第67話
精霊と言っても、幽霊と何ら変わらないのかもしれない。ちょっと魔法が使えるだけで。
ディラは魔法が使えないから、普通の幽霊は死んだら魔法は使えないんだよね。
『シーマは、サラマンダーはかっこいい緋色のマントを身に着けていると言っていましたよ?』
ディラ、空気読もうな?……っていうか、私の頭の中で、オレンジ色のトカゲが、真っ赤なマントを身に着けて二本足で立ち上がりドヤっている姿が展開していて、かっこいいよりかわいいよね、絶対!ってなってる。でも口にしたりしないよ。空気読めるもん。
ああ、ほら。ディラの言葉にノームおじいちゃんがムッとしてる。
『僕は精霊を見ることができなくてシーマの精霊の話を聞くたびにうらやましくてうらやましくて、ああ、こうして今、ノーム様の姿を見ることができ、言葉を交わすこともできるなんて……。幸せです。幸せすぎて……そう、天にも昇るような気持ちです』
昇ってないね。
剣とつながったままどころか、2mくらいは飛び上がれるはずなのに、これっぽっちも昇ってない。
『そうか、そうか、ワシと話ができるなんて光栄だものな』
「どうしたの、ユキ?精霊様が何か言ってるの?」
ネウス君が私の顔を覗き込んで首を傾げた。
ぐっ。突然目の前に現れる褐色の肌のイケメン。いや、慣れないって。いつから私の弟はこんなにかっこよく成長したの?
「ううん、何でもない」
フルフルと頭を振る。精霊の悪口を言う精霊とか言わないていいことは言わない空気の読める私です。
『なんじゃ、お前、この間の坊主だよな?2週間みたいうちに、ずいぶん立派な体になったの?ああ、そういえば、人間はすぐに成長してすぐに死ぬんじゃったな。忘れるところじゃったわ』
……いやいや、ネウス君の2週間の変化は普通じゃないですし。すぐに成長して死ぬって、精霊時間で語らないでほしいし。
っていうか、ディラと会話してたんじゃないの、なんでネウス君の頭の上にのっかってるの、ノームおじいちゃん……。
視線を、思わずネウス君の頭の上に向ける。
「え?」
ネウス君も私の視線の動きにつられて、上を向いた。
『おおう、落ちるじゃないか、坊主っ』
ノームおじいちゃんがネウス君の髪の毛にしがみついた。
「【開】」
指輪の封印を一時的にとく。で、心の中での会話をする。
……なんの用事でしょうか?
『おお、そうじゃ、そうじゃ。2週間たったじゃろ?まちにまった2週間じゃ。こんなに2週間を長く感じたことはなかったぞ。いつもは2週間なぞ昼寝している間に過ぎてしまうというのに』
ソワソワとした様子でネウス君の頭の上に座ったノームおじいちゃんが私を見ている。
2週間?
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