第43話

◆引き続きディラ視点~夜中のいたずら~◆


『お、おお、動く』

 完全にネウスの体に入ったと思ったら、まるで自分の体のようにネウスの体を動かすことができた。

『すごい、いや、でもなんでこんなことができるんだ?ネウスが寝てしまったから?それとも、僕は魔族にでもなってしまったとか?』

 それとも、ユキと出会ったから奇跡が起きたのかな。

 ユキはすごいから。かわいくてすごいから。

 ああそうだ、食べ物も食べられるようになっちゃったんだよ。ユキのおかげ。

 ユキ大好き。もう絶対ユキのそばを離れない。離れたくない。ユキに嫌われたらどうしよう。

 ん?あれ?

 いや、ちょっと待てよ、入っちゃったのはいいけど、どうやって出るんだ?

 出ようと意識してネウスの体から離れる姿をイメージする。

『で、出られない……』

 ちょ、これじゃぁ、本当にネウスの体を乗っ取ってしまったことになるじゃないか、どうしよう。

 と、とりあえずユキに相談、そ、相談を……あ、だけどもし本当にこのまま出られなくなったらユキは僕のこと嫌いになっちゃうかも……。

 だって、こういう魔族がいるんだよ。人の体を乗っ取る悪いやつ。

 ユキに……嫌われる!

 涙がだばだばと出てきた。

 いやだよ、そんなの、絶対!

 な、なんか収納鞄にアイテムなかったかな?まずはいろいろ試してみよう。

 収納鞄を取りに行こうとネウスの体で立ち上がり歩き出す。

『んー、体が重い。いや、体重は軽いはずなんだけれど昔のように体が動かない……』

 自分で動かしているネウスの腕を見る。それから足。お腹、胸を触ってみる。

『これ、ダンジョンの中で出会ったら、間違いなくスケルトンと間違える案件だよな……』

 スケルトンって、骨のモンスターなんだけど、それくらい骨骨しい。

 鍛え方が足りないという問題でなく、まずは体ができていない。

 しゅぽん。

 どさっ。

『ほげ?』

 急に後ろに引っ張られて、しゅぽんとネウスの体から抜けた。抜け殻となった意識のないネウスの体が地面に倒れた。

『ご、ごめん、あわわ、地面が柔らかてよかった……あれ、でもどうして急に?抜け出せてよかったけれど……なんで……?』

 足元には見慣れた剣。倒れたネウス君とは距離が。

『あー、もしかして、剣からは距離を取れないということか。ってことは……持ち歩けばいいのかな?』

 もう一度ネウスの体に入ってみようと、手を伸ばす、体を伸ばす……って、届かない。

 と、思ったら、寝相の悪いネウスがこっちに転がってきた。

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