No.8 ハナミヤ文化祭、開幕!
遂に当日…廊下から見ると、校門前には人がいっぱいだ。
「…来たね。」
学校全体のチャイムが鳴り響き、アナウンスと共に校門が開いた。人の群れがどんどん入っていく…。
「僕達も急ごう!」
『了解!』
部員人数は少ないが…僕らなら大丈夫だと信じ、僕と後輩数人はチラシや看板を持って美術室を出た。
賑やかな屋台に通りにくいほど、たくさんの人が訪れている。
『ねぇねぇ、お腹空いたから近くの屋台に行こうよ。』
『そうするかぁ。』
二人の女性が歩もうとした瞬間、
『ねぇ、あの看板見てよ。』
二人が見た先には、ある看板を持った少年がいた。
『ねぇあれって…。』
『すみません。そこどこでやってますか?』
二人は少年に場所を聞いた。
「B棟の四階にある美術室です。良ければ、僕がご案内します。」
『ここかぁ…いたってシンプルだね。』
『でもここまで来たら気になるじゃん。もしかしたら、映えるやつが見つかるかもしれないし…。』
少年は美術室の扉を開けた。
「二名様ご案内、お願いします!」
「ナイス、双葉くーん。」
僕とコノハ、そして他のメイドが集まってこう言った。
「ゲーム&イラスト喫茶、『カリアン』にようこそ!」
あれは数週間前…。
「新ゲームが完成したが…毎年ゲーム大会やっていたら、流石に飽きるなぁ…」
ゲーム部達は頭を悩まされていた。
「こんにちわー。空星ですが…」
「あ、空星先輩!?」
部員が突然驚いてすぐに整列した…。
「これ…前にデザインしたキャラクターだ、もしかして完成したんですか?」
「はい!ですが、今年はどうするか悩んでいるんです…」
ゲーム部員長は頷いて、話を続けた。
「実は、今作のゲーム、『RPGな子供たち』は格闘系ではなく、RPG系のゲームになりますので…それに、毎年毎年…『ゲーム大会だけでつまらない』という批評が…」
毎年大人気の部活動でも、飽きられてしまうんだ…。
でももしかしたら…、協力してくれるかもしれない!
「あ、あの!もしよろしければ…僕らから頼みがあります!」
「…はい?」
そうして僕は、美術部の作戦内容を話し、ゲーム部と美術部の同盟を結成したのである…!
そう、僕らは「ゲーム部」に頼んで、メイドカフェならぬ…「ゲーム喫茶」を開くことにした。ゲーム部はゲーム以外何にもないことで頭を悩ませていたので気があって、合同でゲーム会場とそのゲームに出てくるキャラクター達の喫茶店「カリアン」を実現してみた。
壁にはそのキャラクター達の絵や舞台になる街、奥の壁には美術部専門の賞を取った作品が展示されたエリアもある。
元々僕は、ゲーム部のキャラクターや背景等のイラストを手伝ったりしていたので、ゲーム部達は恩返しにコヨミと他数名で料理の手伝いをしている。みんな意外と料理がうまいのがとてもありがたい。
「お待たせしましたー。『サイヤちゃんのはっぴーおむらいす』と『ギルマの氷結パフェ』でーす。」
その「サイヤちゃん」や「ギルマ」も戦うキャラクターメンバーの一人だ。
『サイヤちゃんかわいい!オムライスに「はっぴー」って書いてる!』
『ギルマっていうひと凄いイケメン!これ本当に中学生が作ったの!?』
料理を口にすると、
『すごいふんわり卵にほっぺた落ちそう!』
『イケる!美味すぎる!』
『そういえば、「料理だけなら、写真OK」って書いてあったからさ、上げちゃお!』
「ゲーム&イラスト喫茶『カリアン』行ってきた。キャラがすごいし、まじで美味しかった!」
『送信!』
ピロン!
少しずつだが…訪れる人数が多くなり、僕らは大忙しである。そんな中、
「大変だー!双葉くーん!」
数時間後…コノハが慌てた表情でこちらに走ってきた。
「どうしたの?そんなに焦って…。」
僕はコノハに質問した。
「大変だよー!今、僕達が出した料理がSNSにアップされてて…それを見たお客さんがたくさん並んでるー!!!」
「…え?」
その後…手の空いている部員達を集め、今起こっていることを話した。
『えー!』
流石に意外な展開のあまりにかなり驚いている。
『机、まだあった気がするけど…。』
『ゲーム会場に影響が出るじゃん…。』
みんなざわざわと戸惑い始めた。
すると、コノハはそこで…、
「それでー…僕から一つ提案があるんだけどー…。」
よく考えて見ると、お客さん達はそれぞれ「ゲーム」、「メニュー」という目的に別れている。それに気づいたコノハは、隣の空き部屋を借りて「ゲーム会場」と「喫茶カリアン」を分け、カリアンのスペースを広げることで、席を増やす提案を出した。
結果…、
『やっぱりねこめがね先輩の予想通り、大半のお客さんが隣に移動し始めた!』
ゲーム体験が目的のお客さんが空き部屋前で一列に並び始めた。
『ゲーム体験の最後尾はこちらです!』
そして、喫茶カリアンもスペースが空いたことにより席が増え、お客さんの待ち時間を少しずつ減らすことに成功した。
『荒木コック長!コミチャンとセイカイミズネギ風グミとルニーとお揃いのみどりマカロンのスライム兄妹セット!オーダー入りました!』
「は、はぁい!」
『荒木先輩!カリアン店長のスペシャルハンバーグセットのオーダーが入りました!』
「はぁい!すみません、ハンバーグの調理お願いします!」
『了解です!コック長!』
ちなみに…料理を担当したのは、コヨミが指揮する「料理担当部員」達である。メニューはコヨミとゲーム部部長が作ったらしい…。
昨日どうやらコヨミ達が夜の八時までずっとメニューの考案、朝早くに調理室を借りてスイーツ等の準備、調理の練習をしていたらしいが…、たった数時間で六種類のメニューが出来るなんて…すごいや。
エピローグ
『これにて、ハナミヤ文化祭は終了させていただきます。皆さん、我々花宮中学校にお越しくださり…誠に、ありがとうございました!』
午後四時…終了のアナウンスが終わると、学校全体が歓声や拍手が鳴り響いた。
「みんなー、お疲れさまー!片付けは部活ごとに別れての行動でいくよー。」
その後、ゲーム部はゲーム会場、僕ら美術部は机等の片付けを終えた。
数時間後…。
「んじゃ、かいさーん!」
やることを終えて、みんな荷物を持って帰り始めた。
「双葉くん、ちょっといいかな?」
コヨミが僕に近づいてきた。
「ん?」
すると、コヨミは「手を出して。」っと言われ、手を出して見ると…僕が予想してたよりもちょっと大きなスイーツ店にありそうな箱をくれた。
「開けてみて。」
流石にこのままだと開けにくいため…近くの机に置いて、箱を開けてみると…、
「…これ、『コミチャンのセイカイミズネギ風グミ』と『ルニーとお揃いのみどりマカロン』の『スライム兄妹セット』!?」
入っていたのは、メニューで載っていた二つのお菓子のセットだった。
しかも…、
「実は…このメニューは、ほとんど私で…キャラクターも私が数日前にゲーム部の手伝いで描いたの。だから…その、双葉くんの感想が聞きたいから、食べてほしい!」
コヨミ発案のオリジナルメニューである。僕はありがたく手に取ろうとした…直前、
「んあー!双葉くん、ずーるーいー!」
帰ったはずのコノハと、
「よう!遊びに来てやったぜ…って、てめえ!それを俺にもよこせ!」
同級生で腐れ縁の「安堂 誠二郎(あんどう せいじろう)」のセージが美術室に入ってきた。
「こうなるだろうと思って、少し多めに作っておいて正解だったね。」
「みんなで食べよー!」
そうして、たくさん話した。セージ達の部活は何をしていたのか。コヨミ達の買い出しで起きた出来事。コノハ君が大活躍した話等…、僕らは外が暗くなるまでたくさん話した。
僕らの最後の文化祭は、いい思い出が出来て…。
こうして四人で過ごす時間も…、
「ニャー。」
「あ、クロ助!まーた学校に来たの?」
クロ助は美術部の「隠れ部員」として可愛がれている猫だ。僕の家にすんでいるが…たまに学校にやって来る。
「なんだか嬉しそうだね。」
「ニャー!」
「うん!」
こうして集まると…僕はとても安心するから、ただ何時までもそうだったらよかったのに…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます