第55話
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本当に。何があったんだろう。ディラが生きてた時代と、今とどこがどれだけ違っているのか……。
ディラの今の話だと魔力がないからといろいろあきらめる人もいなかったみたいだし。
300年……まぁ、あれだよね。令和の300年前は江戸時代だし。300年という年月は長い。いろいろ変化もあっても不思議はない。けれど、その変化を知っても仕方がないか。知ったからって、ここで生きていくしかないんだよねぇ?
私は……日本に帰る術が見つかれば帰るつもりだし……。この世界にもう少しなれたら。ここの子たちがもう少しましな生活ができるようになったら……。帰る方法を探しに移動しないとダメだよねぇ。うーん。
王都で、私を召喚した人たちに聞くのが一番手っ取り早いだろうけれど、入れないんだよね。何か方法考えないと。
従妹のきららはどうしてるかな?帰る気にこれっぽっちもなれないくらい好待遇で迎えられている?わがまま言いすぎてなければいいけれど。
まぁ、まずは。
「ネウス君、ちょっと手伝って。さっきの場所までの道を確保しましょう」
マナナの実を取りに子供たちも通うなら、目印だけじゃだめだよね。けものみち程度には木の枝を打ち払って、はだしの子供たちが危険なく歩ける程度にはしておきたい。
『うわー、ユキ、なんでネウスばっかり、僕も行きたい、僕もつれてって、僕もいくぅ~』
あー、うるさいってば。
「ネウスくん、これで道を切り開いていきましょう。目印はもう少し増やして。今日は、マナナの実がなっていたところまで道を作りたい」
ディラの剣をネウス君に手渡す。
『うわーい、連れて行ってもらえる!』
子供か!犬か!
「使ってもいいの?」
『バンバン使ってくれ!』
ネウス君が剣を見た。
「うん、枝を打ち払うのに何かあったほうがいいよね?」
ネウス君が剣の柄を持った。
「うぐ、ぐぐ、引き抜けないっ」
そして、剣を鞘から引き抜こうとして力を入れたけれど……、抜けなかった。
『えええーっ、なんで?あの時は抜けたのにぃ……えええ、どういうこと?』
あの時は抜けたって、300年前の話かしらね?
300年も風雨にさらされて中でどうなっているのかな。剣……。そうか。ダメか……。
「収納鞄にえーっと、木の枝を打ち払う道具」
と、アバウトな言葉で最適な品が出てくる。なんだろう、鉈っぽいものが出てきた。
「ネウス君、これ持って」
ネウス君がシュンッと肩を落として剣を近くの木に立てかけた。
「ごめん……情けないよな……」
「気にしない。悪いのはネウス君じゃなくて、あの剣の方じゃない?古いやつだし」
私の言葉に、ディラがシュンっと肩を落としている。慰めた方がいいかな?
『悪いのは剣じゃないよ、抜けないのは、ネウスが資格がないからだよ』
失礼なこと言ってるぞ。慰める必要ないですね。はい。
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