第60話
『に、二週間もかかるというのか……』
膝をついてがっかりするノームおじいちゃん。すぐにひらめいたとばかり立ち上がる。
『そうじゃ、ワシ、契約してやろう。お前と、えーっと名前なんじゃったかな?』
契約?
「ああ、まだ名乗っていませんでしたか。すいません。花村由紀と言います。ユキと呼んでください。こちらはネウス君」
ノームおじいちゃんはよし分かったと首を縦に大きく一度振った。
『手を出すのじゃ』
手を?
『ワシはユキと契約を交わす。ほれ、これで契約終了じゃ』
は?
指にはいつの間にか茶色い石のはまった指輪がはまっている。
「えっと、な、なんですか、これ?」
どうして、左手の薬指っ!
『精霊の指輪じゃ。知らんのか。まぁ、知らんかの。何百年に一人精霊と契約をする人間がいる程度じゃもんな。ワシと契約した印でもあり、その指輪を使えばワシの魔法を半分くらい使えるんじゃよ。あと、ワシをいつでも呼び出せる』
ええ、精霊と契約?
魔法が使える?
「いや、いいです、私、魔法とか使わなくても大丈夫なんで、返します!」
必死に指輪を引き抜こうとするんだけれど、これっぽっちも動かない。
『なんじゃと?ワシの魔法が使えるんじゃぞ。その辺の人間は相手にならないすごい魔法じゃぞ?』
どれだけすごいって言われたって、私は魔法が使えるか使えないかで人を差別するこの世界で、まるべく魔法に頼らずに生きていくつもりだし、魔法なんて使えなくたって大丈夫だよってみんなに伝えたいんだから。
そりゃ、魔法が使ってみたいって、人並みに思っていたこともあるけれど、今は、そんな気も失せた。
『今みたいに、木を揺らして実を落としたり、実を集めたり簡単にできるんじゃよ?』
ノームおじいさんの厚意は嬉しいけれど、首を横に振る。
「他の子たちにも永遠に力を貸してくださるわけじゃないですよね?私が生きている間だけですよね?私がいなくなれば、魔法で簡単にできていたことを、皆はできなくなります。……つまり、魔力回復薬も、誰も作れなくなる」
ノームおじいちゃんがショックを受けた顔を見せる。
『じゃ、ユキが死んだら別の者と契約して……』
「1000年に1度くらいしか、ノームさんたち精霊の姿を見える人は現れないんですよね?」
うぐぐとノームおじいちゃんが口をつぐむ。
「だから、魔法や精霊の力を借りた生き方じゃなくて、誰でもできるやり方で作りたいんです」
『わ、分かった』
「じゃぁ、契約はなしということで、指輪返しますね」
と、はずそうとしてもやっぱり外れない。
『ま、魔法は使わなくてもいいから、持っていてくれ、な?ワシと連絡が取れるんじゃ、な?』
……まさか……。
「魔力回復薬ができたら連絡をくれということですか?」
てへっ。って顔をする小さなおじいちゃん。
かわいく見えないこともないから困ったものだ。
『た、ただでとは言わんぞ?ワシにできることならなんだってする。ああ、そうじゃ、マナナの木がある場所を探っておいてやろうか?ワシなら大地に気配を巡らせればどこに何の木があるかはすぐにわかるぞ』
あ、それは便利かも。
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精霊との契約はごめんこうむる!
おとこまえしゅじんこうである。
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