第79話
ドアをノックすると、ドアについている小窓が開いた。
すぐに小窓に、小太りのおじさんの顔が出てくる。
「けっ、外民が何の用だ?拾い屋か?買い取りなら反対側だ」
外民?って、街の外の人間のこと?
魔力ゼロ意外にも、人が街の外にいるの?
「拾い屋じゃないけれど、買ってほしいものがあるんだ」
ネウス君の言葉に、小窓の向こうのおじさんがめんどくさそうな顔をする。
「はぁ?拾い屋じゃない?っていうか、お前ずいぶんいい顔してるが、何の罪で外民になったんだ?」
小窓が閉まり、ドアが開いた。
「天上民の人妻にでも手を出したか?いや、手を出された方かな、どちらにしても、怒りを買うようなことしたお前が悪いがな、ゲヒゲヒゲヒ」
とてつもなく馬鹿にしたような笑いを漏らす。
「買ってほしかったら、その綺麗な面を、地面にこすりつけな」
おじさんが、木の棒……いや、槍の木の部分でネウス君の頭をぐいっと押した。
何、このおっさん。
服装は、制服みたいな服……そうだ、城らしき場所で見た護衛っぽい人と同じような服を着ている。
見張り?
「あのっ、買ってほしいものがあるのは、私の方です」
「なんだ、変なもん顔に付けて。馬鹿にしてるのか?」
は?
変な物って眼鏡だよね。なんで眼鏡をかけてることがバカにしてるにつながるの?っていうかネウス君の顔のこととか、何?顔にコンプレックスでもあるわけ?
「すいません、馬鹿にしてるわけではなくて、それで、買ってほしいものはこれです。効果の高い魔力回復薬です」
袋から瓶を1つ取り出して見せる。
太ったおじさんはまっすぐと私の手の魔力回復薬に視線を向ける。
「はっ。なるほどな。分かったぞ。買い取りにいかずに、裏口で売りつければ偽物だとばれずに済むとおもったのか?」
はい?
「残念だったなぁ、魔力回復薬がホイホイと手に入るわけがねぇと馬鹿でも知ってるよ。そんなうまい話しに騙されるわけねーだろ」
槍の先で、瓶をガツンとはじく。
ごろりと地面に瓶が落ちた。
拾って、ドアに近づき、街の内側に投げ入れる。人は入れないけれど、物は行き来できるようだ。
「偽物じゃないです。試してみてください」
「毒だろう?騙されねぇよ。と、いうか、残念だが、俺は解毒魔法も使えるからな」
「……もうちょっと頭を働かせてくれません?あなたに毒を飲ませたとして、私に何の得があるんですか?売りたいものも売れずに、お金も何も手に入らない。むしろ、毒ですといって誰か飲ませたい人がいませんかと売った方がお金になりません?」
しまった。あんまりやり取りがうっとおしくなってちょっと本音が駄々洩れになった。頭を働かせてくれませんなんて馬鹿ですかと言ってるようなものだ。さすがに失言だった。
かっと血が上ったように顔を赤らめるおっさん。
「その通りだな。試してみるとするか。魔力回復薬だろう?ということは」
おっさんが右手の平をこちらに向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます