No.9 それぞれの未来と約束

 ハナミヤ文化祭は終わったが、僕らにはまだやるべきことがある。それは…、


 「受験勉強、嫌だぁ!!!」


 僕らは高校受験を控えていた。




 「双葉君、まさか勉強が嫌いだったなんて…私も知らなかった…」

 「だからー、今日はみんなで勉強会をしようってなったんだよー」

 僕の家にて、「受験勉強会」とやらを行うことになった僕とコヨミとコノハ…そして、

 「だからって、なんで俺も参加しないといけないんだ!?」

…なんとセージくんも含めたメンバーで勉強をしている。

 「君も三年生なんだから、受験勉強しないとでしょー?」

 「いいじゃない誠二郎君、一緒に勉強しましょ?」

 「…コヨミさんがそこまで言うなら」

 勿論…こんな勉強会の計画を建てたのは、コノハである。

 「三日前に急に『勉強会やろう』って言われた時、慌てたよ…」

 なんとかお父さんから許可は貰っていたけど…本当に急なんだから、最初は正直焦ったし…、

 「双葉君は特に一週間切ってるから、尚更実行しなきゃだね?」

 コヨミがニッコリと笑っているが、僕には恐怖しかない…。


 なんとか勉強会を終えた午後十時、コヨミがお風呂で、コノハ君はトイレに行ってる間…。

 「おい」

 「な、なに…」

 正直、セージと二人きりなんて…怖い。

 「…ちょっと付き合え」


 ガタン!


 近くの公園の自動販売機で緑茶を買った。

 「セージくん、急にどうしたんだ?」

 「…俺も昔、いじめられていた」

 「え…」

 セージくんは麦茶を少し飲んで、話を続けた。

 「…俺の家は政治家なんだが、弱虫だった。それに、俺は家族に愛されたこともないんだ。俺には弟がいてな…弟が家を継ぐことが決まって以来、父さんと母さんは弟を褒めては、俺には…愛されることすら無かった。…本当はさ、お前が呑気な弟にそっくりだったことがずっと腹立っていた、だから…その…」

 すると、セージは涙を流しながら言った。

「…今まで、ごめん」

 「………」

 僕は、セージ君に一つ話す。

 「…セージ君は、愛されてるよ」

 「…え?」

 「セージ君のお父さん…本当は、セージ君のことちゃんと考えてるよ。セージ君のお父さんとは少し前に話をしたんだ、『やんちゃな所もあるが、大事な息子だ』って」

 「父さんが…そんなことを」

 「だから、セージ君は…独りじゃない」

 でも、僕は…、


 「じゃあさ、なんでお前が泣くんだ?」


 あれ?僕…泣いてる?


 「コノハから聞いた…母親を亡くして、父親は出張から帰ってこなく、兄も上京していて、ずっと一人で暮らしていたんだろ?」

 「うん…」

 「父さんが、外国に行くことになったから…明日帰ったら、俺も一人だ」

 「え!?お母さんと弟さんは?」

 「そのままついていくんだと…」

 すると、セージ君から手紙をくれた。


 「双葉君へ

 私達は仕事の事情でアメリカに行くことになりました。ですが、誠二郎だけは日本に残すことにします。誠二郎は貴方方といたほうがずっと良いと考えていたからです。それで、実は…貴方のお父様から提案を頂きまして、誠二郎を貴方のお宅に居候の許可をくれました。ですので、これからしばらく…誠二郎をよろしくお願いします」

 

 最期に、「安堂」と書いてあった。

 「ということでな…お前の家に住むことになったから、これからよろしくな。後、俺のことは『セージ』でいい」

 「う、うん!よろしくね、セージ!」


 「あ、おかえり!」

 お風呂上がりのコヨミと…、

 「コノハ…さん?」

 野生の目をしたコノハが待っていた。

 「何を話していたんだ?誠二郎くーん?」

 「居候の話」

 「は?」

 その後僕がコノハ君に説明して…、デコピンで許してくれました。




 そして数ヶ月後…遂に、卒業式を迎えた。

 「遂にお別れだね…」

 コヨミは悲しそうだ…。

 「コノハはまさかの引っ越しだとは…」

 すると、


 「大丈夫だよー?」

 うわ!後ろからコノハくんが!

 「そこでー…約束しよー?」

 「「約束?」」


 「それは、『三年後、あの公園で必ず四人で再会する』のだー!」


 三年後…僕らはどう進むのか、どう変わるか、まだわからない。でも…、

 「うん!約束!」

 「また四人で会おうね!」

 「…悪くないな」

 僕らは桜の木の下で、再会約束をしたのだ。


 桜が咲く、とある学校で過ごした話…。

 僕は、忘れない。




 ピピピ!ピピピ!




 「なんだ、夢か…」

 あれから僕は、高校三年生になった。

 もうすぐ、会えるんだ…。


 「おーい!早くしないと、学校遅れるぞ!」

 「わかったよ、セージ!」

 そうして僕らは、それぞれの道を歩む。

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空色パレット 白闇エナンカ @ftaba

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