第47話
『な、なにも、ほ、ほら、僕、触ることもできない体……だし』
……。明らかに動揺してる。
やったな。
何かしたな。
金縛りに合わせたか、それともラップ音でも鳴らして睡眠を邪魔したか……。
「じゃ、ディラ元気で」
くるりとディラに背を向けて、歩き出す。
『うわーん、ごめんなさぁい、ユキ、ちょっとだけ、ちょっとだけ、あの、ポーションを使って……』
ん?
ポーションを使った?
立ち止まってディラを振り返る。
そういえば、ネウス君は一晩でありえないくらいつやつやになっていた。風呂に入っただけにしては、つやつや過ぎる感じはしたけれど。
元気にしたくてポーションを飲ませたってこと?どうやって?うーん??
何にしろ……ディラが悪気があって悪さをしたわけではなさそうだと言うことだけは分かった。
小さくため息を吐き出し、剣に手を伸ばす。
『ユキ、ありがとう、ありがとう、ユキ大好き。僕、一生ユキのそばを離れない!』
大型犬よろしく手が届く距離になったら、ディラが私に飛びついてきた。両手を広げて。
それで、私は抱きしめられることもなく……。ディラは私の体をびょーんとすり抜けてあっちへ飛んでった。足元とつながっている先だけ伸びて2mくらい。
『うわぁ、うわぁ、ユキがいない、ユキが!』
ディラが私の後ろで叫んでる。
いや、あんたね。私の向こう側に行っちゃったんだから、目の前から消えるに決まってるでしょ。後ろ、後ろ、後ろだよ!
と、突っ込む気力もなく。疲れたよ。ディラ……。
剣を持って歩き出す。
ディラはとぼとぼと私の横を歩いている。
……剣にひっついてるんだから、足を動かさなくても移動できるんだけれど、歩く動作をしている。器用に、私の歩幅に合わせてゆっくりと。
ディラが普通に歩いたら、背が高くて足も長いから、きっと私が速足で歩くくらいのスピードになるだろうに。
「ディラは、モテたでしょ……」
顔がいいだけじゃない。スタイルがいいだけじゃない。子供たちを思う優しさもあって、こうして女性に対しても気をつかえる。
ディラが青い顔をする。
『女は……怖い……』
ぶるぶる震えだした。
……何があったんだ。……モテすぎるというのも苦労するという話は聞いたことがあるが……。
っていうか、ちょっと待って。
私だって、女なんですけどね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます