第44話

◆ディラ視点最後◆

『ラッキー、もう一度、体借りるよ!』

 ネウスの体に入り込む。今度は剣を抱えて立ち上がる。

『あ、そういえば、この剣、伝説の勇者にしか抜けないってやつだけど、借り物の体で抜けるのかな?』

 柄に手をかけ、剣をさやから引き抜く。

『抜けた。うわー、この感触、懐かしい』

 鞘を捨て、両手で剣を握る。

『うん、懐かしいな。片手では難しいあたり、子供に戻ったようだ。ネウス……もうちょっと鍛えたほうがいいよ……』

 そのまま、素振りを開始。

『にじゅう、にしゅいち……』

 うわー。たったの21回で手が震えてきた。

 寝ているユキの枕元に置いてある収納鞄から、ポーションを3本ほど取り出す。

『一口ゴクリ。ローポーションは激マズだけど、ポーションはそこまでひどくない』

 さ、回復回復。素振りをつづけるぞ。

 と、気がつけば、腕が上がらなくなるまで素振り、ポーション一口飲んで回復、再び素振りを、3本のポーションが空になるまで続けてしまった。

『いや、たかが素振りでも、楽しいな。徐々に振れる回数が増えていくこの充実感』

 40回は振れるようになった。スタートからほぼ倍だ。ふふふ、今後が楽しみだな。っと、そろそろ夜明けだな。目が覚める前に抜け出さないと。

 剣から離れれば抜け出せるんだよな。

 と、剣を置いて歩き出す。って、これだとまた抜け出した後にネウスが地面に倒れるよな。体を借りた上に、意識がないとはいえ痛い思いをさせるのは悪魔の所業だ。

 剣を持って寝転ぶ。

 それから、思いっきり剣をポーンと投げ捨てる。

『ひょーーーっ』

 剣がネウスの体から距離ができた瞬間、しゅぽんと飛び出たのはいいけど、ちょっと勢いつけて投げすぎた。ちょ、待って、やだ、ユキ~、ユキ~!

 皆が寝ている場所から、200mは離れてしまった。荒野にぽつん。……ど、どうしよう。

 ど、どうしよう……。


===========

次からユキ視点に戻ります。さすがに、夜中にディラがコソコソネウスくんを勝手に特訓してるのとかユキ視点では書けなかった……(´・ω・`)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る