未来に向かって撃て!

 レライエイヴィルダーの戦闘があった日の夜、響は自室で漫画を読んでいた。しかし十分ほど前から読書に集中できなかったその理由は。


「ふ~ん、どうかしたかい響?」


「いや何でも無いぞ、キマリス」


 響の目の前にキマリスが座っていてずっと響を見つめているのだ、それだけなら少し集中できないで済むが時々聞こえる布が擦れる音が響の妄想を加速させていた。キマリスは自分に視線が向けられているのに気づくと胸元を強調するように腕を組み、時にはYの字のように立っていた。


「キマリス、俺お前になんかしたか?」


「いや、何もしてないさ。でも僕が目の前にいるのに何もされないのはね」


 キマリスは拗ねたような表情で返事をする、そんなキマリスを見て響はどうしたものかと頭をかいた。そんな響を見てキマリスは場所を移動して、後から抱きしめる。


「痛い、痛い、痛い」


「おっと、昼の傷が痛んだかい。それは済まない」


 響の叫び声を聞いてキマリスは腕を肩から首元に移動させる。肩にあったぬくもりは首元に移っていき、キマリスの息遣いと首元から感じる柔らかさとぬくもりに響はドギマギしてしまう。


「フフフ、君の鼓動が早くなっているのを感じるよ。響」


「お前がくっついて来たからだろ!」


「じゃあ僕が他のことをしても問題ないよね」


「え?」


「んはぁむじゅるるる」


 突如として耳に感じる感触に響は「ひっ」と悲鳴を上げてしまう、そんな響を見てキマリスは獲物を嬲る猫のような表情になり、さらに耳の中を舌で這いずらせる。


「キマリスやめ、やめろよぉ!」


「れろれろれろ、本当に止めていいのかい? ぐちゅるるる」


 キマリスの舌使いに響の心拍数は急激に上がっていく。さらに外見は同い年ぐらいの美少女にいいようにされているという事実が、響の羞恥心を駆り立ていく。


「俺たちまだ出会って間もないのに、こんなことすんのかよ」


「僕はね、迷いなく戦ってくれる君のことが好きだよ。それに君たち人間の価値観ではそうかもしれないけどね、僕の価値観じゃこんなことぐらいしてもいいさ」


 キマリスは恥ずかしげもなく告げた言葉に響は頬を赤くしてしまう、赤く染まった響の頬を見てキマリスは頬を指で何度もついてくる。


「カワイイところ見せてくれるじゃないか響」


「もういいだろ! 離れろよぉ」


「仕方ないなぁ、じゃあこれだけは許してね」


 キマリスの言葉に「えっ」と反応してしまう響だが、その瞬間頬に柔らかい感触を感じ取る。何の感触かと思い横を振り向くとキマリスの顔が目前にあった。頬にキスされたのだと気づいたのは一瞬遅れてからだった。


「ふふふ、おやすみ響」


 キマリスはそう告げると部屋から消えていく、響は消えていくキマリス頬が赤くなっているのを見逃さなかった。


「てっゆうか、今日寝れるかな?」


 止まらない心臓の鼓動を抑えようと響は手で胸を抑えるが、ドキドキと鳴る心臓の音はとても大きかった。






 なんとか就寝できた響はが目を覚ますと、以前キマリスが呼び出した白い空間にいた。目の前には両腕を組み仁王立ちしているレライエがそこにいた。

レライエは顔を赤く染めながらもイライラした雰囲気であった。


「ふん、ようやく来たか響」


「どうしたんだよレライエ?」


「決まってるだろ! あんな破廉恥な……じゃなくてお前に私の力について教えるために、ここに呼んだんだ」


 そう言うとレライエは自身のイヴィルキーを取り出す。それを見た響は立ち上がり、レライエイヴィルキーをポケットから取り出す。それと同時に二人の腰にベルトが生成される。


〈Demon Gurtel!〉


 レライエはイヴィルキーを右手に持ち、手を前に伸ばしてイヴィルキーを起動させる。対して響はイヴィルキーを持った右手を大きく円を描き、イヴィルキーを起動させる。


〈Leraie!〉


 二人の動きは違えども、最後には同時にベルトに挿入する。


「「憑着!」」


〈Corruption!〉


 二人のベルトからは同時に緑のマントが飛び出すと、二人の体を包み込む。マントが消えた場所には緑の狩人レライエイヴィルダーがそこにいた。

鏡合わせのように立つ二人だが、一つ違いがあるそれは持っている武器の違いだった。レライエは左手に弓を持ち、響は無手で腰に銃が下げられていた。


「おいレライエ、武器が違うようだが」


「おいおい、響お前は弓とかの経験はないだろ。だから武器を変えたんだ、感謝してくれよ」


「なら負けても文句言うなよっと!」


 響がレライエマグナムを抜くと同時に両者は動き出す。レライエはレライエアローを引き矢を放ち、響はレライエマグナムの引き金を引き弾を放つ。放たれた矢と弾は互いに衝突して消滅する。

 銃撃戦になればレライエの方に分があると判断した響は、レライエマグナムを連射して牽制しながら近づいていく。レライエもレライエアローを駆使して近づけさせないとするが、響に少しずつ近づかれていく。

レライエはすぐさまベルトに刺さったキーを右手で一回押す。


〈Unique Arts!〉


 ベルトから音声が響くと同時にレライエの周囲に矢が形成される、レライエが腕をスッと上げると矢は全て響へ襲いかかる。響は矢を見てすぐに回避行動をとるが、矢の多さに前進は止まってしまう。

 どうするかと悩む響だが、すぐに一つの解決策を思いつく。響はレライエマグナムを撃ちながら左手でキーを一度押す。


〈Unique Arts!〉


 音声と同時に響の後方に巨大なガトリング砲が二つ生成され、弾丸が連射される。さすがにガトリング砲が作られると思わなかったのか響は二度見してしまうが、すぐに前進を再開する。

 さすがのレライエも弾丸の雨は回避できずに半分以上体に受けてしまう、だがそれでも獲物である響だけは視線からは外さなかった。


「やはりいいねぇ、狩りは!」


「言ってろやぁ!」


 遂にレライエの元にたどり着いた響、二人は接近戦をしながらも自身の武器を離さずに狙いを定めていった。弓の自由が聞かない距離まで近づき殴りかかる響、しかしレライエも弓の弱みを分かっていたために、拳を回避しながらも後に引く。

 レライエは一歩距離を取るとベルトからイヴィルキーを取り出し、レライエアローに装填する。


〈Shooting Break!〉


 音声が響くと同時にレライエアローの弧の部分にエネルギーが纏う。レライエは弓を振り回し、逆に響に対して接近戦を挑み始める。

 響はレライエマグナムを連射して近づけさせないようにするが、レライエアローのエネルギー刃に全て切り払われてしまう。

そのままレライエは響にレライエアローを振り下ろす。エネルギーを纏う一撃を受けた響は傷口を押さえるが、続けて袈裟切り、左薙ぎ、と繰り出される連続攻撃に避けることも叶わず攻撃を受けてしまう。

 連続攻撃の嵐の中響は、ベルトのイヴィルキーを取り出してレライエマグナムに装填する。


〈Shooting Break!〉


 一か八か逆転の秘策として自分もイヴィルキーを装填した響、しかしベルトから二つの光が出たかと思えば、レライエマグナムと合体してライフルのような形に変わるのであった。


「は!?」


「あははは、面白いな響」


 さすがのレライエも変形すると思わなかったのか、笑ってしまう。響はそれでもレライエマグナムの引き金を引くが、合体前と違って連射が効かなくなっており最初は戸惑って外してしまうが、数発撃つと慣れたのかレライエに命中できるようになる。

 命中した弾丸は合体前よりも強くなっており一撃でレライエを怯ませることができた。

 そのまま怯ませた隙きをついてレライエマグナムを撃ちながら近づく響、威力の高い弾丸に当たらないように回避するレライエだが、回避に集中しすぎたために響の接近を許してしまう。

 距離を詰めた響はレライエマグナムを放り捨てレライエアローを蹴り上げる、互いに無手になった二人は拳を握り接近戦を始める。


「しゃぁ!」


「やれやれ、殴り合いは趣味じゃないんだが」


 接近戦になった途端、響とレライエの状況は一転して響が優勢となる。正拳、裏拳、手刀と放つ響だが、レライエもうまく両手を使い防ぎきる。

 タイミングをずらして蹴りを放つ響だが、レライエに蹴った足を掴まれる。そのまま一歩、二歩と下がり自身を軸として回転するレライエに、響は大きく放り投げられる。


「そぉら!」


 叫び声とともに体を宙に投げられる響、しかし地面で受け身をとりすぐに立ち上がる。再び殴りかかる響だが、レライエには片手で防がれてしまう。

 それでも響は攻撃の手を止めずに空いた手でレライエの頭を掴み、足で頭部に向かって連続で膝蹴りを放つ。一撃、二撃、三撃、と放たれる攻撃にレライエは掴んでた手を離してしまう。

 響は空いた片腕もレライエの頭部を掴み両手でロックを仕掛ける、そして膝蹴りに合わせて頭を引き寄せていく。

 勢いの付いた膝蹴りは十数回に及び、レライエの足元はフラフラになってしまう。そして続けて響は膝蹴りを放とうとした瞬間、「まった!」とレライエは叫ぶ。それを聞いて響はピタリと膝蹴りを当てる直前で止める。


「降参か?」


「ああ、降参するよ。狩人が獲物にマウントを取られるなんて、負けみたいなもんだ」


 そう言うとレライエは変身を解き、それを見て響も変身を解く。レライエは笑いながら響の頭を撫で回し始める。


「うあ、やめろよレライエ」


「んー、ちゃんと戦えたから褒美は必要だろう?」


「だからって子供みたいに頭を撫でるなよ」


「なら、もっと大人なご褒美が欲しいんだな?」


 レライエはそう言うと響の頭を抱えて、豊満な自身の胸に抱き寄せる。いきなり抱きしめられた響は思いがけないことで思考が止まってしまう、すぐに再起動するして脱出しようとするが逆に柔らかい感触を味わう。


「フフフ、そんなに激しいのが好みなのか?」


「んー! んー!」


 違うと答えようとする響だが胸元に口を抑えられてる以上、何を言っているのか分からなかった。抱きしめられて三分ほど経ってようやく響は開放された。


「すーはー、何すんだよ!?」


「言ったろご褒美だと。もっと私を楽しませたらもっとシテやるぞ」


 レライエはへそに手を当てると、そのまま下にスーと動かしていった。その光景を見て響はついゴクリとツバを飲んでしまった。響の表情を見てレライエはニコニコと笑うと、響の耳元で小さくささやく。


「まあ今日はここまでだがな」


 レライエがそう告げた瞬間、響の視界は暗転する、響が次に目を覚ましたら自室のベットであった。響はもう一度眠ろうと目を閉じるが、キマリスの胸の感触を思い出してしまい悶々としてしまった。


「あー! 寝れるわけ無いだろ!」

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