第101話 気配の先は

お久しぶりです。

長らく更新をお休みしてしまいましたが、不定期ながら少しずつ更新していきたいと思います。

気が向けば活動休止中に練習がてら書いていた趣味作品もあるだけ投稿しようかと思っているので、もし投稿したときにはぜひ読んでみてください。


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 ブジーン大統領と別れた僕たちは、すぐさまリーゼルンの首都、ソールへと移動。


 リルノード公と一度別れ、ウェルカへと戻った。


 カイゼル殿下へと取り次ぎを行ってもらい、事のあらましを説明。


 エンペラート陛下にはカイゼル殿下から伝えてもらえるそうで、僕たちはグラーヴァさんの元へ向かう。


 ザオルクスで起きた騒動と、イスラさんについて伝えておくためだ。


「……なに? ズクミーゴが現れた……? それも、イスラを圧倒するほどの力を持っていただと……?!」


 全てを聞き終えたグラーヴァさんは、とても驚いた顔をしている。


 やっぱり、それほどまでにズクミーゴさんが強くなっていたということだろう。


「ズクミーゴさんは、とんでもないことを計画しているかもしれません……」


 あくまで予想だと前置きした上で、僕は自分の考えを伝えた。


「……十分にありえるな。こうしちゃおれん、ワシは陛下やベルモンズたちと対策会議をしてくる。できればお前たちにも残っていてほしいが……難しそうだな」


「……すみません」


「そうシケた面すんじゃねぇよ。まだいつ事が起こるかもわからねぇんだ、時間はあるだろ。ただし、予想が当たっちまったときは、強制招集がかかるだろう。急げよ」


 真剣な顔をしたグラーヴァさんは、そう言い残して部屋を出ていった。


「シズクくん……。ティアたちは、大丈夫だよね……? 今頃、ひどいことされたり……」


「心配せずとも大丈夫だ。あの二人は強いからな。もしかしたら、自らの力で脱出してくるかもしれんぞ?」


 フフッと笑いながら、ラナの肩に手を置いて頷くセツカ。


「そうなったときのためにも、早く居場所を見つけないとね。問題は、ネーブのどこにいるかなんだけど……」


「ネーブ? 確かに向かったのはそっちの方角だけど、あたしたちを混乱させるための罠かもしれないよ……?」


「うむ……。我もそう思います。もし仮に龍ほど高位の生物を操れる何かがあるとすれば、我にも察知できぬ可能性がありますので、そうなれば一直線に自分の元へと向かわせるか疑問が……」


「うん、僕もそうだと思う。シオンはおそらく、追っ手をまきつつ遠回りで中継地点に来るよう命令されてて、そこで合流してから本当の目的地へと向かう手筈になっていたんじゃないかな」


「なら……」


「でも、思い出してみてほしいんだ。シオンは最後、僕のほうをちらっと見ていたんだよ」


「確かに、一度振り返っておりました。ですが、その後すぐに行方をくらませております」


「うん……。あの視線は、シオンからの最後のメッセージだったんじゃないかなって思うんだ。こっちの方角を探してほしい、っていう」


 なんの根拠もない僕の推理に、押し黙る二人。


「確かに甘い考えなのかもしれないし、まったくの見当違いの推理なのかもしれない。でも……なんの手掛かりもない今、僕はシオンのあの眼を、シオンを信じたいんだ」


「シズクくん……」 「主殿……」


 僕の言葉に何度か頷いた二人は、優しく笑いかけてくれた。


「うん、そうだよね。シオンさんは物腰は柔らかいけど、結構頑固なところあるもん。そう簡単に操られたりしないよ!!」


「うむ、そうかもしれないな。やつとて龍だ、抵抗せずに洗脳に屈するとも思えん。多少の意識があったところで、なんら不思議ではない」


「二人とも……。ありがとう」


 今後の方針――ネーブ王国を探すことに決めた僕たちは、一度リーゼルンに戻りリルノード公に方針を伝えてから、ラインツ領都から少し離れた場所へとゲートで転移。


 徒歩で移動して領都へと足を踏み入れると、領主が代替わりしたとはいえ以前とさほど変わらない街並みが目に映る。

 

 懐かしいような、それでいてどこか心が締め付けられるような。

 

 複雑な感情を抱いていると、そっとラナが僕の手を握ってくれた。


「大丈夫だよ、シズクくん。あたしとセツカさんが傍にいるよ!」


「主殿に仇なすものが居れば、我が即座に排除してくれましょう!」


 優しく微笑みながら力強い声をかけてくれる二人に、自然と笑みがこぼれる。


「ありがとう、二人とも。僕には成すべきことがあるからね、こんなところで立ち止まる気はないよ」


 僕の言葉に頷いてくれた二人に改めて感謝しながら、早速と調査を開始。


 僕とラナは顔が割れていることもあり、一応騒ぎにならないよう認識阻害の魔法をかけてから聞き込みに。セツカには魔力の痕跡などを調べてもらう。


 ほどなくして集まった情報をまとめると、少なくともクラ―ボツらしき人物がラインツ領に出入りしてることがわかった。


 ティアやネイアと似た魔力とティアそっくりの魔力の痕跡に加え、領民の人たちが何度も貴族が乗るような豪華な馬車が領主邸の方へと向かっていくのを目撃したと教えてくれたからね。


 おそらく似た魔力の持ち主がクラ―ボツで、ティアそっくりな魔力は婚約者のティアの妹のものだろう。


「それと、主殿のお耳に入れておきたい情報が1つ。罠の可能性も高いですが、一瞬だけシオンの魔力けはいを感じました。極微量ではありましたが、やつのもので間違いありません」


「教えてくれてありがとう。場所はわかる?」


「あちらの方角で、距離はそこまで離れていません」


 そう言ってセツカが指さしたのは、ネーブ王国の王城がある方角だった。


「シズクくん、あっちってまさか……」


「うん、どうやらラインツ家だけでなくロド国王も一枚かんでるみたいだね。このまま乗り込むとウェルカに迷惑がかかってしまうから、一度報告に戻ろう」


 こくりと頷く二人と共に歩き出し、宿屋の一室を借りるとゲートを展開。

 ウェルカ城に戻りすぐにエンペラート陛下に謁見を申し込むと、すんなりと許可を出してくれた。


「火急の要件と聞いておるが、何か進展があったかの?」


 真面目な顔で訪ねてくるエンペラート陛下と、静かに耳を傾けるベルモンズさんとグラーヴァさん、レスティエ様とカイゼル殿下。


「まだ何の証拠も得られていないのですが、ティアとネイアはネーブ王国……それも王城に囚われている可能性が出てきました」


 僕の言葉に、力なくこめかみを抑えるエンペラート陛下。

 ベルモンズさんたちは最悪の予想が当たったと言わんばかりに表情を曇らせている。


「……今までの状況を考えれば、十分ありえそうだの。しかし、疑問も残る。シズクくんのようにゲートを使える者など他に居るとも思えんのじゃが、それにしては帰国が早すぎやせんか?」


「どことどこが接点をもっていたのか、というのはわかりませんが。僕たちはズクミーゴさんがテレポートするところを目撃していますので、おそらく彼も協力者に名を連ねているんじゃないかと」


「なるほどのう。あいわかった、こちらのことは気にせずに思うがまま動くと良い。今シズクくんが何より優先すべきなのは、ティア嬢とネイア嬢、シオン殿の救出であるからな。厄介なしがらみは全てこちらで引き受けよう」


 真剣な表情で力強く頷いてくれたエンペラート陛下に深く頭を下げたあとすぐに退室を願い出た僕たちは、ネーブ王国の王都であるザイケノンへと転移したのだった―――。



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