第三十二話 白光
現在地から最も近い
「どの白帝廟だ」
「わからない」
「
それはわかっている。
ただ、それ以前に。
「
晶矢が吹っ掛けた予想に
詳細を尋ねると晶矢は上座に向き直り、大仙へ挑戦的な言葉を放る。
「大仙殿、第三の事件は予見されているのでしょう? どこで起きるのか、少しぐらいは聞かせていただけないでしょうか」
「
それも、君たち
淡々と告げる大仙に
「大仙殿、あなたは知らないのかもしれませんが俺たち九品は物心がついたら最初にこう教わるのです。『どんな場合でも身内を助けるのは一番最後だ』と。そうですね、
「僕も
それに、九品の屋敷で暮らすものは皆心構えが違う。被害が出たとしても決して大きくはならないだろう。
棕若の締め括りに文輝と晶矢は顔を見合わせて同意した。
九品に自らを最優先で守るような軟弱さは必要ではない。その矜持を三人三様にけれど本質は皆同じに告げると大仙が今日、一番困った顔をした。
「
「大仙殿?」
「いや、何でもない。とにかく、第三の事件は城下だと予想される。捕えた十五の
「何の為に私たちの屋敷を襲うのですか」
「それはまだ調べが終わっていない。
小戴、本当にどの白帝廟か心当たりはないのか。
重ねて問われて文輝はまた思考した。華軍との世間話に何か手掛かりはないか。白帝廟に対する彼の思い入れが別格であることの他に何か解決の糸口を探す。武官である以上、赤という色には拘りがある、と言っていたのがぼんやりと思い出された。それに連なって赤く染まる空が好きだと言ったのも記憶に蘇る。どこかの白帝廟から見ると国色である白と夕暮れの赤が隣り合った配色になるのだと感慨深く言っていた。それをうわごとのように呟くと
「
城下は一段低い土地にあって白光は中城の城壁に遮られて見えない、と大夫が言う。
加えて
「内府の廟も同じ理由で省けるのではないですか?」
大夫の副官が城下と公地に朱墨でばつ印を付けるのを見ながら、晶矢が言う。大仙が即座にそれを否定したが、またすぐ持論を否定しなおした。
「
「では内府も除外しよう」
棕若の声に副官がまたばつ印を付ける。
「
その問いには副官が「五つです」と明確に答える。左官府の東側が二つ。右官府に三つ。白帝廟はその存在理由ゆえに移転が行われないから内府の持っている地図にもその場所が明記されていた。右官府の三つのうち、一つは
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