圧倒的な力
〈OverCorruption!〉
デモンギュルテルから起動音が鳴り響くと共に、中央部が観音開きとなり中から七つの光が飛び出す。そして光は響の周囲を飛び回ると、まずは銀の光が響の頭と融合する。
それをきっかけに、黒と白の光は響の背中に融合する。赤の光は響の左腕に移動して融合を、青の光は響の右腕に向かって飛び融合した。緑の光が響の下半身と融合する。そして最後に大きな黒い光が響の上半身に沈んでいく。
光りに包まれた響が前に歩き出していくと、少しずつその体は異形へと変化していく。そしてその姿は背中から黒と白の翼を生やし、左腕に赤い爪を生やし、右腕は魚の鱗のようなスケイルアーマー、下半身には緑のマントとレライエマグナムを腰に装着し、上半身は黒のドラゴンを模した鎧、そして頭部は銀の騎士甲冑の兜を装着した異形へと変身した。
「おー」
普段と違う姿に変身した響は、興味深そうに両手を見て楽しげに呟く。響が展開しろと念じれば、左腕の爪は三十センチ程の長さになるように勢いよく伸びる。
勢いよく伸びた爪を見た響は楽しそうに、左腕を大きく振り回して爪の性能を楽しんだ。しかしそれを見たバアルイヴィルダーは、苛ついた様子で響に向かって走り出し、膝蹴りを仕掛けようとする。
近づいてくるバアルイヴィルダーを見た響は、気持ちを切り替えるとすぐさま爪を収納し、体を一回転させて膝蹴りを受け流すと、そのままエルボーをバアルイヴィルダーの顔に叩き込んだ。
エルボーを食らってしまったバアルイヴィルダーはそのまま後ろに吹っ飛んでいき、そのまま地面に倒れ込んでしまう。響は追い打ちをかけるように腰に携帯している銃、レライエマグナムを手に取ると冷静にバアルイヴィルダーに向けて引き金を引く。
三発の銃声と共に弾丸が発射され、地面に倒れ込んだバアルイヴィルダーに命中する。弾丸を受けたバアルイヴィルダーは弾丸のダメージにビクンと体を震わせると、体からイヴィルキーが二つ排出された。
「さっきとは段違いの威力だな……」
レライエイヴィルダーとの威力の違いに驚いてしまう響であったが、すぐに切り替えてレライエマグナムを腰に戻すと、バアルイヴィルダーに向かって走り出した。
響は無理矢理バアルイヴィルダーを立たせると、そのまま腹部に向かって拳を叩き込んだ。そしてそのまま連続してパンチを叩き込んでいく。
二発目の拳がバアルイヴィルダーに叩き込まれると、地面にイヴィルキーが一つ落ちる。三発目の拳をバアルイヴィルダーに仕掛けると、更に二つイヴィルキーが排出された。
「これが七体同時に憑着したイヴィルダーの力……」
バアルイヴィルダーから簡単にイヴィルキーを出せる力を見て、響は自分が振るえる力の強さと、力に伴う責任の重さを自覚するのだった。
響が己の力を自覚している間に、バアルイヴィルダーは動き出し、響の首に向けて拳を叩き込んだ。反応できなかった響は、咄嗟に小さくうめき声を上げるが、衝撃だけでダメージは小さかった。
「慣らしが必要だな……」
他のイヴィルダーと比べても恐ろしいスペックを誇る、セブンデモンイヴィルダーの力にやや振り回されている響。しかしすぐさま頭を切り替えると、バアルイヴィルダー腕を右腕で掴むのだった。
「フリージングブレス!」
響が叫ぶとともに右腕から冷気が放出される。そのまま冷気はバアルイヴィルダーの腕を包んでいき、またたく間に氷漬けにするのだった。
そのまま響は氷漬けになったバアルイヴィルダーの腕を引き寄せると、そのまま氷漬けの腕に向けて肘打ちを叩き込んだ。強烈な一撃を受けて氷漬けの腕はバラバラに砕けてしまう。砕けた氷と一緒に三つのイヴィルキーが地面に落ちていった。
「私の腕があああぁぁぁ!」
腕が簡単に破壊されたことを見てしまったバアルイヴィルダーは、悲鳴が混じったような叫び声を上げてしまう。しかしバアルイヴィルダー痛みに耐えながらも、すぐさま響から離れるように転がっていく。
そして砕けた腕に集中して力を込めると、先程まで根本から無くなっていた腕が細胞単位で復元されていき、元通りに腕が再生したのだった。だがバアルイヴィルダーは腕の復元に力を使いすぎたのか、息も絶え絶えで呼吸もままならない様子であった。
「どうした? こっちはまだまだ元気だぜ」
「うるさい、そのイヴィルキーを返してもらうぞ!」
振り絞るように走り出したバアルイヴィルダーは、響に向かって素早く拳を放つ。しかし響は素早くジャンプして攻撃を躱すと、そのまま翼を広げて空中を縦横無尽に飛び回る。
空を飛んでバアルイヴィルダーの周囲を飛び回っていく響は、そのまますれ違いざまにバアルイヴィルダーに攻撃していく。
連続で攻撃してくる響の攻撃を回避しようとするバアルイヴィルダーであったが、素早い動きに翻弄されて途中から攻撃を回避できずサンドバッグのように攻撃を受けていく。
「っく……このぉ!」
バアルイヴィルダーは腰のデモンギュルテルに装填されているイヴィルキーを即座に一度押し込むと、響に狙いをつけるように腕を伸ばす。
〈Unique Arts!〉
デモンギュルテルから起動音が鳴り響くと、バアルイヴィルダーの腕に雷撃が発生し、そのまま響に向かって放射される。しかし響は旋回することで雷撃を回避していき、そのまま間合いを詰めていく。
そして放たれる雷撃を避けながらも前進していくと、運動エネルギーを乗せたままバアルイヴィルダーの腹に飛び蹴りを叩き込んだ。
勢いの乗った一撃をくらったバアルイヴィルダーは、自動車に轢かれた小動物のごとく吹き飛んでいき、そのまま壁に衝突するのだった。それと同時に衝撃でバアルイヴィルダーから排出されたイヴィルキーが、二つ地面に落ちていた。
「さあどう出る?」
バアルイヴィルダーが壁に叩きつけられたことで煙が舞い散り、響の視界からは見えなくなってしまったバアルイヴィルダーを警戒して、響は腰のレライエマグナムを再び手に取ると、照準を煙に向けていつでも引き金を引けるようにする。
しかしいつまで待ってもバアルイヴィルダーは煙の中から現れなかった。意識を失ったか、と響が思った瞬間、煙の中から石ころが響の視界を横切るように飛び出す。
石ころが床を転がる音に反応して、響はレライエマグナムをそちらに向けてしまう。その隙を突くようにバアルイヴィルダーは煙から飛び出すと、石ころに注目している響の横っ面を殴るのだった。
「ぐぅ……」
突然の不意打ちにもろに攻撃を食らってしまう響、攻撃の衝撃でレライエマグナムを落としてしまい、そのまま床に倒れてしまう。
そのまま追撃しようとするバアルイヴィルダーは響の体を踏みつけようとするが、響は冷静にスケイルアーマーがある右腕で踏みつけを防御した。
そしてそのままバアルイヴィルダーの体勢を崩すように立ち上がった響は、バアルイヴィルダーに向けてヤクザキックを叩き込む。しかしバアルイヴィルダーも即座に防御体勢をとり、ヤクザキックを防いだのであった。
「調子に……」
「乗るなー!」
バアルイヴィルダーは響に攻撃しようと動き出したが、それより先に動いた響のレッグラリアートがバアルイヴィルダーの顔面に叩き込まれた。
ゆっくりと後方に吹っ飛んでいくバアルイヴィルダー、それを注意しながらも響は地面に落ちてるレライエマグナムを拾い上げると、そのままトリガーを引いた。
フルオートで発射された弾丸の雨は、バアルイヴィルダーの周囲に着弾していく。弾丸の大半はバアルイヴィルダーに命中しなかったが、いくつかは命中するのだった。
弾丸が命中した衝撃でバアルイヴィルダーの体からは、三つのイヴィルキーが排出される。それを見た響はすぐさま床に落ちているイヴィルキーを回収するために走り出した。
――バアルイヴィルダーが所持するイヴィルキー、残り二十九
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