第3章
第1話 空腹な気持ち
もう四日も降っている
鬱陶しい湿気と雨が帝都を包んでいる
それは探偵事務所も例外ではなく、息苦しい湿気が事務所内にいる二人を襲った
二人は成すべく無くソファーに倒れ込み気力を失い静寂に包まれていた
「助手よ…生きてるか…」
ソファーに顔を埋めながら助手に尋ねた
「………」
「助手よ…返事をしろ…」
「………」
返事がない
「逝ったか…」
「生きてます…」
弱々しく答えた
「勝手に殺さないで下さい…」
探偵と助手はピクリとも動かない
部屋はまた静寂に包まれた
しばらくしてから探偵は静寂を破った
「腹…減った…」
その言葉に助手も釣られて答えた
「私もです」
「何かないのか」
「何もないです」
「何かあるだろ、菓子とか缶詰とか」
「本当に何もないです。先生があんなのを買うから」
助手は事務所の入り口を指差した
そこには真新しい自転車が置かれていた
「私の給料使いやがって…このクズ」
「仕方ないだろ…お前だって…」
探偵はテーブルを指差した
チラシの山が五つ積まれていた
「何なんだよこれ…」
「印刷所に頼んで事務所の宣伝用に作りました。ここ最近、依頼来ないじゃないですか。このままでは飢え死にします」
「だからって作り過ぎだ、貴様こそ俺を飢え死にさせる気か。こんなん作る金があったら俺に渡せよ」
「この前、それで全部博打ですったじゃないですか。覚えてないとは言わせないですよ」
「うるせえ、あの馬さえ転けなきゃ大金が手に入ったんだ」
探偵と助手は沈黙した。
今まで雨音だけが聞こえるだけであったが腹の音が二人を苦しめた。
駄目だ、このままでは
探偵は遂に重い腰を上げた
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