第1話

「アレクリディア・ヴィル・シャーロット・ロバエルン・ハイト・レイ・ヴィスコンティ。貴官を少佐、すなわち佐官に任命し、王宮騎士団団長の任を与える。」


「御意に」


誰が想像しただろうか。齢12の少女、公爵家の令嬢が佐官に任命されると。


「な、何だその王命は⁉︎いくらヴィスコンティ公爵家の人間でも幼児が佐官、それも王宮騎士団団長の任も同時に与えるなどどうかしている!」

否、想像したくもないだろう。

自らが長年かけて築いて来た経験、信頼を蔑ろにされたような者だ。特に私と同じような職についている者達は。


「…ゼートゥア子爵。誰に向かってそのような口を聞いておるのだ。」


「っ…失言でした、お許しください陛下。」

納得、など到底できていない様子だが。こちらとて歴史ある公爵家の人間だ。強くは出られないのだろう。


「よい、よい。」

皇帝は悪い人ではない。だが、女が爵位を継ぐなど到底できぬと考えている人だ。

ただ、爵位を継ごうと思っている私を軽蔑したりする訳ではない。実力のあるものには誰であろうと一目置く。つまり、実力や人間性などしっかりしたことで判断をくれる。皇帝に相応しい人、ということだ。


「皆、下がると良い。」


帰り道、馬車に揺られながらこんな事を考える。私がこれまでに努力してきた事は自分で言うのも何だが計り知れない。特に演技力には磨きがかかった。

宣言から3年弱。人を欺く術、人を切る術、

人に取り入る術、人を陥れる術など、様々な事を学び、実践してきた。

やはり実践してみなければ何も始まらない。

その点、陛下やお父さまには感謝しているの。最初は過保護に反対していたお父さまも今では応援してくれている。


「…幸せ、なんだろうな。」


「何がだ?リア。」


「ふっわいっ⁉︎…あ、何でもないです。」

…お父さまと一緒に乗ってたんだわ。すっかり忘れていたわ。


「そうか…まぁ何はともあれお疲れ様、リア。」

こんなに綺麗に笑う人だったんだ。…我が父ながら綺麗だ。うん。


「…!…ありがとうございます、お父さま。」

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