第56話
では、粛々と進めますかね。
「えーっと、地面を均す道具……」
またまたアバウトな指示で、今度は鍬みたいなものが収納鞄から出てきた。
「よし、行こう!ネウス君」
道を作る。
ネウス君が枝を打ち払う。私が地面を鳴らす。草はぽいぽいっと。
突き出て危険な木の根やら尖った石やらが無いように。
草で隠れて変な物踏まないように。
「よっ、こら、しょっと」
鍬を振り下ろす。
土を掘り返し草をどけて、小さな切り株は掘り起こして道となる場所の横にぽいっと。
って、なんかすごく楽に進むんだけど。
「収納鞄に入ってたけれど……魔法的な何か?なのかな?」
前を進むネウス君を見ても、とても鉈では切れないような太い枝もスパーンと綺麗に排除してる。
1mほどの幅の道を、目印にそって作っていくんだけれど、1日に目印から目印の間まで進めればいいやと思ってたら……どんどん進んで、あっという間にマナナの木の下まで来た。
スモモのような実がたわわになっている。さっきは進むことを目的としていたから気が付かなかったけれど、マナナの木の奥にもたくさんのマナナの木があるようだ。視界に入るだけでも、6本。
えーっと、人が一日に必要が水2リットル?子供だから量も減るだろうし、他からも水分はとれるとして、一人1リットル。6人で6リットル。
酒樽がドラム缶と同じくらいの量だと考えると1樽で200リットル。えーっと、200割る6……100割る3になって、およそ33。33日で1樽。330日で10樽。1年で11樽ね。……って、1年が同じくらいならばだけれど。植物が実をつける間隔ってどれくらい日数があるんだろう。1年が違えば違ってくるよね。まぁいいや。とりあえず、実は……。1本の木で何樽くらいとれるんだろう。ほかにもあるかもしれないから探せばいいか。よし。なんか水の確保第一弾はワインもどきで何とかなるかもしれない。……とはいえ、やっぱり水ほしいよね。真水。ワインモドキばっかりじゃぁ糖分取り過ぎちゃうかも。他からの栄養が少ないから多少はカロリーは問題ないとして。たしかワインってミネラルやビタミンや色々栄養成分も含んでて、フランス人とか循環器系疾患がなんとか……って、詳しくは分からないけど。ワインモドキにも多少は期待できる?
でもやっぱり飲みすぎはダメそうだなぁ。一人1日ポーションの瓶で2本までとか決めた方がよさそう。
水は水でほしい。川もまた探そう。
「ネウス君、とりあえず今日はここまでで、マナナの実を収穫しましょう」
木を見上げる。
ぶどうの木は品種改良されて、人が立って収穫できるちょうどいい高さに実がなるんだったっけ?品種改良じゃなくてその高さに栽培するんだっけ。マナナはそうはいかないよな。木を揺らしたら落ちてくるかな?
『助けてくれー』
ん?
どこかから、助けを求める声が?
「ユキ、木に登って取るよ。実は下に落としたらいい?」
ネウス君がするすると木に登っていく。木の幹は両手をまわしても届かないくらい太いから揺らして収穫も無理かな?何か棒みたいなのでつついて枝だけ揺らすとかならいける?
『助けてくれ、降りられないんじゃ!』
降りられない?え?木から?
「ネウス君、その辺の枝、揺らせそうなら揺らしてもらえる?それで実が落ちてくるなら1個ずつ収穫しなくても大丈夫だから。
ものは試しだ。
「分かった」
ネウス君は太い枝に馬乗りになり、その枝から伸びる細い枝をもって揺らし始めた。
ぽろんぽろんぽろんっ。
「お、おお!面白いように落ちる!」
ネウス君が楽しそうな声を上げた。
『うひぃー、やめてくれぇ、落ちる、落ちる!』
は?
ネウス君の揺らしている枝を凝視する。
枝の先に、何かいる。
小さい人みたいな……幽霊……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます