第二十五話 借り人
「他の五つの
「『
「
「御史台が派兵してくださったので?」
「御史台よりも
「というと?」
「
大夫が
「
「鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするんじゃない。
進慶――という名の
年の頃は二十代半ば。服装は内府のお仕着せで、襟の色からして
近衛部の官吏の中には人数はそれほど多くはないが間諜がいる。間諜は何ものにも姿を変える。雰囲気で惑わされてはならない。本当に大仙が武官上がりなら手のひらは刀剣だこが出来ている筈だ。大夫の
そしてその奇妙な符合が文輝の中に降りてくる。
似ている。似すぎているほどに大仙の手のひらの相が今朝の商人を装った間諜のそれに酷似している。文輝が思うに、あれは刀剣だこの中でも暗器使いの相だ。文輝のように
大仙が今朝会った間諜だ、という直感的な結論をどう裏付ければ証明出来るだろう。刀剣だこだけでは説得力が弱い。香も似ているが、武官が好んで使う香はそれほど多くない。偶然の一言で一刀両断されるだろう。大仙が今朝の
黙礼して胡床に二人が座る。
この二人を呼び出して大夫が何をしたいのか、を先に考えた。
となると今から始まるのは
文輝の運んだ薄紅の中に
右官府は今、爆発事件の後処理で上を下への大騒ぎの筈だ。右尚書から伝が出るのを待っていれば陽が落ちる。
だから。
「大仙殿、
確信も確証もない。それでも、文輝は先手を打った。大夫が口を開いてしまえば右官の審議は確実に大夫の誘導尋問になる。何も知らない伝の文輝だが、右官としての矜持はある。同輩を守るのもまた武官として必要な心構えだと自身に言い聞かせた。
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