第82話
おっさん兵が手に持っていた小瓶と、投げ入れた小瓶は少しだけ立派な服装をした兵が手に持った。上官とかいう立場だろうか。
すぐに、目の前に陛下とおつきの者たちが姿を現す。
魔法かな。転移系の何かなのか……。
「陛下、あのものが、魔力回復薬を売りに来たと……」
「魔力回復薬だと?本物なのか?」
またこのくだりか。
「はい、確かに。確認いたしました。お疑いならば鑑定魔法の使い手に鑑定させましょう」
陛下のおつきのものが小さく頷いて近くにいた者に命じた。
すぐに鑑定魔法とやらで魔力回復薬を鑑定したようで、その結果を陛下に耳打ちする。
「なっ。最上級魔力回復薬だと?まさか、実在したとは……それも、2本も……」
すごく驚いた顔をしている。
2本も?
「どこで見つけた」
陛下が私の顔を見た。
「お前は、魔力ゼロの低級民……」
「今の言葉……低級民というのは取り消してください」
低級民という言葉に反応する。
「生意気な。もうよい。さっさと魔力回復薬を置いて立ち去れ」
陛下の言葉に、周りの者たちが魔法を放つ体制に入った。
何なの。
何なの。何なの。
鞄から、魔力回復薬を取り出す。
「まだ、持っていたのか!よこせ!」
「なぜ、渡さないといけないのですか?低級民だから?魔力ゼロだから?」
もう、怒りのメーター振り切れました。
売るのはあきらめます。
いいです。街の人たちと交流はあきらめます。
無理です。
魔力回復薬のふたを取って、ごくごくと飲む。
「ばかが、何をする、やめろ!それがどれだけ貴重なものか分かっているのか!」
という言葉に、ネウス君が落とした袋を拾い、さかさまに向ける。
ばらばらと、魔力回復薬が袋から落ちる。30本くらいある。
「貴重ねぇ?へぇ?そうなんですか」
瓶を一つ手に取って、再びふたを開ける。
「やめろ!それ一つあれば、街の封印を1年は維持することができる。それだけあれば、何年封印を維持することができるのか、分かっているのか!」
陛下が叫ぶ。
封印て、そのベールの話だよね?
……そう。維持するのに魔力が必要なんだ。魔石の魔力ではもう維持できなくて、人が魔力を注いでいたりするのかな?
あれ?だとすると……。
ちょっと待ってよ。
「もしかして、魔力が無いと、食糧が作れないんですか?」
「当たり前だろう!」
やっぱり。
「食料を作るために魔力を使わないといけないし、封印を維持するために魔力を使わないといけないしで、魔力が不足し始めてるんですか?」
「そうだ!だが、その魔力回復薬があれば、魔力を回復して注ぎ込めば問題は解決する!」
……もしかして、私ときららが異世界から召喚された理由って……。
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