第75話

「すげー、すげー!」

 ドンタ君がゆらゆらしてる地面の上で飛び跳ねる。

「精霊……様のお力か……」

 おばばさんが地面の揺れが収まっると、信じられないという顔を見せた。はい。そうです。偽物精霊ディラは何もできない……いや、金縛りくらいはできるけれど、本物精霊ノームおじいちゃんはすごいみたいです。

 とはいえ、魔法と精霊の力との差もよく分からないので、本当にすごいのか人間にもできちゃうのか分からないけれども。

「いまのは、地の精霊のノーム様のお力です。えーっと、この茶色いのが契約の指輪で……」

 赤いのはなんか適当にはめただけで。契約の指輪じゃないんだけれど、いくつも契約してるっぽく見せたらすごいなぁと思って、おばばさんが自分が無能だったからと、もう責めないでいてくれるかなと……思って。

「そうか……精霊様に……この魔力回復薬のことも教えていただけたんじゃな……感謝をせねば……」

『感謝の気持ちなら、それをワシにお供えするんじゃ!』

 ……おじいちゃんが、教えたわけじゃないでしょう?ディラが魔力回復薬のことは教えてくれたんだから……。

 ああ、でも。

「そうそう、これ。これが土の精霊様の化身ね」

 さっき出してもらったでかい透き通った水晶だと思い込みたいダイヤっぽい石を取り出す。

 ディラは剣についてることにしてるから、皆は疑うこともなかった。

「綺麗ですね」

 ミーニャちゃんがうっとりして見ている。

 うん、ダイヤだと思うと怖いけれど、それは、爪の先の大きさですらすごい金額で、そら豆サイズになったらもう、なんていくか人生何回生きられるのかって金額になるのを知ってるとね、人の頭サイズのダイヤ……いったい、いくら……って考えちゃうからで。

 そういうのなしで見れば、そうね。キラキラと光を反射してとてもきれい。

「これが、土の精霊がいるのか?」

『違うぞ、ワシは地上のどこへでも瞬時に移動することができるんじゃ!そんなちっぽけな石の中なんかにおるわけなかろう!土の精霊をなんじゃと思っとる!』

 おじいちゃんがぷんすかしてる。なんか、ドンタ君の頭の上に現れてポカポカ小さな手で殴ってる。

 こら!子供をたたかないのおじいちゃんっ!

「じゃぁ、お供えはこの石の前にすればいいのか?」

『お供えじゃと?なんといい子なんじゃ。よし、ワシ、加護をあたえちゃうぞ。これで、何かあれば土の妖精たちが助けてくれるぞ』

 なでなでと瞬時に態度を変えてドンタ君の頭をなでまわすノームさん。おじいちゃん……本当、なんていうか、こう、自由だよね……。

「うん、そうね。1日に1本……。魔力回復薬をお供えしてあげるのよ。みんなで1本だからね?土の精霊様は、これくらい小さな体をしているから、あまりたくさんは飲めないの」

『そんなことはないぞ!いくらだって飲めるんじゃ!ワシに、いっぱいお供えしてくれてええんじゃよっ!』

 と、ドンタ君の耳の穴に向かって訴えるおじいちゃん。聞こえてないけどさ。ドンタ君には。

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