第42話
◆ディラ視点◆
……みんな寝ちゃった。
僕は、ちっとも眠くならない。
ユキの寝顔を見ていれば退屈しなかったのに。
ユキの寝顔……ここからじゃ見えないよ……泣。
はぁーそれにしても……。ユキはかわいいなぁ。ずっと見ていても飽きない。
ううん、違うな、ずっと見ていたい。
ユキのところに行きたいけれど、剣から移動できないし……。
……退屈、かぁ。300年……いや、正確には何年たったのか分からないくらい長い時間を、ずっとあの荒野の誰もいない場所で過ごしていた。退屈なんて言葉さえ忘れるほどの、長い時間。
それを、今は退屈だと思うのは……。ユキと出会ったから。
村のみんなが話しかけてくれるから。
だから、話し相手もいなくて一人で夜を過ごすことが退屈。
そうだ、朝になればまたみんなと話ができるんだから贅沢なんて言っちゃだめだよね。
それにしても……っふふ。
僕が精霊だって。
ふふふ。面白いことをユキは考えるよね。剣の精霊なんているわけないのに。精霊は、火、水、風、土、光の精霊しかいないのに。
……というのは、一般常識じゃないのかなぁ?
みんな知らない?なんで知らないんだろう?神殿で神父さんが子供達に話して聞かせる定番の話なのに。契約の話とか、契約の指輪の話だとか……。
……ああ、捨てられた子供達だからなのかな?まぁいいか。逆に剣の精霊って作り話を信じてもらえたし。
おかげでみんなが話しかけてくれるようになった。嬉しい。
ユキ。……ユキの名前を考えるだけで胸がきゅうーってなる。
ユキ。感謝してもしきれない。
300年もの長い孤独から救ってくれたユキ。
僕はユキに何が返せるだろう。
目を閉じて腕を組んで考える。この姿になる前は、こういうポーズを取ろうものならすぐに寝てしまって賢者に頭を叩かれたなぁ。
今は全然眠くならない。睡眠が必要じゃないからなのかな。
と、思っていたらガンッと音がして驚いて目を開ける。
寝返りを打って転がってきたネウスが剣の上に右足を乗せていた。
『寝相悪いなぁ。アイラみたいだな。いや、アイラの蹴りは寝ていても無傷じゃすまないから、ネウスはかわいいものか』
このままにしておいてもいいけれど、剣の上から足はどかしてもらおうかな。
ネウスの足に手を伸ばす。
『あ』
手が、ネウスの体に吸い込まれるようにして埋まる。
そうだ。触れないんだ。
『いや、だけどこれ……』
ネウスの体に触れずに通過するというよりは、まさにネウスの体に吸い込まれている感じだ。
……。
そういえば、あったな、こういうの。
魔王軍の配下に、こういう人の体を乗っ取るみたいなやっかちな能力もちがいて……。
興味本位で、そのままネウスの体に自分の体を吸収させる。
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ディラ視点です。読み飛ばすと、分からないところが出てきますので、読んでもらえるとありがたいです。
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