オクトパスドリーム
バアルイヴィルダーを地面に叩きつけた響は、そのまま押しつぶすように体重をかけていく。しかしバアルイヴィルダーも体を動かして、響から逃れようとする。
暴れるバアルイヴィルダーは隙間から腕を伸ばして、響に攻撃しようとする。それを見た響は、咄嗟にバアルイヴィルダーの上から逃れるように後ろに下がる。
自由になったバアルイヴィルダーは立ち上がると響に向かって殴りかかるが、響はその攻撃をスケイルアーマーのある腕の部分で受け流す。そのまま回転した響は、勢いを乗せた手刀をバアルイヴィルダーの首に叩き込んだ。
首に一撃をくらったバアルイヴィルダーはフラリと姿勢を崩してしまうが、すぐに立て直して響にジャブをしかける。だが響はスケイルアーマーに覆われた胸で、ジャブを真っ向から受け止めるのだった。
ジャブを受け止めた響はそのまま腕を掴むと、自分の体に引き寄せて距離を詰める。そしてそのまま頭突きをバアルイヴィルダーに叩き込んだ。掴んだ腕を離し、そのまま続けて飛び蹴りをバアルイヴィルダーの胸に一撃を放つ。
蹴飛ばされたバアルイヴィルダーを追撃するように、響は接近して殴りかかるが、バアルイヴィルダーは拳を受け止める。
「舐めるな!」
掴んだ響の腕を引き寄せたバアルイヴィルダーは、響の腹部を狙って強烈なブローを叩き込むが、腹に力を入れた響の腹筋は固く、まるで鉄板を殴ったような音が鳴る。
フンと鼻息を立てた響はそのままバアルイヴィルダーに殴りかかる。しかしバアルイヴィルダーは腕で防御して攻撃を防ぐ。それを見た響はバアルイヴィルダーにローキックを叩き込もうとする。だがバアルイヴィルダーも足を上げて太ももで防御する。
バアルイヴィルダーが片足を上げた事を確認した響は、すぐさま屈むとバアルイヴィルダーの上げている足を掴んで体に密着させると、そのまま回転しながら地面に倒れ込んだ。
「そぉら!」
変速ドラゴンスクリューをくらったバアルイヴィルダーは、そのまま回転力によって投げ飛ばされ地面に叩きつけられる。
バアルイヴィルダーが地面に倒れ込んだのを見た響は、すぐさま立ち上がるとバアルイヴィルダーに向かって飛び込みボディプレスを仕掛ける。
立ち上がろうとするバアルイヴィルダーであったが、彼の視界には先に動き飛び込んできた響の姿が写った。そしてそのまま硬いスケイルアーマーを体に叩きつけられた。
バアルイヴィルダーはすぐに響をどけようとするが、響は両手でバアルイヴィルダーを叩くと自分から立ち上がり離れた。
「くそ……はぁ……はぁ……はぁ」
立ち上がったバアルイヴィルダーであったが、すぐに息が上がっていることに気づく。しかしなぜ息が切れているのか分からなかった。だがピースをして笑っている響の姿を見たバアルイヴィルダーは、すぐに響の取った戦法によってスタミナが奪われたことに気づく。
「死のコース、またの名をオクトパスドリームってね。相手を地面に叩きつけてスタミナを奪っていく戦法さ」
バアルイヴィルダーに指差しながらも、響はバアルイヴィルダーの周囲を歩き回り動きを観察する。そんな響の様子に頭に血が登ったのか、バアルイヴィルダーは走り出して殴りかかる。しかしその攻撃を横に回避した響は、そのままバアルイヴィルダーを地面に倒すように突き飛ばす。そしてスケイルアーマーに包まれた硬い頭部で殴りかかる。
仰向けに倒れたバアルイヴィルダーは立ち上がろうとするが、それを防ぐように響はヘットバットで攻勢をかけていく。両手で響の頭を掴もうとするバアルイヴィルダーだが、響は両腕を掴むとそのまま続けてヘットバットを続けていく。実質金属の塊で殴られ続けているバアルイヴィルダーの体からは、僅かながら血が流れ始める。
血を見ても響はヘットバットを止めることはなく続けていった。ゆえに自身の顔にバアルイヴィルダーの返り血が着いていることにも気づかず、戦いを有利に進めるための戦術としか見ていなかった。
十回を超えるヘットバットがバアルイヴィルダーに叩き込まれたが、バアルイヴィルダーは咄嗟に両足で響の腹を蹴ることを思いついた。そしてすぐさま響の腹に向かって蹴りを叩き込んだ。
腹部を蹴られたことで後ろに転がってしまう響、その隙を突くようにバアルイヴィルダーは立ち上がるのだった。そして追撃するように、響を踏みつけようとするバアルイヴィルダー。響は転がって回避するが、バアルイヴィルダーは連続で踏み込んでいく。そのまま逃げ続ける響であったが、回避していくと遂に壁にぶつかってしまう。
「っ……!?」
背中に感じる感触に咄嗟に動きを止めてしまう響、そしてバアルイヴィルダーは響の体を踏み砕くように下ろすのだった。
目の前から近づいてくる足を見た響は無意識にジャンプをすることで、バアルイヴィルダーの踏み降ろしを回避した。バアルイヴィルダーの頭上を飛び越えて跳躍した響は、そのまま足を持ち上げて踵落としの体勢をとると、バアルイヴィルダーの頭に踵落としを叩き込んだ。
「やあー!」
咄嗟に頭を守るように防御したバアルイヴィルダーであったが、落下のスピードが乗った響の一撃を防ぐことはできず踵落としをくらう。踵落としを受けたバアルイヴィルダーはうめき声とともに、一瞬頭を下げてしまう。
着地した響はすぐに動き出すと、頭を下げているバアルイヴィルダーの腹部に向けて、強烈なフックを叩き込んだ。フックをくらったバアルイヴィルダーの体は、ほんの少し宙に浮いてしまう。
空中に浮かんだバアルイヴィルダーに目掛けて響は、追撃の横蹴りを腹に攻撃をかける。横蹴りをくらったバアルイヴィルダーの体は吹き飛んでいき、そのまま壁に叩きつけられた。
壁に叩きつけられた衝撃で、床に座り込んだバアルイヴィルダー足元にはアスモデウスのイヴィルキーが落ちていた。
「アスモデウス!」
アスモデウスのイヴィルキーを見た響は、焦った様子で走り出す。バアルイヴィルダーの近くまで走った響は、イヴィルキーを手に取ろうとするがその瞬間、バアルイヴィルダーが先にイヴィルキーを掴む。
「ふ……残念だったな」
「その手を……どけろ!」
笑うバアルイヴィルダーの顔に向かって、響は問答無用で拳を叩き込んだ。響の放った右ストレートを受けたバアルイヴィルダーの体は横に吹っ飛んでいき、誰の手にも触れられていないイヴィルキーを響は拾い上げる。
「アスモデウス、もう一度力を貸してくれ」
〈Asmodeus!〉
『私が最後とは、だがまあいい主役は最後ににやって来ると言うしな!』
響がアスモデウスイヴィルキーを起動させると、アスモデウスは気分が良さそうな声を上げる。そして響はデモンギュルテルに装填されているイヴィルキーと交換した。
「憑着!」
〈Corruption!〉
デモンギュルテルから起動音が鳴り響くと、中央部が観音開きとなりそこから竜の姿を象った黒色のオーラが現れる。
竜のオーラは響の周囲を期限が良さそうに飛行すると、響に向かって一直線に突っ込んでいく。
そして響と竜のオーラが一つになると、背中に大剣を背負った全身が黒に染まった竜の意匠を持つ異形、アスモデウスイヴィルダーに変身した響が立っていた。
再びアスモデウスイヴィルダーに変身した響は、軽く腕を回しながらバアルイヴィルダーに視線を向ける。そこにはゆっくりとだが、立ち上がったバアルイヴィルダーの姿があった。
無言で響はバアルイヴィルダーに向かって、人差し指をクイックイッと曲げて挑発する。それを見たバアルイヴィルダーは唸り声を上げながら、響との距離を詰めていく。
距離を詰めたバアルイヴィルダーは、響に向かって上段蹴りを放つ。しかし響も上段蹴りを仕掛けることで、二人の足は交差して拮抗した。
ほんの一瞬動きを止めた両者であったが、すぐにもう片足の力だけで後ろにジャンプをする。後ろに下がった響は背中に背負った大剣を抜き取ると、構えてバアルイヴィルダーに向かって斬りかかる。
「やあああぁぁぁ!」
大剣を振り下ろす響であったが、バアルイヴィルダーは大剣の腹を殴って回避する。そして地面に叩きつけられた大剣を踏むと、響の顔に向かって拳を叩き込んだ。
殴られてしまい大剣を離してしまった響、バアルイヴィルダーは大剣を拾い上げると、そのまま響に向かって斬りかかる。
襲いかかる大剣を響は体を少しだけ動かすことで回避する。そしてその場で体を回転させると、響はバアルイヴィルダーに回し蹴りを叩き込んだ。
「っつあああ!」
吹き飛んでいったバアルイヴィルダーの体から、二つのイヴィルキーが排出され響の足元に転がっていく。響はイヴィルキーを拾い上げると、そのまま懐にしまうと横になっている大剣を拾った。
――バアルイヴィルダーが所持するイヴィルキー、残り四十一
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