No.5 作品制作合宿と少年らの決着

次の日

 「…明日は三連休なので、事故の無いように気を付けてください。では、これで帰りの会を終わります。」


 キーンコーンカーンコーン…


 美術室

 「楽しみだね。」

 ウキウキなテンションでコヨミは僕に話す。

 「父さんから許可もらえたから、楽しみ。」

 昨日、父さんが早く帰っていたので事情を話したら『独りじゃあ寂しいし、友達と楽しんでな。」と言ってくれた。だからとても楽しみ。

 

 数時間後

 「双葉くーん、そろそろ行こー!」

 コノハ君がぴょんぴょんと跳ねている。それほどお泊まり会がしたかったのかな。

 「んじゃー、土曜日の午後7時くらいにサザナミ公園に集合ねー!解散!」

 コヨミ達は荷物を取りに一度家に戻って行った。僕も家に戻ることにしたけど…。

 「あの、さっきから僕達の後をついてきて、何か用事ですか?」

 すると、公園の木の側から人がスッと出てきた。

 「お前、気づいてたのか。」

 出てきたのは、なんとセージだった。

 「僕に用事ですか。」

 セージは答える。

 「そうだ。お前は俺のコヨミちゃんとお前の家でお泊まり会をするんだってか?」

 「そうだけど。」

 僕は素直にそう答える。

 するとセージは、

 「『俺達』はそいつを止めに来たんだ。あの寝癖野郎もいないから、大人しくコヨミちゃんを渡してもらおうか!」

 そう答えると、公園の周りからたくさんの生徒らが次から次へと集まってくる。僕が見たところ、20人もいる。

 そして

 「野郎共!このガキから姫を取り返せ!」

 「ウォーー!!!」

 たくさんの軍勢が攻めて来る。けれど、こんなことがあろうと一つだけ準備をしていた。

 僕がポケットから取り出した物は、スマホである。

 僕はスマホを耳に当て、

 「コノハ君!」

 そう叫ぶと、セージの背後からコノハ君の拳の威力が彼の背中を貫く。

 「ぐはっ!」

 倒れたセージを仲間が振り返ると、柔道着を着たコノハ君が獲物を捉えた虎のような目で立っている。

 仲間が彼の姿を目の当たりにして、戸惑い始めた。

 コノハ君は、

 「僕らの仲間に手を出すと…」

 ギロッ、とコノハは野生のような表情を見た仲間はあわてて逃げていく。

 「間違いない、樋本剛二選手の息子だ!」

 「逃げないとやられちまう。」

 セージが目を覚ました時には、僕とコノハそして、

 「諦めてお帰りください。」

 コヨミ以外誰もいなかった。

 「お前ら、先生にチクってやる!」

 コヨミとコノハは僕にコクリとうなずき、僕は彼にこう返した。

 「いいよ。」

 セージはニヤリとしながら逃げ去った。


 数十分後

 「お邪魔します。/おじゃましまーす!」

 僕らは無事にサザナミ公園から僕の家に入った。

 「一階のリビングでゆっくりしてて。」

 「わかった!」

 「りょうかーい!」

 双葉は三人で作業ができるように、準備をしに二階へ行った。

 「…すごく広い。」

 「ひろーい!」

 二人は広いリビングに入り、ソファーに座った。

 「おまたせ。二人の荷物を僕が持って二階に置きに行くから、二人は先に買った材料で料理してて。」

 双葉は二人の荷物を置きに、二人は料理をサクサクと始めた。

 「まずは、野菜を一口サイズに切ろーう!」

 じゃがいも、ニンジン、たまねぎを二人が切って、

 「びぎゃー!たまねぎ切ってたら、涙がー!」

 「いけない!たまねぎを切る前に冷やすの忘れてた!」

 そんな中、荷物を置き終えた双葉と合流して、

 「もう野菜を切り終えたんだ。ありがとう!」

 「エヘヘー。」

 「よし、次は鍋に野菜を入れて煮込むよ。」

 先ほど切った野菜と一口サイズで売ってあった鶏肉と水を鍋に入れて、火をつけた。


グツグツ…

 「次はカレーのルー…」

 カレーのルーを出そうとすると、

 「私、お皿とお水の準備するよ。」

 「ありがとう。カレー出来たら、伝えるね。」

 「わかった。」

 コヨミは食器の準備に行ったので、僕とコノハの二人で料理を続けた。

 「はい、カレーのルー!」

 コノハは双葉にカレーのルーを渡すが…

 「これ…辛さ何だっけ?」

 カレーのルーの箱はもう台所に置かれていない。

 すると、

 「とりあえず、入れたー。」

 「…え?」

 気がつくと、コノハがルーを入れて混ぜていた。

 「二人とも、こっちはお皿やお水の準備出来たけど、カレーできた?」

 「できたー!だからー、食べよー。」

 「…う、うん。」

 

 「両手をあわせて、いただきまーす!」

 「い、いただきます。」

 「双葉くん、カレー嫌いだった?」

 僕は正直、カレーは大好物だ。けど、辛口はどうしても無理。

 「う、ううん。だ、大好物だよ…。」

 「そっか、良かった。」

 実はカレーのルーの買い出しは、コヨミだった。僕はその時、野菜を探しに行ってたため、辛さを見ていなかった。

 僕は仕方なく、そのカレーのパクッと口にした。

 「…甘口?」

 「実は…カレーのルー、コノハ君が選んだんだ。」

 「僕実はー、辛いの苦手で甘口にしてもらったんだー。…双葉くんは甘いのダメだった?」

 そっか、コノハ君も辛さの限界があったのか。

 「いいよ、僕も中辛が限界だから。」

 「ありかとー、双葉くん!」

 「良かったね、二人とも!」

 僕らは手作りのカレーを美味しく味わった。

 「ごちそうさま。」

 「美味しかったね。」

 「お風呂沸いたから、コヨミは先に入っていいよ。」

 「んじゃ、お先に!」


 数時間後

 「楽しかったー!」

 「まだ初日だよ。」

 コヨミが戻ってきた後から、僕達男子組もお風呂から戻ってきたばかりで、ソファーで少し休んでいた。

 「双葉君の家って、意外と広いね。」

 「僕も初めて来たけどー、二階建ては羨ましいなー。」

 僕の家はリビングとお風呂に、小部屋が四部屋もあって、トイレは各フロアに一つずつあって、意外と広々した一軒家である。

 そんな中、コヨミはあることに気がついた。

 「…、もうそろそろ寝ないと!」

 僕達はリビングの時計を見てみると、もう11時になっていた。

 「明日からはみんなで作業だから、そろそろ寝よっか。」

 僕は二人を二階にある僕の部屋に連れていった。

 「コヨミは僕のベッドに、僕達は布団で寝よう。」

 「え!だ、ダメだよ!双葉君はベッドでいいよ!」

 コヨミはまるで申し訳なさそうな思いで否定している。けど僕は、

 「いいんだ。女の子を布団に寝かせるなんて、そんな酷いこと…僕は出来ないよ。」

 僕はそのまま、コヨミに話を続けた。

 「それに…行く前に掃除機してるから、安心して。」

 「…双葉君、ありがとう。せっかくここまでしてくれたんだから、お言葉に甘えてそうするよ。」

 コヨミは笑ってそう言葉を返した。僕の瞳にはまるで、向日葵がいま大きく太陽のように開いたような笑顔が写って、僕は…

 「あっ!?今コノハ君が笑った!もう!!」

 「そろそろ寝よー!」

 「そうだね。おやすみ、双葉君。」

 「…おやすみ。」


 ーこんな楽しい日常、続けられたら…ー


 「起きてよー、二人ともー!」

 そういったコヨミは僕とコノハの布団の上に乗って、僕らの上半身をポカポカと叩き起こした。

 「うーん…もうちょっとー…寝かせてにゃーん…。」

 「うぅ…辛い。」

 あまりにも眠たくて、僕達は布団から起き上がれない。

 「もう、二人して…特にコノハ君!いくら可愛く言ったって、私が全力でたたき起こしてあげる。」

 コヨミはニヤリとしながら、

 「起きろー!!」

 バシン!!

 「ニヤー!!」

 コノハはあまりの刺激に耐えられず、まるで尻尾を踏まれた猫のように叫び、布団から飛び出した。

 「うわー!?な、なんだ!」

 僕もあまりの叫びに布団から飛び出した。

 「ふふ、おはよう。二人とも。」

 僕らがみたコヨミは、まるで鬼の嘲笑う表情をしたコヨミだった。

 「お、おはようございます…。」

 とりあえず朝食のトーストを食べてから、僕らは『ビヴァンヒレッジコンテスト』に出す作品制作を行う。

 「そういえば、作品制作は双葉君だけしか出来ないんじゃない?」

 今からの行いに疑問を抱いたコヨミは部長であるコノハ君に問いかける。

 「実はね、ステージに立てるのは『空色ソウ』つまり双葉君だけ、けれども作品制作は団体で行うのもありなんだ。」

 「なるほど。」

 コノハ君の説明でコヨミも納得してくれたみたいだ。

 「さぁ!始めるよ。」

 「がんばろー!」

 「オッケー!」

 僕らは自らの筆を動かし続けた。そして休みが明けてから数ヶ月後…。

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