デートだよ全員集合!

 午後八時、響の自室にて部屋の主である響は、教科書を読んでいた。しかし先程から読むのに集中できなくなっている、それは響のベットの上で寝転がっているキマリスのせいだ。


(スカートの中が見えそうだ)


 キマリスの服装は普段の男装だが、彼女の下はスカートとニーソックスであり。ベットの上を転がるだけで、眩しいふとももがチラチラと見えるだけではなく。足をパタパタと上下に動かすために、スカートの中まで見えそうになっているのだ。


(精神集中、精神集中)


 明日はテストなので教科書を読み返しているところに、襲いかかる思わぬ伏兵に、響の精神はグラグラであった。教科書とキマリス、二点を行き交う響の視線。

 そんな響の視線に気づいたキマリスは、獲物を見つけた猫のように笑う。彼女はベットから立ち上がると、スカートをたくし上げ始める。


「フフン、どうしたのかな響?」


(ヤバいヤバい見えそう!)


 少しずつ上がっていくスカート、しかしギリギリパンツが見えない位置でスカートは止まる。


(上がれ! いや駄目だろ)


 キマリスが下着を着ているか、響は知っている。一度だけ彼女の服の隙間から、黒のレースの下着を見たのだ。

 今響の脳裏には、キマリスのスカートの中身が大半を占めていた。彼女がどんな下着を着けているのか、何色なのか、出ては消えていく。


「ねえ響、もし僕がスカートの下に何も履いてないって言ったらどうする?」


 キマリスの発言に響は反応してしまい、ガタッという音共に教科書が床に落ちる。それを見たキマリスの口元は、更に釣り上げっていく。


「響、ちょっとゲームをしない?」


「ゲーム?」


「そう、今度の休みに僕とデートして、僕を満足させたらこの続きをしよう」


 この続きと聞いて、響の喉がゴクリと鳴る。そのまま自分の欲に任せて響は「分かった」とうなずいてしまう。


「ホント! じゃあ次の休み楽しみにしてるね」


 そう言うとキマリスは、実体化を解いて部屋を後にする。後に残ったのは、どうしようと後悔している響だけだった。


(キマリスとのデートどうしよう)


 目先の欲に従ってしまったが、響はデートの経験は多くない。どうしようかと悩みながら、リビングに移動するのであった。

 リビングには、紙を持って睨む琴乃がいた。琴乃は響に気がつくと、話しかけてくる。


「あ、兄貴じゃんどうしたの?」


「琴乃か、ちょっとな」


「ふーん、そうだ兄貴映画に興味ある?」


「まあ、あるといえばあるけど」


「じゃあこれあげるね」


 琴乃は響に持っていた紙を手渡す。響が紙を見ると、それは映画のペアチケットだった。


「どうしたんだ、これ」


「貰ったんだけど、使いみちなくてね。兄貴にあげる」


 琴乃は「じゃあ」と、そのままリビングを後にする。残された響はチケットに書かれた映画のタイトルを、スマホで検索するのであった。

 検索した結果、チケットに書かれた映画は新作の恋愛系の洋画であることがわかった。響は念の為、映画のタイトルとレビューで検索して、評価が悪くないかどうかも検索した。


(これならいけるか……)


 評判の悪くない恋愛系の映画、二人っきり、響にそういう経験はないが、椿と出かけた時と同じようなデートでは駄目だろうと判断した響は、キマリスを映画に誘うと決心した。







 次の土曜日、響とキマリスは駅前のショピングセンターに居た。二人の格好は、派手すぎない程度にめかしこんでいてた。

 二人の行く先は、ショッピングセンター内にある映画館で、ショッピングセンターの大きさに比例して映画館もほどほどに大きいのである。


「ふーんここが映画館ね」


 初めてきた映画館に、キマリスはお上りさんのようにキョロキョロと周囲を見回していた。


「キマリス行くぞ」


「あ……」


 キョロキョロしているキマリスの手を取る響、躊躇なく手を触れられたことにピクッと反応してしまうキマリスであった。


(あ……って何だよまるで生娘みたいな反応じゃないか!)


 流石に声に出しては言えず、内心で叫ぶキマリス。そんなキマリスに気づかずに響は、映画のチケットを用意するのだった。


「キマリス、大丈夫か?」


「ああ、大丈夫だよ響」


 そのまま二人は手を繋ぎながら、指定された席に向かうのであった。二人の席はちょうど真ん中で、映画を見るにはちょうどいい席であった。


「えへへ、楽しみだね響」


 キマリスは楽しそうに響へ笑顔を向ける。キマリスの笑顔を見て響は、可愛いと思いながら顔を赤らめる。しかし暗くなり始めた館内のおかげで、キマリスには気づかれなかった。

 映画の上映が始まり、響はスクリーンに注目し始める。それを見てキマリスも、スクリーンに視線を向ける。


(これは良作なのかな?)


 映画が始まって三十分経過して、響が出した感想だった。響はほとんど恋愛映画を見たこと無いため、このような感想だった。

 さらに十分経過して、物語が佳境に入り濃厚なラブシーンが始まりだした。キス一つとっても響からすると、恥ずかしくて目をそむけたくなる程濃厚のものだった。


(おいおい、ちょっと過激すぎないか?)


 キマリスはどう見てるのだろう、そう思った響は視線を横に向ける。そこには、スクリーンを興味深そうに眺めるキマリスの姿があった。

 響の視線に気づいたのか、キマリスは悪戯っぽい笑みをする。そして彼女は自身の手を響の手に乗せると、映画のラブシーンに合わせて響の指を愛撫し始める。

 キマリスの柔らかい指の感触と、目に映る映画のラブシーンが組み合わさリ、まるでキマリスに責められているような錯覚を抱く響であった。


(やばい変な感じになってきた)


 映画はクライマックスまで進み、先程以上の濃厚なシーンが始まる。ラブシーンとキマリスの柔らかな感触に、響の心臓の鼓動はさらに早くなっていく。

 とはいえキマリスにやられっぱなしは癪だった響は、キマリスの手を包み込むように優しく手を握る。一瞬キマリスは手をピクッと反応させるが、まるで恋人繋ぎのように響の指を絡ませる。

 そして響の耳元に顔を近づけるとキマリスは、「響は映画でやってるような事がしたいんだね」と甘く優しい声でささやくのだった。

 キマリスの甘いささやき、羞恥、映画のラブシーン、様々な感情が混ざり合い響の耳は、光源が無くなった劇場内でも隣席のキマリスが気づくぐらいに赤くなった。


(可愛い反応だなぁ、響)


 初々しい反応をする響を見て、キマリスの心の中には小さいながらも嗜虐心が生まれていた。

 羞恥心で映画に集中出来ない響、響を責めることに集中しているキマリス、二人はどれほど時間が経過したのか分からないままでいた。そして劇場の照明が一斉に点灯する。


「あ」


「え?」


 劇場が明るくなったことに、二人は間抜けな声をあげる。そしていつの間にか映画が終わっていたことに気づくのだった。


「出よっかキマリス」


「うん……」


 劇場を出ると実体化を解除するキマリス、そのまま家に帰る二人は終始無言だった。

 そのまま自室に戻る響であったが、部屋に入った瞬間ベットに押し倒される。


「ん!?」


 後を振り向く響であった、正面にはキマリスが上から四つん這いになっていた。そのままキマリスは、響の耳元に顔を近づける。


「キマリス!?」


「響、ゲームの結果だけどね。楽しかったよ」


 ささやくキマリスの言葉を聞いて、安堵する響。そんな響をよそにキマリスは、ゆっくりとベットから離れるとスカートに手をかける。


「え!?」


「だってそうだろ? 満足させたらあの時の続きをしようって」


 キマリスはそう言いながらも、スカートの裾を少しずつ上げていく。対して響はスカートの中を見れることよりも、恥ずかしさが勝って両手で視界を遮る。ただし遮ってる割には、隙間からキマリスの姿が見えていた。

 遂にキマリスのスカートは、ふとももの上パンツが見える所まで上がっていった。


「ふふふどうしたの? 僕のスカートの中を見ないの?」


「え、あ、その」


「ほら、見えるようになったけどどうする?」


 キマリスの誘惑を聞いて響は遂に、両手を下げてしまう。視線の先には、顔を赤く染めてスカートを持ち上げるキマリス、そして白いパンツがあった。

 十秒程経ち、響がスカートの中を堪能したことを確認したキマリスは、終了と言わんばかりにスカートを持つ手を離す。


「ねえどうだった? 僕の姿綺麗だった?」


 キマリスは再び響の耳に顔を近づけると、小さくささやく。そして小さな声で「ごめんね」と呟く。


「どうして?」


「実は今日の僕はアンダースコート、いわゆる見せパンだったんだ。だってまだ早いだろう?」


 キマリスはささやいている間も、両手で響の顔を優しく触り続ける。


「僕が君を魅了するだけじゃない、君が僕を魅了するべきだろ?」


「だから僕の心を奪う日を待っているよ、僕の契約者」


 最後にキマリスはチュッと、響の耳にキスをすると離れて実体化を解除する。

 響の部屋に残ったのは、キスされた部分を手で触り続ける響だけであった。

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