No.6 彼らの筆で描かれた結末と未来
あれから数ヶ月、休みが明けてからも三人で取り組み続け…ついに、その時がやってきた。
「すごい…ここが、ビヴァンヒレッジコンテストの会場…。」
「そっか、コヨミはここに来るの始めてだったね。」
「わくわくー、ワクワクー!」
僕らはビヴァンヒレッジコンテストの会場にいる。制服を着て『花宮中』と指定されている席に座って待っていた。
するとコヨミは声のボリュームを低くして、
「…ねぇ、双葉君。」
「どうしたの?」
「あそこ…なんだけど。」
コヨミが低めに指を指す方向には、なんとセージが立っていた。
今回は、僕らが参加する『イラストの部』だけではなく、『ゲーム作品』や『科学』などのコンテストが他の会場で行われている。だがセージは柔道部なので、関係者以外は入れないはずなのだ。
すると、セージは一人の審査員の元へ向かう。
「なるほどー…。」
コノハ君は気づいたようだが、僕とコヨミは理解出来ず、彼に聞くことにした。
「どういうこと?」
コノハはどこか真面目な表情で答えた。
「あの人はー、セージの『父親』だよー。」
セージの父親…つまり、父親の手伝いだろうか?それならば普通、ありえない。
その後セージは、父親にお辞儀して会場を出て行った。
「何なんだろうか…。」
僕らは彼が会場にいた理由が分からない中、
「只今より、ビヴァンヒレッジコンテストイラストの部決勝を始めます。」
会場は沢山の人が集まっていた。
僕らの花宮中を含め全部で六校が決勝進出している。ちなみに、僕らの出番は最後の六番目である。
そんな中、僕らの出番がやってきた。
「最後は、花宮中学校です!」
拍手が会場内に鳴り響く。
「頑張って!」
「『にゃごにゃごパワー!』だよー!」
二人が応援してくれる中、僕はたった一つの布が被さった作品があるステージへと上がった。
「こんにちは。花宮中代表の『空色ソウ』です。僕たち花宮中の作品は、こちらになります。」
僕は被さった布をそっと取った。
『おぉ…』
審査員達が興味深そうにこちらを見ている中、僕らはそのままスピーチを続けた。
「僕らの作品名は、『あの日見た僕らの輝き』です。こちらはある日に部室から見たグリーンフラッシュを水彩画で描きました。背景の夕焼け空とグリーンフラッシュのグラデーションや、部室にある道具等を仲間共に細かく表現しました。あの日の写真をそのまま描くだけではなく、同じ部活仲間と見たこの絶景が僕らの大切な思い出が詰まった作品だと、僕は…僕らはそう感じています。これで作品紹介を終わります。」
再び拍手が鳴り響く中で僕はお辞儀してから、席へと戻った。
「あぁ…緊張した。」
「お疲れ様。」
「では、すべての作品の紹介が終えたところで審査員代表により発表します。」
数分後
準優勝の発表が終わって、肝心の優勝の発表する。
「ビヴァンヒレッジイラストの部決勝、優勝は…」
花宮中は前回、先輩も決勝までは上がったが、優勝は出来ず、初優勝も叶わず終わった。僕らは最後の思いを乗せ、優勝出来るように深く祈った。その結果は…。
「…花宮中学校、『あの日見た僕らの輝き』です。」
「…や、やったよ、優勝したんだよ!!双葉君!」
「すごい…、すごいよー!!」
あまりの感動的だったので、声が出ない。
「では、花宮中学校の生徒達はステージに上がってください。」
あれ?前回は代表者だけだったって聞いたけど…。とりあえず僕ら三人はステージに上がった。
「花宮中学校代表、『空色ソウ』様。貴方の作品はとても美しく素晴らしい作品だと感じました。誠にお祝い致します。」
僕は審査員代表から賞状を受け取り、コヨミ達はトロフィーを受け取った。
僕らは賞状とトロフィーを持って、前に並んだ。
『ありがとうございました!』
僕らは礼をして、無事にコンテストが終了した。
僕らは帰りのバスを待っていた。すると、
「おめでとう、双葉。」
振り返ると、そこにはセージがいた。
「双葉に手を出すなって数ヶ月前に言ったよな。」
コノハはあの時のように警戒している。
「違う。お前らに会わせたいやつがいるんだ。」
「…わかった。」
僕らは再び会場内に向かった。
入ってみると、セージの父親が待っていた。
「やぁ、優勝おめでとう。」
その人はそう微笑みを浮かべて言った。
「あ、ありがとうございます。」っと僕達は父親にそう返した。
すると、
「空色ソウ君…いや、『空星双葉』君…」
え!?なんで僕の名前を知ってるんだ!?そんな中、父親は話を続けた。
「妻や先生から話は聞きました。学校生活だけではなくお泊まり会まで…うちのバカ息子が迷惑かけてしまい、誠に申し訳ない…。お前も謝りなさい!」
ところが、
「あいつらはあの時俺を殴ったり、いじめた奴だぞ!まずはお前らが謝れよ!土下座しろ!!」
っとセージが言うと、父親は…
ゴツ!!
「ひぃー!!すみませんでした!」
セージは頭に拳で殴られ、僕らの前で土下座した。
僕らはあまりに驚き、なにも言えなかった。
「本当にすみませんでした。家に戻ったらうちのバカ息子にしっかり教育させますから、今後良ければ仲良くしてやってください。また何かやらかしたらすぐに伝えてください。もし良ければ、わざわざ来てくれたお詫びに駅まで送りましょうか?」
「あ、はい…。」
僕らは父親の車で駅まで乗せて貰い、ご挨拶してから電車に乗って帰った。
…ピロン。
「あっ、コヨミからだ。」
コヨミからメッセージが来た。実は、お泊まり会の際にグループラインを作っていた。
『三連休の時のこと、次の日に報告しといて正解だったね。』
『正直、お父さん来るなんて思わなかったけどねー。』
「『本当、意外だったね…』っと。」
『私そろそろ寝るね。』
『僕もー。おやすみー。』
コノハ君からおやすみスタンプが送られた。
「『お疲れ様、おやすみ。』っと。」
…。
いろいろあったけど、優勝出来て良かった。
大切な思い出や、いつもの日常が『僕ら』を描いているのだろう…っと、僕はそう思った。
「…寝よう。」
僕らはこれからも三人で、みんなで楽しく過ごせれば、僕はそれでいい。
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