第74話
でも、違う。知らなかったからって、責められることじゃない。
おばばさんは、自分にできることを精一杯していた。この環境で、できることを……。
ネウス君もミーニャちゃんもドンタ君もモモちゃんも、みんないい子で育ってるし。
それなのに、私……。
もしかしなくて、懸命に生きてきたおばばさんに……「魔力が無くてもできることはある」と教えているつもりだったけれど……。
それは「できることがあるのになぜやらなかったんだ」という責めているような言葉にも感じていたのかもしれない。
知らないことが罪?知ろうとしないことが罪?現代社会ではすぐに「ググれ、調べろ」みたいなことを言う人がいる。
自己責任、知らない方が悪い、騙される方が悪い、情報に踊らされる方が悪い……。
違う、違う、違う、違う!
絶対に、おばばさんは悪くない。
誰もが同じ環境で同じように情報を得られるはずがない。
生きていく、ただそれだけがとても過酷なこの場所で……。
それでもおばばさんは多くの子供たちの面倒を見ながら、子供たちが笑うことも失わずに……育ててきた。
それがどれだけすごいことなのか。
「おばばさんは、無能じゃないです」
この思いをどう伝えればいいのか。
「じゃが、ワシは……あの子たちを……もし、ワシがユキのように……」
ああ、やだ。私の存在が、おばばさんを否定する。
違うよ、ごめんなさい。私にはとてもまねできないすごいことを、何十年も続けてきたおばばさんこそすごいのに……。
ああ、そうだ。
私が特別だとそう伝えればいい。
異世界からきて、この世界にはない知識を持っていると。
ううん、異世界なんて言っても分からないかもしれない。そうだ、この世界にあって、異質な存在が……人ではない存在がいる。
「あの、私も、無能ですっ。ただ、私には、ほ、ほら!【指輪出てこい】」
収納鞄から急いで荒野で拾った赤い石のついた指輪を取り出し、土の精霊からもらった……というか無理やりはめられた契約の指輪の隣の隣、左手の人差し指にはめておばばさんに見せる。
「ほら、私は無能だけれど、精霊様が付いてるから、いろいろと精霊様に助けてもらっているの。魔力回復薬の話も、精霊様がいなければ分からなかったことで……」
まぁ、ディラに教えてもらったんだけど。ディラは精霊ということにしてあるから、嘘をついているわけではないよね。うん。
しかし、指にはめた赤い石の指輪。
こうやって比べてみると、土の精霊の契約の指輪に本当にそっくり。違うのは石の色だけだ。
しかし日本基準じゃ石ばかりが目立つダサいデザインの指輪を左手の薬指にノームおじいちゃんにはめられた後、そっくりなの自分でその隣にはめちゃうとか、私、馬鹿なのかな。まぁ、ノームおじいちゃんの指輪じゃなきゃ普通にはずれるだろうし、後で外せばいいや。
おばばさんが、私の指輪を見てきょとんとしている。うーん、そうか。
せっかくそれらしい風をよそおって指輪をはめる動作をしてみたけど、そもそも精霊の指輪知らなきゃ、意味ないよね。私だって「何この指輪?」で終わっちゃうし。
「精霊のノーム様、ちょっと地面を揺らしてください」
指輪にそれらしく話しかける。
『お安い御用じゃ!それゆーらゆら』
すぐにノームおじいちゃんがフラダンスみたいな変な動きをすると、それに合わせて地面がゆれ始めた。
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