大地を駆ける者と天を舞う者
衝突するモラクスイヴィルダーと響、最初の攻防はモラクスイヴィルダーの突撃が勝利した。地面に転げ落ちる響、モラクスイヴィルダーは不敵に笑うのであった。
「この程度か、ならば俺の角で串刺しになれ!」
走り出すモラクスイヴィルダー、響は二本の角を持ち受け止めようとするが、モラクスイヴィルダーの力は凄まじく止められない。
「ぐぉぉぉ」
少しずつ後に押されていく響、全身に力を込めてモラクスイヴィルダーを止めようとするが、全く止まらない。
遂に数十センチで壁に衝突するまで動かされる響。流石に危ないと判断したのか、横に移動して回避する。
そのまま走っていくモラクスイヴィルダーが激突した壁は、粉々に砕け散り粉塵が舞い散る。
「クソ、馬鹿力野郎が!」
凄まじい力を持つモラクスイヴィルダーに対して、悪態をつく響。スキあらばと蹴りを叩き込むが、モラクスイヴィルダーはピクリともしない。
攻撃を受け止めたモラクスイヴィルダーは、響の足を掴むと凄まじい勢いで振り回す。人形のように振り回される響、そしてモラクスイヴィルダーは響を壁に叩きつける。
「ぐぅ」
勢いよく叩きつけられたために、地面にうずくまる響。それを見てモラクスイヴィルダーは追撃と言わんばかりに、響を踏みつける。
苦しむ響を見てモラクスイヴィルダーは、薄ら寒い笑みを浮かべながら踏みつけ続ける。
「がァァァ!」
腹部を襲う痛みに、響は悲鳴を上げる。それでも抜け出すために、レライエのイヴィルキーを取り出し起動させて、ベルトのイヴィルキーと交換する。
〈Leraie!〉
「憑着!」
〈Corruption!〉
レライエイヴィルダーに変身した響は、すぐに腰のレライエマグナムに手をかけて引き金を引く。襲いかかかる鋼鉄の嵐に、モラクスイヴィルダーは避けられずに後ずさっていく。
「まだまだだ!」
響はそのままレライエマグナムを撃ち続けながら、モラクスイヴィルダーとの距離を詰める。殴り合いができる距離まで近づくと、そのまま回し蹴りを放つがモラクスイヴィルダーはびくともしない。
「なんだぁこの程度かぁ?」
不敵に笑うモラクスイヴィルダー、そのまま響の胴体を両腕で掴むと、そのまま頭まで持ち上げてしまう。
「く……離せ!」
「さあ、処刑の時間だ」
モラクスイヴィルダーは持ち上げた響を、空中に放り投げる。空高く放り投げられた響は、逃れようとするが勢いよく投げられたために自由に動けない。
「くうぅぅ」
響の眼下には二本の角で串刺しにしようとするモラクスイヴィルダーがいた。空中では自由に動けない響を眺めながら待つモラクスイヴィルダー、フリーフォールする響。
「フフフ」
串刺しになったと確信したモラクスイヴィルダーに、ピタリと妙な音が聞こえる。何の音だと見上げると、二本の角を掴んだ響が無事でいた。
「貴様ぁ!」
「危機一髪だったぜ、トゥ!」
響はそのまま勢いよくモラクスイヴィルダーの頭部を蹴ると、反動を利用して距離を取る。
『マスター、私達のイヴィルキーなら空を飛べるよ、ねハルファス』
『ええそうですマルファス、空を飛べば有利ではマスター?』
『確かにあのパワーは驚異的だな、いくぞハルファス、マルファス!』
ハルファスとマルファスの助言を聞いた響は、すぐにハルファスとマルファスのイヴィルキーを取り出して起動させる。
〈Halphas Malphas!〉
ベルトのキーを入れ替えようとする響だが、そうはさせまいとモラクスイヴィルダーが妨害しにかかる。妨害を響は転がって回避すると、ベルトのキーを交換する。
「憑着!」
〈Corruption!〉
ベルトから紋章が生成されると、響を覆い尽くす。そして紋章が消えた場所にはハルファス・マルファスイヴィルダーとなった響が立っていた。
「いくぞ牛野郎」
響は大きくジャンプすると、両足で飛び蹴りをモラクスイヴィルダーに放つ。モラクスイヴィルダーは胸で蹴りを受け止めるが、「フン」と微動だにしない。
攻撃が聞かないと見るや響は、蹴りの反動を利用して空中へ距離を取る。
「待て!」
ヒット・アンド・アウェイを実行する響を、モラクスイヴィルダーは捕まえようとするが追いつけない。そのまま響は空中を舞い、モラクスイヴィルダーの様子を観察する。
「これならどうだ!」
響はモラクスイヴィルダーへ、空を飛びながら蹴りを放つ。そしてそのまま空を舞い、連続して四方八方から蹴りをモラクスイヴィルダーへ放つ。
「くううう調子に乗るな」
空中から放たれる連続攻撃に、モラクスイヴィルダーは苛立つが響を捉えることは出来ない。
響は空中で静止すると、両腕を上げて回転する。回転するエネルギーは、一つの竜巻を生み出していく。
「くらえ!」
響が腕を振り下ろすと、竜巻がモラクスイヴィルダーへ襲いかかる。しかし竜巻はモラクスイヴィルダーの動きを止める程度で、ダメージを与えることは出来なかった。
「小賢しい!」
モラクスイヴィルダーは竜巻を破壊して脱出しようとするが、そこへ響が追撃をかける。
響は大きく手を広げると、周囲に無尽蔵の羽を生成する。そして響が「行け!」とモラクスイヴィルダーへ手を向けると、羽はモラクスイヴィルダーへ襲いかかかるのであった。
「ぐううう」
飛来する羽はモラクスイヴィルダーの強靭な外皮を貫き、全身に突き刺さっていく。
追い打ちをかけるように突き刺さった羽を狙い、響は蹴りを放つ。蹴りを食らったモラクスイヴィルダーは、羽がさらに体の奥深くに刺さり、苦悶の声を上げる。
「これで決まり!」
苦しむモラクスイヴィルダーを見て響は逃さないと、ベルトのキーを二度押し込む。
〈Finish Arts!〉
地上に降りた響の右足に、エネルギーが流れ込む。必殺の蹴りの構えを取る響と、突進の準備をするモラクスイヴィルダー、両者が動き出したのは、同時であった。
「はあああ!」
「うおおお!」
蹴りを放つ響と、頭部の角を武器として突進するモラクスイヴィルダー、激突する足と角。均衡する両者だが、決着はモラクスイヴィルダーが勝利する。
「ううう……」
「はっはっはっこれで終わりか?」
突進に負けた響は、衝撃によって地面を転がる。それを見てモラクスイヴィルダーは、気分良く笑う。
「ふっふう……」
全身を襲う痛みを堪えながら、響はゆっくり立ち上がる。そんな響に止めを刺すように、モラクスイヴィルダーは殴りかかる。
モラクスイヴィルダーの強力な連続攻撃が、響へと襲いかかる。響は痛みで回避もままならず、何発も攻撃を受けてしまう。
(痛みで頭がボンヤリとしてきた……あれは何だ?)
殴られ続けて意識が朦朧としてきた響は、モラクスイヴィルダーを見て一つの違和感を感じる。それはモラクスイヴィルダーの角に、ヒビが出来ていたのだった。
先程まで無かったはずの傷を見て、響の意識は覚醒していく。
(さっきの蹴りでヒビが出来たのか!)
「死ねぇい!」
モラクスイヴィルダーは響の様子に気づかずに、攻撃を仕掛ける。放たれる攻撃を響は、逆らわないように受け流してジャンプで距離を詰める。
「くらえ、トマホーク・チョップ!」
首元に目掛けて放たれた、両手のチョップを食らって、モラクスイヴィルダーは苦しげにうずくまる。そのスキを逃す響ではなく、ジャンプして背後を取る。
「まだだ!」
響は背後からモラクスイヴィルダーの肩に乗ると両足を首に掛けて、片側の足首をもう片方の足の膝裏に当てて、首四の字を仕掛ける。
「ぐごごご」
背後から首を絞められてモラクスイヴィルダーは、苦しんだ唸り声を上げる。苦しむ声を聞いても響は技を緩めず、追撃に移る。
「喰らえ変速スタンディングキャメルクラッチだ!」
響はモラクスイヴィルダーのヒビが入った片角を両手で掴むと、キャメルクラッチのような体勢を取り、全力で角を引き上げる。モラクスイヴィルダーの角はミシミシと軋む音が鳴り、そして角は真っ二つに折れてしまう。
「自慢の角は駄目になったな!」
「貴様ぁー!」
片側の角を失ったモラクスイヴィルダーは怒り狂い、逆に角を破壊した響は挑発するのであった。
「今度こそ決める!」
角が破損して守られなくなった頭部を見て、響はベルトのキーを二度押し込み、モラクスイヴィルダーもベルトのキーを一度押し込む。
〈Finish Arts!〉
〈Unique Arts!〉
両足にエネルギーを纏い、そして蹴りの構えを取る響と、全身に炎を纏い、全身を赤く染め上げ、突進の準備をするモラクスイヴィルダー。
「はああぁ!」
「うおおお!」
動き出す両者、先程と同じように見えるが、響は走り出しジャンプすると空中で回転する。そしてそのまま飛び蹴りの体勢をとり、モラクスイヴィルダーの角で守られていない箇所を狙う。
激突する両者だが、その均衡はすぐに終わる。響は蹴った反動を利用して距離を取り、モラクスイヴィルダーは膝から崩れ落ち、大爆発を起こすのであった。
「やった、勝った!」
爆発したモラクスイヴィルダーを見届けて、勝利の声を上げる響。そのままモラクスイヴィルダーが居た場所に近づくと、モラクスのイヴィルキーと工事の作業員と思わしき男が転がっていた。
「これは回収させてもらうよ」
男に語りかけるように独り言を言う響。モラクスのイヴィルキーを拾った響は、その場を後にしようと歩き出すがうまく歩けない。
「ちょっと苦戦しちまったかな?」
近くにあった壁にもたれかかると、そのまま座り込む響。そのまま変身も解除してしまう。
『ちょっと、大丈夫かい?』
動くなくなった響を心配して、語りかけるキマリス、しかし響からはまったく反応がない。慌てて実体化するキマリス、すぐに呼吸を確認すると、息はしているが意識はない。
「レライエ! 響の様子を見てくれ!」
「もちろんだキマリス!」
意識がないことに焦ったキマリスは、レライエを呼び出し響を任せる。人体への理解がある、レライエに任せるのが彼女の判断であった。
キマリスは急いで響のポケットからスマホを取り出すと、パスワードを躊躇なく解除する。四六時中一緒にいるキマリスにとって、この程度のパスワード容易いものだった。
「下屋ですが……」
「椿かい、すまないが来てくれ響が倒れた!」
キマリスが連絡したのは、椿のスマホであった。キマリスの切羽詰まった声を聞いて、椿も真剣に聞く。まずは場所を聞き出す。
「場所はわかりました、桜木先生にも連絡します。先輩をお願いしますね」
「ああ頼むよ、椿」
電話を切ったキマリスは、不安そうに響を見つめるのであった。
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