第46話
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ユキー捨てないで、ユキー。
想像上のディラが号泣。うぐっ。ぐぐ、分かった。分かったって。もう!
ああ、幽霊なのになぁ。情が沸いちゃったかな。……そうだよね。幽霊とはいえ、この世界で助けてくれた恩人だもん。
恩をちゃんと返さなくちゃ。……ディラがいなかったら、死んでたよね。今頃私も幽霊だよ。いや、成仏したかな?どうだろう。
仕方がない。ちょっとばかし、頑張るか。
目をつぶる。精神を集中させる。お腹から全身に霊気を行き渡らせるように。
そうして、それを体から徐々に放出する感じをイメージ。……ああ、力の弱い目には見えない霊のたくさんの声が聞こえる。
子供たちの泣き声。
ここで亡くなった子供たちだろうか。
おなかが空いたと泣いている子。
誰かを探す声に……。ああ、そう。まだみんなと遊んでいたいの。おばばと離れたくないの。
駄目だよ。ここにいるより、お空に昇って行った方が幸せになれるからね。お空に昇っていっても、おばばやみんなと一緒だからね。
温かくて気持ちよくて、それからね、新しいぴかぴかに出会えるから。幸せになるために、進むんだよ。大丈夫。大丈夫。おばばは忘れたりしないよ。一度お空に昇って、お願いして守護霊として戻ってくることもできるからね。
と、声をかけてから除霊。姿も見えない弱い霊を除霊するくらいならできるんですよ……。
さて、ディラは……?
うえーん、うえーん。
……はい。子供たちの泣き声が聞こえなくなった途端に、大きな泣き声が一つきこえてきました。
霊気を収めて、声のしたほうに目を向ける。
荒野が広がる。幸い視界を遮るものがないので、遠くにあるものまで見える……。
「なんで、あんな遠くに?」
小さくため息をついて、2~300mは離れた場所まで剣を取りに向かう。
『ああ、ユキだ!ユキぃー!』
剣に向かって歩き出すと、はるか向こうのディラがぶんぶんと手を振っている。
これ、もしディラが自由に動き回ることができたら、間違いなく全速力で走ってきて飛びついてくるやつだよね。
なんか、四本足で、しっぽぶんぶん振って走ってくる大型犬を想像する。キラキラと日の光を受けて輝く美しい毛並みの……犬。
だって、大人が、あんなに嬉しさの感情表現を全身で表すかな?しかも、私みたいな喪女に対して……。
私が来たことを、満面の笑みで、今にも飛びつきそうな顔して迎えるかな?
『よかった~ユキ~。嬉しい!嬉しい!嬉しくて昇天しそう!』
してないけどね、昇天。
嬉しそうな顔を見ていると、私の心も緩くなりそうだけれど、駄目。
イケメンずるいな。微笑みかけるだけで気を緩ませようとは。だけど、駄目ですからね!
しつけ……じゃない、犬じゃないな、ディラは。
「ディラ、夜、寝てる間にネウスに何かしなかった?」
いつも早起きだというネウスがなかなか起きてこないことを思い出す。
睨み付けるように尋ねると、ディラが視線を泳がせた。
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