No.7 迫る行事、それぞれの準備

 あれから秋になって…最近少し寒くなってきたので、僕は赤いマフラーを巻いて七時半に家を出た。




 七時五十分…僕らが通う「花宮中学校」に入って、教室ではなく…美術室に向かった。

 「おはよう!双葉君。コノハ君が先に入っているはずだから、急ごう!」

 おそらく、朝食用のパンを加えたコヨミと合流して、僕らは美術室に着いた。

 「やっときたー。二人とも、おそい…しかもコヨミはパン加えたまんまきたー。」

 猫みたいな寝癖や喋り方が特徴のコノハ君が、椅子に座って待っていた。

 「仕方ないじゃん!いつもの起床時間じゃないから寝坊しちゃったし…。」

 「まぁ確かに、いつもは部活って放課後しかないし…今日は『前日』だから、仕方ないよ。」

「考えてみたらー、朝の部活動を先生が許可くれたのは意外とラッキーだしねー。」

 「まだ準備が全然終わってないから、助かるね…もぐもぐ。」

 「まだ食べてなかったのー!?」

 「あはは…」

 ひとまず僕とコヨミは近くの椅子に座った。

 「そろそろ本題にいこーか。」

 「うん…」

 

 秋になって、学校行事の一つである『文化祭』が行われる季節で、少し前から僕ら生徒はその準備をしていたのだが…。

 「美術部の方は全然まだなの忘れてた…しかも明日でしょ?」

 そう…。クラスでの準備は三日前に終えたが、あまりに忙しかったため話し合う余裕がなかったのだ。

 「まぁー、美術部はただ絵を飾るだけでいいかなって思うけどー…。」

 「そうだね、そういうことにしますか!」

 美術部は絵を描くのがメインの部活なので、『ただ飾るだけ』という感じであっさり決まった。

 でも…、

 「それさ…去年も同じパターンだったけど、あまりお客さん来てくれなかった…。」

 去年は『メイドカフェ』、『パン』等のレストラン系や、『ゲーム』、『オリジナル映画上映』等のエンターテイメント系の方が人気だったせいか、美術部の展示に見に来る人が少なかった。

 「私は今年から転校してきたからよくわからないけど、それだとなんだが不味いわね…。」

 「前の先輩は自信作を展示していたんだけど…あまり見てくれる人がいないことにショックで思い出づくりが出来ずに卒業を迎えてしまったんだー…。僕達の最後の文化祭でもある今年もたくさん見てくれないなんてー…。」

 あまりの不安で、とても空気が重くなった。


 数時間後…。

 休み時間の合間にそれぞれ考えてみるが何にも決まらず、放課後になってしまった…。

 他の部員達が集まってきた所で、部長であるコノハが自ら文化祭の内容を話した。

 部長達のリアクションは暗かった。そりゃそうだ、去年と同じ結果になる可能性があるからだ。

 そして、みんなは仕方なく「もう、それでいいよ。」って言うようにうなずいた。

 何かいい方法は…って考えていたら、僕の頭の中に今朝の会話が流れる。

 「ん?メイドカフェ…カフェ…『料理』…!?」

 みんなそれぞれの場に動こうとしたその時、

 「これだー!」

 僕はそう声を上げた。

 「急にどうしたの!?」

 「空星先輩?」

 みんなざわざわと戸惑い始めてしまった。

 「…双葉くん、もしかしてー!」

 僕はみんなに内容を話した。みんな「やってみよう」と賛成してくれた。その後話し合いの上…グループに別れてからそれぞれ即行動を行い、時間ギリギリで美術部の準備を終えた。

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