第2話 席替え
俺は天音俊。
普通の高校2年生だ。
突然だが、今日は席替えの日。
俺のクラス、2年C組では、席替えはくじで
決める。
つまり、ドキドキで、ワクワクなのだ。
そして、ドキドキでワクワクな理由がもうひとつある。
その理由はあるひとりの女の子。
佐藤陽葵だ。
黒髪で、とても美しく、サラサラそうな髪なのだが...
その髪は腰あたりまできている。
何がいけないかって?
そんなの分かるでしょ。
校則だよ、校則。
そう。佐藤陽葵は校則をぶち破っているのだ。
だが、あまりの美しさに周りの人も何も言えないのだ。
もちろん、俺も言えない。
だって可愛んだもん。
仕方ないじゃん。
そんな陽葵がいるおかげで、うちのクラスは席替えではありえないほどの熱狂が巻き起こっている。
まあ、それも仕方がないのだろう。
だって可愛んだもん。
そして、盛り上がっているのは周りだけではない。
もちろん俺もだ。
ちなみに1年生も同じクラスだったが、隣の席にはなった事がない。
悲しいね。
うん...
まあいいさ。
今日こそは、今度こそは、佐藤陽葵の隣の席になってやる!!
パンパン!
先生が手を叩いた。
「みんな静かに〜!」
(来るぞ...とうとう...待ちに待ったあの席替えが!)
「よし、席替えするから、須藤からくじ取りに来てね〜」
(とうとう始まった...そして、須藤からということは、俺は最後の方だな。)
クラスメイトがくじをどんどん引いていく。
「佐藤さんと隣になれますように!」
「今回こそは俺が佐藤さんのとなりだぁぁぁぁ!!」
これで分かっただろう?
佐藤陽葵は恐ろしいほどモテるのだ。
「おぉ!とうとう佐藤さんが引くぞぉ!!」
(おっ!もう陽葵の番か...いったいどこなんだい?)
スっ
陽葵がくじを引いた。
「12番です。」
陽葵は透き通るような声で先生に自分の席の番号を告げた。
「おぉぉぉぉぉぉ!!
俺らにもまだ希望があるぜ!!」
まだ引いてない奴らが叫ぶ。
あっ。
ちなみにもう引いたやつは死んだ目してるよ。
そっとしておいてあげてね。
さてと、次は俺の番だな。
「天音〜。次お前だぞ〜」
「は〜い」
間抜けな返事を返して、くじに向かう。
(大丈夫。大丈夫だ俺。ここで引けば、あの佐藤陽葵と隣になれるんだ。まぁくじだから頑張るも何もないんだけどね笑)
「ふぅ〜」
深呼吸をする。それから俺はくじの箱に手を入れる。
そして、くじを引く。
その時。俺は陽葵が視界に入った。
俺はある違和感を感じていた。
(なんで陽葵は手を合わせているんだ?
何を願っている?)
そんな事を考えながら、俺はくじの番号を見た。
12番。
12番...12番?
12番!?
「じゅ、12番です!」
「はいは〜い」
や、やった!
あの佐藤陽葵と隣の席だ!
その時、俺は佐藤陽葵を見た。
すると、陽葵は、ホッとしたような、
照れたような、そんな顔でこちらを見ていた。
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