第45話

★ユキ視点に戻りました★


 目が覚めると、モモちゃんがじーっと私を見ている。

「あ、いきてたでしゅ!おばばしゃまにおしえてくるでちゅ」

 ……ああ、そうだ。

 そうだった。異世界に召喚されて、魔力がないからってすぐに捨てられたんだっけ。

 隣に寝ていたミーニャちゃんの姿はすでにない。というか、私以外、皆起きてるってことだよね……。

「ユキお姉さん、目が覚めたんですね。よかったです」

 ミーニャちゃんがやってきた。

 手には昨日作った即席の火を起こすための弓がある。

「もうすぐご飯ができます」

 にこりとミーニャちゃんが笑った。

「ご、ごめんね、寝坊しちゃったみたい……」

 子供たちが早起きして働いているというのに何たる失態。

「疲れてたんですよね。ずっと歩いて来て。お兄ちゃんもまだ寝てるんですよ」

 ネウス君が?

 細くて栄養足りてないけれど、私よりもずっと体力がありそうなのに……。

 というか、移動中2泊したけれどこんな時間まで寝てたことなんてなかったよね?

 まさか……。

 ディラの剣をネウス君の近くに置いたけれど……。

 幽霊の本能にあらがえず、ネウス君を金縛りに合わせたとか?

 それで、ネウス君は安眠できずにまだ寝てる可能性が……。

 うひゃー、ごめん、ごめんよ!ネウス君っ!

 慌ててネウス君の元へと向かう。

 ネウス君は、寝相が悪いのか、昨日寝ていたところから少し離れた木の根元に丸まって寝ていた。

「ネウス君、大丈夫?」

 近づいて顔を覗き込む。

 あれ?

「ネウス君?」

 昨日、お風呂に入ったからかな?

 顔がぴかぴか。

 小麦色の肌に、茶褐色の髪の毛。眉毛がしゅっとりりしくてまつげが長い。

 なんか、ディラが金髪碧眼王子様みたいなイケメンとすれば、ネウス君は……シークみたいなイケメンになりそうな美少年なのでは?

 というか、なんか、たった一晩しかたってないのに、なんだか骨と皮ばかりで、顔もガリガリだったのに、まだ痩せてはいるけれど、骸骨っぽさがだいぶなくなった?肉がつき始めると、少年というよりは、青年と呼んだ方がいいかな?って気がしてきた。10代でなく20代前半?うーん。

 と、ネウス君の年齢よりも、ディラが金縛りしたなら注意しておかないと。

 どこだ?

 ん?姿が見えない……ぞ?

 怒られると思って雲隠れした?

 きょろきょろとあたりをみまわせども、ディラの姿も剣も見当たらない。

 ……逃げた?

 いや、自力で動けるわけないよね?

「まさかっ」

 盗賊か何かが出て、盗まれた?

 ど、ど、ど、どうしようっ!

 剣が盗まれちゃったら、盗まれちゃったら……。

 ん?

 んー?

 どうしよう?

 剣は、剣として使わない。

 移動するときに4キロ近い荷物がなくなる。

 幽霊がいなくなったことで、何か困るっけ?……人と出会えたから寂しくもなくなったし。

「別に、困らない?」

 という結論に達したところで、脳裏にディラの泣き顔が思い浮かんだ。

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