅木さんが、治療を受けてくれれば、もうちょっと世渡りだって、楽になるんじゃないですか。そのどこがかわいそうだというんです?」

ジョチさんがそういうと、水穂さんは、小さい声でこういうのであった。

「でも、知らなかった過去を思い出したりしなければならないこともありますよね。それって逆に苦しいこともあるのではないでしょうか。」

「水穂さん、あたしたちだって、多かれ少なかれ、苦しい気持ちはあったわよ。千代ちゃんだってそれはわかっていると思うから。それに千代ちゃんが何かしたら、あたしたちは、ちゃんと千代ちゃんのそばにいるから大丈夫。」

と、利用者の一人がそういうと、水穂さんはそうですか、とだけ言った。利用者たちは、あたしたちは、千代ちゃんを思いっきり応援してあげよう、ね、水穂さん、といったが、返事の代わりにかえってくるのは咳であった。

その次の日。今日も、天童先生が、千代の所にやってくる。千代は、布団の上に横になって、天童先生のセラピーを受けていた。もうだいぶ、霊気で体をリラックスさせることができたから、いよいよヒプノセラピーが開始されたのだ。と言っても、テレビでよくある催眠ショーのようなものではない。ただ、天童先生は、まず千代を思いっきりリラックスさせて、過去に在ったことを思い出させ、画像化させることを試みていた。

「今日は、千代さんの過去のせかいにさかのぼってみましょう。今、ここにあなたの敵のような人物は誰もいないわ。じゃあまず、学校の風景で何か思い浮かんだか、話してみて。」

天童先生が優しく誘導すると、千代は様々な風景を思い出してくれたようだ。人間って、どうしてこういう事まで覚えているのだろうかと思うほど、様々なことを記憶している。中には間違った思い込みというのもある。其れも、催眠で誘導させることによって、画像化させる。

「今回は、どこへ行くことができたかな?あなたは今どこにいるのかな?」

天童先生がそういうと、彼女はわからないと答えた。

「それでは、今いるところはどこなのか、一寸説明してくれるかな?」

天童先生が聞くと、机といすがあり、黒板があり、先生がいて、生徒がいる、という場所だと言った。

「そうなのね。それは小学校かな?中学校?それとも高校、大学?」

彼女の最終学歴は高校である。

「いや、それがわからないのです。名前がどうしても思い出せないんです、、、。」

千代が苦しそうな顔をしたので、天童先生はセラピーを中断した。

「思い出したくないことが在ったのね。」

と優しく言うけれど、千代は、口にしたくないような顔をする。其れが映像化されて彼女はさらに無気力になり、一日中布団で寝てばかりの生活になった。もう疲れてしまっていて、風呂にも入らない。利用者たちは、何とかして彼女を風呂に入れようと試みたが、千代は、まったく反応しなくなってしまった。

このことは、製鉄所に興味本位でやってきた杉ちゃんも知ることになった。ジョチさんから話を聞いた杉ちゃんは、じゃあ、彼女が通ってきた学校なるものに聞き込みをしてみたらどうか、と言った。そこでジョチさんは、親御さんに電話して、彼女が通っていた小学校から高校まで、何か問題があったかと聞いてみた。お母さんは、中学校から私立学校に通わせたが、そこの先生もみんな親切で特に問題もなく卒業したと言った。では、小学校ではどうだったかと聞くと、小学校は公立の小学校に通っていたという。そこでいじめにでも会わなかったかと聞くと、いじめがあったわけではないが、低学年の時に、学校になじめなくて、数週間別の学校に通ったが、すぐに問題なく帰ってきたとお母さんは言った。その別の場所とはどこかと聞くと、田尻プレスクールと答えた。

「そうか、そういうことなら、その田尻というひとに会ってみないか。その人なら、彼女の事を何か知っているかもしれないよ。」

という杉ちゃんの提案で、ジョチさんはインターネットで、その支援学校の場所を調べてみた。検索してみると、閉業と書かれている。何でもそのプレスクールでは、学校に行けなくなった人を、もう一度学校へ戻すための事業をしていたらしいが、他の生徒に指導の行き過ぎで提訴されて敗北し、廃業せざるをえなかったという記事が載せられていた。創立者の田尻という人も、行方をくらましているらしい。

「なるほどねえ。其れでは、責任逃れというやつか。でも、千代ちゃんは、間違いなくそれで傷ついているはずだ。そういうところって、閉鎖的なことが多いからな。ある意味恐怖を与えられる場所でもあるわな。」

と、杉ちゃんがデカい声でそういうことを言う。

「確かにそうかもしれませんね。元々、順応できなかった人を扱うところだと、その権力も大きくなりますからね。中には、そういうところで働いて、変な風に奢ってしまう人もいるのかもしれない。」

と、ジョチさんは、スマートフォンを眺めながら言った。確かに、その可能性は高いな、と杉ちゃんも言った。そこで無理やり押し付けられたことのせいで彼女は苦しんでいるのかもしれない。

「そうなると、また別のハードルが出現したことになりますね。この事実が天童先生のセラピーで露呈した場合、僕たちはまた別のやり方で彼女を、支援しなければならないと思います。又そうなると、彼女は、さらに混乱するかもしれません。でも、彼女は変わらなければなりません。」

「そうそう。事実はあるだけの事だ。其れについてどうするのか考えることが、僕たちの務めだぜ。」

と、杉ちゃんとジョチさんは、顔を見合わせた。

「ええ、そうしなければなりませんね、なによりも彼女が、もう少し楽に生きてもらうためにね。」

そういうジョチさんに、利用者たちが心配そうな顔をしている。南京錠がかかった、梅木千代の居室から、すすり泣く声が聞こえてくるからだ。天童先生は、大丈夫よ、決してあなたを一人にはしないから、と優しく呼びかけてやっているが、梅木千代は泣きながらこういう事を言うのだった。

「あの施設で、私は、先生に言われました。あなたは、誰にも愛されない。あなたのような人を必要としている人なんてどこにもいない。だから、自分の力で自立して、其れでやっていかなくちゃダメって。」

それが彼女の間違った思い込みなのだろう。これを口にして、成文化することは成功したが、かの次女はこれから先どうしていくのか。其れがまた、大きな問題としてやってくるのだ。事実を、事実として、そうだったんだと受け止めることは、果たしてできるのだろうか。

製鉄所の中庭にあった松の木が風で揺れた。もう木枯らしが吹く季節なのだった。そんな厳しい季節が、本格的にやってきたのだ。





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木枯らし 増田朋美 @masubuchi4996

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